デルタの羊

著者 :
  • KADOKAWA
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本棚登録 : 725
感想 : 97
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  • Amazon.co.jp ・本 (416ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784040650647

作品紹介・あらすじ

製作委員会、制作会社、ゲーム、配信、中国、テクノロジー、コロナ後…… これが日本のアニメの“リアル”!

「俺たちはあまりに善人だ」
「誰かが羊飼いにならなきゃ、日本アニメは地盤沈下していく」

アニメ製作プロデューサー・渡瀬智哉は、念願だったSF小説『アルカディアの翼』のテレビアニメ化に着手する。
しかし業界の抱える「課題」が次々と浮き彫りとなり、波乱の状況下、窮地に追い込まれる。
一方、フリーアニメーターの文月隼人は、ある理由から波紋を広げる “前代未聞のアニメ"への参加を決意するが……。

アニメに懸ける男たちの人生が交差するとき、【逆転のシナリオ】が始動する!

感想・レビュー・書評

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  • ファンタジーの名作「アルカディアの翼」をアニメ化したい。オタク系アニメ制作プロデューサー渡瀬と、迷える凄腕アニメーター文月、二人の熱烈なアルカディストが、挫折を乗り越えて悲願を達成するまでを描く、アニメ業界内幕系エンタメ小説。

    アニメ業界のブラックさが赤裸々に描かれる一方、熱烈なアニメ愛で修羅場を乗り越えてしまうアニメーターたちの圧倒的なパワーも強調されている。(本書が、今のアニメ業界を正確に描いているとしてだが)薄給で過酷な労働に耐えるアニメーターに支えられている脆弱な日本のアニメ業界、これでいいのか? まあ、デジタル化やCG技術の進化などによってアニメ制作の手間はだいぶ軽減されてきているんだろうけど。

    「中国ビジネスの不安定さと制作委員会方式の脆弱性、ゲーム会社による元請け制作の買収、制作会社の後継者問題、配信外資の制作費後払いに声優の炎上……」、本書で描かれているアニメ業界のリスク、どの程度リアリティあるのかな?

    何気なく流し見するアニメ作品にも様々な苦労と工夫が隠されているのだとすると、もっとじっくり味わわないといけないかな。

    という訳で、ノンフィクションのレビューのような感想になってしまった。もちろん、物語は単純に楽しめた。前半は入れ子構造にもなっていて、作中作かと思った。

    観覧車内での渡瀬(長さん)と小河(狭さん)のオタク会話が衝撃的。これで会話成り立ってんのかな(笑)。

  • のっけから文明退化時代の壮大なファンタジーではじまり、アニメ業界のお仕事小説なのかと思ったら、劇中劇ってやつなのかってなるも、ひとつの世界に集約してくのは結構面白かった。
    内容的には、戦国時代の下克上みたいなテイストもあり、結局人とのつながりみたいな美談にも感じられた。
    コロナ禍が作中に出てくる話で今年書かれた本だと思うと、直後にきめつ映画でまたアニメ業界の情勢変わったところもあるだろうなぁ。
    主要人物が男メインのせいなのか、ちょっとひと昔前のような感じもするけど、コロナ後なんだよな…

  • 作中作とわかったところでまず納得。それがノンフィクションと判明してまた腹落ち。後半になるにつれて没入感が増した。そういえばタイトルの意味は何だったのか未だにわからない。

  • 最初の部分は自分は要らないような気がします。
    少し戸惑ってしまいました。
    アニメに対して知らない事を知ることが出来ました。
    ただアニメに対する思いが良く分からないですね。
    オタクと言う言葉で片付けたくは無いですけどね。

  • この作者の作品を何作か読んできて、二番煎じ的な作品が多いなと感じてしまった。本作についてもこれはアニメ「shirobako」の小説版じゃんと思ってしまった。内容もどこか古くこの作品でやってることはとうの昔に京アニがやって来た事じゃないかと思ってしまった。京アニといえば昔手塚プロダクションで働いていた女の子が京都に帰って下請けのアニメの仕事をしながら現在に至ったサクセスストーリーで、この実話を小説にしてくれた方がどれぐらい興味深かったことか。海外資本と手を組む話が出てくるが、どの会社もnetflix等でやってるし、ただしチャイナとだけは組んではいけない、共産国家にいくら投資してもその資本は全て共産党に没取されるのがオチである。最近下請けが朝鮮から中国、そしてベトナムに移っているようだが、朝鮮は色彩が酷かったし作画崩壊もあった、その点ベトナムの仕事はすごくいいように思うのは考えすぎだろうか。

