- Amazon.co.jp ・マンガ (196ページ)
- / ISBN・EAN: 9784040654300
作品紹介・あらすじ
脱引きこもりを目指して外出した矢先、不慮の事故に遭い異世界に転生した女子高生の白井星奈。
魔法が日常的なこの世界で、彼女が使えるのは「爆ぜろ」「滅びろ」という二つの属性不明魔法のみ。
周囲から“魔女”と恐れられ、誰も来ないルードファラの森の奥でひっそりと暮らす彼女のもとに、1人の青年が訪れて――!?
二度目の十八歳の誕生日を迎えた日、引きこもり魔女・セナは運命の激流に飲み込まれる――!
感想・レビュー・書評
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十八歳、せめて一歩と踏み出した。一度目は「死」、二度目は「?」。
カドカワが「小説家になろう」系統・路線を企図して創刊した女子向けWEB漫画レーベル「flosコミックス」から送り出された作品のひとつです。
『墜落JKと廃人教師』のsora先生を作画に迎え、『悪役令嬢の追放後!』などの袖原テイル先生が原作を務めるところのオリジナルは、ちょっとダウナー入った(元)女子高生「白井星奈(転生名:セナ)」を主人公に据えた定番の異世界転生モノでお送りします。
二度人生を送っているから精神年齢が高いとかそういうことはなく、むしろ対人経験が壊滅している主人公セナ。
なにも変われていない自分がせめて一歩でも踏み出そうとがんばるそんな幕開けなんですが、意外と展開が早いです。
人里離れた森に住んでいたところ、行き倒れのイケメン王子を拾って、町の人に受け入れられて、自分の固有魔法の真価を知って、ここからの波乱を予感させて、簡単に言ってしまえばここまでで一巻。
まだ序盤という事もあってここからの展開はまだ読めませんが、順風満帆に行くようにも苦難の連続に遭うようにもどちらとも取れる辺り、まさに物語のはじまりと言った感があります。
相当にシビアな背景が見え隠れしているんですが、そうと思えないくらいには主人公を適度に受け入れ、持ち上げてくれる周囲の反応が心地思えるのが、嵐の前のひと時に思えてくるのが心憎い。
印象、容姿共に日本にいたところとそう変わらず、行動範囲が極度に狭いのは前世と同じと自嘲していたりと感覚としては「異世界転移」とそう変わらないと思いますが、やはり退路はないんですよね。
主人公が真っ当に善良な性格で前向きに行動をはじめたのに、虚無感と退廃感がどこか付きまとう雰囲気などは画の個性を生かした話作りのようで大変好きです。
それもそのはず、主人公が転生に伴って与えられた特典(?)である破壊魔法「爆ぜろ」&即死魔法「滅びろ」が問答無用の一言で発動するということもあって相当に凶悪です。
バトル漫画なら通らないことで有名な「即死」なんですが、この手の少女向け作品が「戦闘」を主題にしていないことは明白です。
いざ街に戻って見れば旧知の人々が本当にいい人ばかりだったので錯覚しがちですが、何かの拍子で人間を指向してしまったら、恐れられ虐げられる未来しか見えないのが怖い。
ちなみにこの世界における魔法は属性ごとに分類されつつ、「自然界に遍在する精霊へ呼びかける」というおなじみの様式です。
その他に、ストックできる魔力エネルギーを器物と組み合わせる「生活魔法」が日常に根差しており、社会の半数を占める非魔法使いも近世~近代の生活を送れているのは大きい。
この辺の説明は相当こなれています。
母親を亡くした後の空ろな「日常」を生きる上では問題ないことを説明しつつ、ここから激動が待ち受けている子を予感させます。「本題」に向けて些事に心を寄せずに世界観を説明して、一気に話を進めていきます。
なお、魔法の発動方法について補完しておくと。
形式に沿った「魔法書詠唱(リード)」、情熱を乗せた詩「通常詠唱(シング)」、簡略化した「詠唱略(コール)」の三様式が提示されています。
これもまた、ファンタジーではけして珍しくはない形式なんですが、主人公の特異な魔法と突き合わせる形で順を追って説明してくれているので、流石は原作者も経験者であると実感させられます。
で、一巻のラストで主人公がこの作品のキーとなる「ドラゴン」にとって重要な存在であることが明かされ、ついでに人化したドラゴンの王に求婚されます。
地味で幸薄いけど、モテる。ヒロインの基本ですね。
その一方で、主人公セナを森から連れ出したメインヒーローであろうキース王子が庶子で王からは疎まれている「第六王子」という100%枷にしかならない立場に置かれているのが辛かったりします。
「君の味噌汁が毎日飲みたい」とかいう古典的なプロポーズの言葉があったりしますが、なぜか逆に少女漫画のヒーローの方からヒロインの方に作ってくれるという逆転現象によるリードは見逃せないと思いますけどね。
ただし庇護者として心もとない王子と、人心の機微をわきまえているようには思えない若きドラゴンの王。
加えて顔を見せないことで逆に苛烈な印象を与える父王がどう動くか?
展開こそ早めですが、物語の次なる取っ掛かりは読者にも掴みやすいように提示されています。
何度も繰り返すようですが、展開が早いです。逆に、そのことによる意外性に惹かれた気もしますが。
ヒロインに突っかかっていく無骨な武官、物腰柔らかな知恵者の文官、お調子者の若手と、王子の部下もキャラを立てる上でわかってるなーって配置がされています。
ただし、全体的に別に買う必要のない不快感を排除するという意味では申し分ない一方、ひるがえって毒のない優等生のように見えます。
よってまだ様子見段階かなという印象も際立ち、評価は現時点ではし辛い気がしますが。
ただ、ここから話を展開できるポテンシャルも感じられますし、それ以上に話の基盤はしっかりまとめているので悪印象で評価を割り込ませることがないのは大きいかと。
一巻時点にして「転生」という世界から突き放される寂しさと、けしてそうでなく受け入れてくれる人々の優しさ、その両方が提示されているので、安心して波乱に飛び込んでいける気がしました。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
絵が上手い。
国を象徴するドラゴンたちがかっこいい。
火の国の暴君王のS顔も好みだ。
堕落JKも読んでみたい。 -
2020/02/13(木)購入。
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引きこもっていた主人公が外に出て、
ようやく新たな気持ちで再スタート………と思ったら
これからどうなるのかちょっと気になる