- Amazon.co.jp ・本 (367ページ)
- / ISBN・EAN: 9784038142505
作品紹介・あらすじ
児童文学作家として知られるケストナーの生涯を、本人の言葉の引用などを通して描いた伝記。ドイツ児童文学賞受賞作。『ケストナー ナチスに抵抗し続けた作家』(1999年刊行)の新訳。
母の期待に応え、優等生ぶりを発揮した子ども時代。作家、詩人、ジャーナリストなど多方面で文筆活動をこなし、精力的に活躍した二十代。一転、ナチ政権下で執筆を禁じられ、命の危険にさらされながらも生きのびた第二次世界大戦。そして、戦後は、ドイツ・ペンクラブ会長として活躍し、平和を訴えつづけた。
本書はまた、母親との強い絆、出生の秘密、恋人との関係など、プライベートもつまびらかにする。
運命に翻弄されながら時代を見つめ、人はどう生きるべきかを問いつづけたケストナーの人生にせまる一冊。
感想・レビュー・書評
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ケストナーはなぜナチ政権下のドイツから亡命しなかったのか?『終戦日記』からの疑問や児童文学者とされる由縁、母親との密着ぶりなど、才気あふれる若き詩人だった彼の歩んだ人生が鮮やかに描かれその意志が強く伝わってきた。著者の『ベルリン三部作』も読みたい。
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ベスト 『エーリッヒ・ケストナー こわれた時代』 | 教文館ナルニア国
https://www.kyobunkwan.co.jp/narni...ベスト 『エーリッヒ・ケストナー こわれた時代』 | 教文館ナルニア国
https://www.kyobunkwan.co.jp/narnia/archives/weblog/353922022/05/06 -
【申込受付中】8/20 JBBY国際アンデルセン賞と世界の子どもの本講座「ケストナーの生涯とその時代」ガンツェンミュラー文子さん | JBB...【申込受付中】8/20 JBBY国際アンデルセン賞と世界の子どもの本講座「ケストナーの生涯とその時代」ガンツェンミュラー文子さん | JBBY
https://jbby.org/koza/andersen-koza/post-150842022/07/25 -
ナチ政権下、ドイツにとどまりつづけた反骨の作家––––ケストナーの生涯を描く伝記 | Kaisei web | 偕成社のウェブマガジン
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https://kaiseiweb.kaiseisha.co.jp/s/osusume/osm0219/2024/03/04
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ケストナーの評伝。
はじめの少年時代については先日読んだ『ぼくが子どもだったころ』の引用が多く、「これなら『ぼくが…』を読んだ方がずっといいじゃないかと思った。ケストナーの実父については以前聞いたことがあったので特に驚かなかったが、証拠はないので断言するのはどうかと感じた。
しかし、この本の一番素晴らしいところは、第二次世界大戦中から戦後のケストナーを詳しく描いたところにある。
焚書・発禁の対象作家はほとんどが海外に亡命したか、変節したか、死んだ(処刑含む)。ケストナーはドイツに残り、変節はせず、しかし処刑されるような危険な真似はしなかった。これがいかに大変なことであったかが、きちんと書かれている。三十代後半から四十代という、作家として一番脂がのっているときに書きたいものを書くことができなかったというのは、いかに苦しいことであったか。しかも、友人たちはいなくなり(亡命、変節、死)、読者以外の理解者も数えるほどだったのだ。戦中に思うような作品を発表できなかったせいで、戦後には「娯楽小説の作家」「児童文学の作家」とみなされ、鋭い観察眼と優れた描写力を持つ時事評論家であったことは忘れられてしまう。
戦後には数々の賞を受賞し、ゆるぎない名誉を得たが、作家としては忸怩たるものがあっただろう。
著者コルドンがケストナーの作品の欠点も書いているので「だけど、ケストナーの作品みたいな感動が得られる作品が他にありますか⁉」という気持ちで読んでいたのだが、結局コルドンもケストナーを愛し、彼の作品が正当に評価されていないことに怒っていることがわかった。
本書にも書いてあったことだが、昔子どもの本は「二流の作家」が書くというイメージが色濃くあった。内容も大人に都合のいい道徳的なものが多かった。ケストナーは知識人から高い評価を受けていていた一流の作家だが児童文学を書き、そこには「ほんものの子ども」が描かれていた。これを1920年にやっていたということは高く評価すべきだと思う。(チャペックとも似ていると思った。ミルンは一般書・児童書どちらも評価されているが、児童書は息子がいたから書けたのでちょっと違う気がする。)
私自身も児童文学しか読んでおらず、ケストナーがこれほど優れた批評家・文学者であったことは知らなかった。これから児童文学以外の作品も読んでみたいと思う。 -
ドイツの児童文学者ケストナーの伝記。
ナチス時代に「エーミールと探偵たち」以外の本は出版禁止にされ、ベルリンでの焚書の炎の中に自分の作品が投げ込まれるのを目撃していた唯一の作家だという。他の作家は、すでに国外へ脱出していたのだ。ケストナーは、離れて暮らす母親を残して行くことができなかったのだ。
この母子の関係が、なんだかすごい。そして二人から無視され続けた父親も、別の意味ですごい。ケストナーの愛人関係も、なんだかすごい。ドイツ人として戦争を振り返るケストナーの心持ちを考えさせられた。 -
ケストナーの伝記。
うーん、
やっぱ、物語じゃないから、面白くはない。
ケストナーは児童書の作家としか知らなかったので、それは新しい発見だった。
同時代の様々な人々が登場するけど、訳注がついてても難しかった。 -
300ページを超す本だけど、読みやすい。ケストナーは、1899年2月生まれ1974年に食道癌で他界。第一次世界大戦があり、ベルリンの壁の崩壊も見ている。それだけでも、どんなに困難な時代を生きたことか。
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読み応えたっぷりのケストナーの伝記。戦争の時代、不穏な方向へ向かう人々を、ケストナーは文学の力で導こうとした。ナチスが台頭すると、多くの作家が亡命を図る中、彼は国内に残り、上層部に目を付けられながらも、この国の行く末を観察し続ける。ドイツの歴史はもちろんだが、彼がどんなに人々に訴え続けても、過ちを犯してしまう人間の愚かさ、集団の恐怖を感じ、考えさせられる。晩年の彼が、結局自分は少数派なのだと諦めの境地に居たというのは、今の時代にも言えそうで、自分の頭で考え、行動する人というのはどうしても少数派になり得る感じがある。今の日本と、このナチスが台頭していく時代のドイツの空気は少し似ているものがあると感じ、怖くなった。自分の国や周囲の人々が危ない方向へ行きかけた時、自分は冷静で居られるか?過ちを犯さずに、見極められるか?
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これがヤングアダルト向けなの!?という充実の読み応え。
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こんな本がでてたとは知らなんだ。
ケストナーとう名前ももう知らない司書もいるかと思います。
学校図書館に入れなくてもいいと思いますが、司書は読んどいてもいいと思う。
20世紀前半のドイツに代表する作家なんだから。
2022/11/25 更新