- Amazon.co.jp ・本 (23ページ)
- / ISBN・EAN: 9784030163607
作品紹介・あらすじ
新潟県生まれの作家と画家が描いた日本海沿岸の国道を舞台とする月夜のファンタジー。青い闇と黄色い光芒が美しい魅惑の幻想絵本。
感想・レビュー・書評
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「とおく灯台のあかりが明滅し、海も国道も車たちも、みんな夢のなかにいるような月夜である。」
美しい、美しい本。
丸い月の明かりをうけて、タイトルの文字までが半分月明り色に染まっている。
夜空も海も車の通りも、少し黄味がかって潤んでいる。
ひたひたと静かに胸に降り注ぐような、そんな青の世界だ。
ヘッドライトが次々に通り過ぎるほの暗い車道。
海からの風がまとわりつくような月の夜に、岬沿いの道を少年がひとりとぼとぼと歩いている。
なぜひとりなのか、どこに向かうのか。
ただ、少しうつむいたその様子から何がしかの悲しみと不安がみてとれる。
そんな時、月明かりが見せた一瞬の幻想。
この瞬間だけ少年は、驚いた表情で正面を向く。
「わらぐつのなかの神様」でつとに有名な杉みき子さんの叙情豊かな文章に、黒井健さんのいつもの手法で絵が描かれている。
色鉛筆を細かく削ってオイルに溶かし、指に巻き付けた布に染み込ませて描く。
何も説明はない、もちろん教訓などというしゃらくさいものもない。
誰が見せた幻なのか、それさえも語られない。
ただ、美しさだけが、いつまでも残る。
杉さんも黒井さんも共に新潟のお生まれであることを、奥見返しの解説で知った。
日本海のさざ波がそっと打ち寄せてくるようなファンタジーだ。
読み終えて、またすぐに出会いたくなる夢。
それで何度も何度もこの本を開くことになる。
その幻想とは何か、知りたい方はぜひどうぞ。大人向けの一冊です。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
〝月夜だった...黒々と海に突き出た岬をめぐって、まるでそこから生まれ出るように、車のヘッド・ライトが次々とこちらへ向かってくる...少年はうつむいて道を急ぐ...黄色いバスが、窓いっぱいに灯りをともして来る。月光の差し込む海底のように、ほの青く輝いて...バスの中では揺らめく海藻、鱗を光らせた大小様々な魚たちが泳いでいた・・・〟月夜の海沿いの国道。少年は通過するバスの窓の中を覗き込み、息をのんだ!・・・青い闇と黄色い光芒が色なす、幽玄の世界へと誘われる幻想絵本。
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司書さんから〝黒井健〟さんを知った。
それ以来ファンになり時々、黒井さんの絵に触れたくなる。
お話も好き。
2009年3月にも読んでいて、きっとこの先何回も手に取るだろうなぁ。 -
「新潟県生まれの作家と画家が描いた日本海沿岸の国道を舞台とする月夜のファンタジー。青い闇と黄色い光芒が美しい魅惑の幻想絵本。」
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満月の夜に読みたくなる絵本。それも、人の気配がしないくらい静かな夜に。闇に浮かび上がるような黒井健さんによる絵は、光子の伝達により、パラダイムとして普遍化される。
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子どものときの不思議な感覚って、夢だったような、現実だったような不思議な感じだったなぁ・・・というのを思い出させてくれました。
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月夜の海沿いの国道を走るいつもの見なれた黄色いバス。中をのぞきこむと・・・。
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杉みき子さんの簡潔で優しい文章と、黒井健さんのノスタルジックで柔らかな絵が絶妙にマッチした、穏やかできらきらした絵本。
描かれている場面は、日常の中のほんの一瞬の非日常、ただそれだけなのだけれど、その一瞬が、空気感といい、状況といい、なんともほの甘く素敵な佇まいだ。
「とおく灯台のあかりが明滅し、海も国道も車たちも、みんな夢のなかにいるような月夜である。」
いい夜だ。
大洗の海岸沿いを、夜に車で走った時のことを思い出した。何かが起こりそうで、でも辺りはひっそりとしていて、でもでもなんだか秘密と魔法の匂いがする。
そんな中、ふいに遭遇する小さな不思議。夢か幻かそれとも本当か。
深夜に営業する素敵な喫茶店を見つけた時のような、小粒ながらもきらきらした小さな宝物のような絵本だ。 -
2013/11/5
五年生