  • 面白い。辻村深月さんの「ハケンアニメ」もそうだったけど、アニメものは愛があるからさわやかでいいよね。本書は現実と創作が混じり合う構成もリーダビリティを高めていて見事。

  • この世界にあまり興味のない私でも分かりやすく楽しめました。

  • 文字で、絵で、声で、命を吹き込む人達の物語です。

  • 読書備忘録582号。
    ★★★☆。
    アニメ業界のお話。しっくりこない。作者はいろいろ取材したと思うが、やっぱりしっくりこない。
    アニメ業界はもっともっと進化している・・・。
    物語は「アルカディアの翼」という冒険小説の冒頭で始まる。そしてこの作品をアニメ化したいという十字架を背負った玩具メーカー社員の渡瀬の話になる。アニメは製作委員会方式で作成され、そこにはアニメ制作と周辺ビジネスで商売として成立するんだという構図。グッズ販売で利益を得るのが渡瀬という訳だ。
    渡瀬はアルカディアの原作者近藤との長年の交渉でやっとアニメ化の許可を得る。しかし、メインの声優の不祥事で計画は頓挫する。渡瀬は玩具メーカーを去る・・・。
    場面は変わり、トータル・リポートというドキュメンタリーアニメを制作しようとしているアニメーターの文月の物語になる。なんとトータル・リポートはアルカディアの企画から挫折までを描いたノンフィクションアニメとして制作される計画。そして、トータル・リポートも制作途中に社員が起こした煽り運転事故の結果、頓挫する。制作会社も解散し、文月も無職となる。
    そして渡瀬と文月が再び手を組み、アルカディアの翼を世に送り出す!
    というサクセスストーリーです。
    ですが!登場人物を躍らせることで、イチイチくどいくらいアニメ業界を業界!業界!業界!としつこく表現する作風にちょっとイラついてしまう私。笑
    個人的にアニメは、私の人格形成の半分ほどを占めるくらい重要なアイテムなのでイライラ感が半端なかった。
    夢を追う男たちとそれをサポートする女という構図もイライラを増長させる。笑
    辻村深月さんの傑作「ハケンアニメ!」には足元にも及ばない。
    どうもこの作家は相性が悪い。

  • 小説『アルカディアの翼』を渡瀬がアニメ化しようとする第1章、文月が1アニメーターとして働く第2章、第2章の最後に『トータル・レポート』として渡瀬の失敗の物語をアニメ化しようとしていることが書かれる。全てが同テクスト上で書かれるため、どこまでがフィクションで作品なのか、序盤は判別できない点は面白い書き方だと思った。
    物語の要所や結果の部分は空白にしたまま、時間が飛び次の章が始まる書き方には好みが分かれるだろう。加え、後半は文月視点で展開されるため、実は渡瀬が奔走しており、アニメーターの繋がりの良さをアピールする終盤に、その実感が欠けてしまっているように感じた。
    コーヒーを飲む休憩室、卓球、PUB、観覧車などリフとして機能する場所とそれに付随する内容の書き方は効果的に作用していると感じた。

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著者プロフィール

1979年、兵庫県生まれ。神戸新聞社在職中の2011年、『盤上のアルファ』でデビュー。2016年『罪の声』で第7回山田風太郎賞を受賞し、“「週刊文春」ミステリーベスト10 2016”国内部門第1位、2017年本屋大賞3位に輝く。2018年には俳優・大泉洋をあてがきした小説『騙し絵の牙』が話題となり、本屋大賞6位と2年連続本屋大賞ランクイン。2019年、『歪んだ波紋』で第40回吉川英治文学新人賞受賞。2020年、21年には『罪の声』『騙し絵の牙』がそれぞれ映画化された。

「2022年 『朱色の化身』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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