文豪の悪態 皮肉・怒り・嘆きのスゴイ語彙力

著者 :
  • 朝日新聞出版
2.73
  • (1)
  • (1)
  • (7)
  • (5)
  • (1)
本棚登録 : 105
レビュー : 4
  • Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784023318748

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 先日読んだ、『文豪たちの悪口本』では様々な『悪口』が掲載されているだけだったが、こちらは著者の解説がしっかりと書かれているのでよりその背景…文豪たちの人間関係、人生や生活などが分かって興味深い。ただ『悪態』というほど『悪態』っぷりはなく、その点では『悪口本』よりはおとなしい。

    『悪口本』で疑問だった、永井荷風と菊池寛の険悪な関係がこの本で分かったのも収穫の一つ。
    なるほど、結局のところ価値観の違い、考え方の違い、性格の不一致と言ったところか。要は徹底的に相性が悪い二人だったのだ。
    しかし荷風先生、いくら嫌いな菊池寛だからといって名前を間違えるのは良くない。誰だって自分の名前を書き間違えられるのは気分が良くないだろう。もちろん校正の甘さのせいもあるので先生だけの責任ではないが。
    開き直って菊池寛を悪し様に書いているが、これが逆に菊池寛が永井荷風の名前を間違えて雑誌に掲載しようものなら、もっと痛烈な批判をしたはずだ。

    恥ずかしながらこの作品で様々な文豪たちの師弟関係も知った。
    泉鏡花が尾崎紅葉の弟子だったのも知らなかったが、その紅葉の遺品を経済的に困窮した遺族が買い取ってくれないかと鏡花に頼んだものの断ったというその理由も意外。
    内田百閒が漱石の弟子であることは知っていたが、そのことを信じてもらえず漱石自筆の軸を買い叩かれてしまうさまは何とも切ない。
    しかし一方で困窮ゆえとはいえ、借金を平気で踏み倒す文豪たちもいるのだから致し方ないのか。

    室生犀星の妻への、結婚前の猛烈なラブレター攻撃はなかなか。そっちは掲載されていないが、ラブレターに戸惑う奥様の手紙からしても相当なことが書かれていたのかなといろいろ想像してしまう。
    だが上手くまとまったあとは寧ろ奥様の方が積極的なのだから面白い。

    明治~大正の作家や詩人俳人は経済的に困窮しているイメージが強いが、そんな中、戦時中でも贅沢な暮らしをしていたという谷崎潤一郎を皮肉った三島由紀夫、石原慎太郎の『太陽の季節』が登場してあまりのジェネレーションギャップに拒否反応を示す宇野浩二など、皮肉部門も興味深い。

    菊池寛もなかなかの人物だが、直木賞の名前になった直木三十五も強烈だ。だが小説家としてはそれほど有名作品がない直木の名前をなぜ冠したのか、菊池寛にとってはそれほどお気に入りの人物だったのか。

  • 明治~昭和期の文豪たちの悪態な文を集め、背景等を解説。
    〔第一章〕「馬鹿」「田舎者」・・・夏目漱石、尾崎紅葉等。
    〔第二章〕文豪の嘆きとぼやき・・・永井荷風、小島政二郎等。
    〔第三章〕喧嘩もほどほどに・・・太宰治、菊池寛、幸田露伴等。
    〔第四章〕その「皮肉」も効いていますね・・・三島由紀夫等。
    表題・文豪の語彙・文豪と相手の経歴での構成。
    文に続き、言葉の意味からの導入は、ユニークです。
    「しょげる」が江戸時代までは、どんちゃん騒ぎという意味とか、
    これだけでも面白い。ですが、更に面白いのが、使う文豪さん。
    文豪さんも人の子ですから、怒ったり嘆いたりすることがあります。
    さすがに手は出ませんが、口をつく言葉、書く文章で表現します。
    見事に相手の本質を、的確に表現しているものもあります。怖い。
    永井荷風VS菊池寛。中原中也VS太宰治、あ、これは手が出てるか。
    菊池寛VS中央公論社は書いた広津和郎のオロオロぶりがなんとも。
    それだけではなく、文豪さんたち、パワハラ・セクハラ・DV等、
    なんでもありで、現代だったらSNS炎上極まる行状が、あちこちに。
    作品よりも評伝を読みたくなってしまったくらい、
    凄まじいものでした。

  • 文豪たちの喧嘩は言葉も手も足もでて、血気盛んだ。

    言葉の由来や意味の変遷を紹介されていて、言語的にも面白い。
    豊かな語彙を駆使してほとばしる悪態。胸をえぐられてもそこから立ち上がるエネルギーを持ってこそ文豪なのだ。
    …子どもの喧嘩か!というのもあったけど。
    「子供」の漢字の意味合いは、著者の意見がしっくりくる。

    夫婦喧嘩は、微笑ましい。
    ←DV は除く。

    樋口一葉、お兄さんが病に倒れなければ、母が結婚に反対しなければ、もっと長く生きられたのではないか。

    石川啄木、小説も書いてはったのか。

    江戸川乱歩、大阪に住んでいたこともあったのか。

    鈴木三重吉、どんだけうらまれとるんだ。

    室生犀星、奥さまとの書簡

    尾崎紅葉の俳句を読んでみようと思った。

  • さすが、文豪!悪態の語彙も表現も豊富です。SNSで行ったら、即炎上しそうな第3章、喧嘩もほどほどにが特におすすめです。

    [NDC] 910.26
    [情報入手先]
    [テーマ] でーれーBOOKS2021/エントリー作品

全4件中 1 - 4件を表示

著者プロフィール

山口謠司(やまぐち・ようじ)

1963年、長崎県生まれ。大東文化大学文学部教授。博士(中国学)。大東文化大学大学院、フランス国立社会科学高等研究院大学院に学ぶ。英国ケンブリッジ大学東洋学部共同研究員などを経て現職。専門は書誌学、音韻学、文献学。『日本語を作った男 上田万年とその時代』(集英社インターナショナル)で第29回和辻哲郎文化賞受賞。
著書に『日本人が忘れてしまった日本語の謎』(三笠書房《知的生きかた文庫》)、『語彙力がないまま社会人になってしまった人へ』(ワニブックス)、『心とカラダを整える おとなのための1分音読』(自由国民社)、『文豪の凄い語彙力』(新潮文庫)、『語感力事典』(笠間書院)、『文豪の悪態』(朝日新聞出版)、『頭のいい子に育つ0歳からの親子で音読』(さくら舎)、『明治の説得王・末松謙澄』(集英社インターナショナル)など多数。

「2021年 『読めば心が熱くなる! 中国古典100話』 で使われていた紹介文から引用しています。」

山口謠司の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
新井 見枝香
ヨシタケ シンス...
伊坂 幸太郎
砥上 裕將
ヨシタケシンスケ
ヨシタケシンス...
凪良 ゆう
エラ・フランシス...
有効な右矢印 無効な右矢印

文豪の悪態 皮肉・怒り・嘆きのスゴイ語彙力を本棚に登録しているひと

ツイートする
×