彼女が好きなものはホモであって僕ではない (角川文庫)

著者 :
  • KADOKAWA
4.29
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本棚登録 : 872
感想 : 52
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  • Amazon.co.jp ・本 (352ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784040735108

作品紹介・あらすじ

同性愛者でありながら、異性との恋愛や家庭を持つことに憧れ、自分のセクシャリティを隠す高校生・安藤純と、ボーイズラブが大好きな女子高生・三浦紗枝。ボーイズラブに理解を示した純に紗枝は惹かれ、やがて告白する。純には年上既婚の彼氏がいたが、「ゲイの自分もふつうの生活ができる」ことを確認するため、あえて紗枝の告白受け入れ、付き合うことに。しかし、偽りの恋愛はうまくいかず、ふたりの関係は次第に歪んでいく。そんな中、純が悩みを唯一共有していたネット上の親友「ミスター・ファーレンハイト」が自殺する。取り乱した感情を抑えきれなくなった純は、既婚男性の彼氏に縋るが、慰められる現場を紗枝に目撃され、二人の関係は破滅。さらには、学校中にゲイだと広まり、偏見の目にさらされた純は、誰にも受け入れられない絶望を胸に、校舎から飛び降りる・・・。

感想・レビュー・書評

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  • 性に関する考え方とか、見方が変わった作品でした。同性愛者で普通になれないことを悩む純の深い言葉。BL好きで、ちゃんと同性愛者を理解しようとする三浦さん。純と同じく同性愛者で、純のネット上の友達ミスターファーレンハイトの言葉。どれも刺さるものがありました。 
     私は、同性愛者も、異性愛者も普通だと思います。人を愛するという点では全く同じだからです。ただ、「同性の方しか愛せない」、「異性の方しか愛せない」それだけの問題ではないでしょうか。それだけの問題に抵抗がある人が減り、誰もが自分が好きな人を自由に愛せる世界になることを願っています。

  • ホモの僕が、同性愛者であることに苦しみ、異性愛者になろうと奮闘するも、逆に自分は同性愛者なのだと再確認する結果になる。
    性的な好きと、人として好きっていうのは伴っていないといけないのか。人として好きな人が同性だったら友達に、異性だったら恋人になるってのが今の世の中なんじゃないかなと思ってる。同性愛者の場合は逆。
    社会学の授業で、性的なことと伴侶っていうのは別でもいいんじゃないかっていう話題があった。確かにそう思う。それはたぶん私が上記のような考えだから。家族が男と女の組み合わせじゃないとだめなら同性愛者の人は苦しい。なら、性的なものは家庭の外に求めてもよくないか?恋愛経験がないからこんな考えになるのかなあ、世間的にはおかしいんかなあ。

    世の中を簡単にしてしまう、つまり人を簡単に分別して自分の分かりやすいように都合いいように解釈する。こういうことが世の中ではよく起こる。
    あの人はホモだからこう。こんなことするのはあの人がホモだから。そう言ってしまえば私たちは安心する。その人自身を見てそれに振り回されるのが動揺するのが困惑するのが怖いから。その人の奥に触れたくないから。自分が把握できない分からないものがあるのが怖いから、自分が分かるように簡単にする。
    けど主人公は自分自身を見てほしいんだと気付かぬうちに心の中で思ってる。それをしてくれる女の子が現れる。女の子が。


    「俺たちは認めてる。お前らが勝手に隠しているだけ。そういう風に、責任逃れしたいだけなんじゃないか。俺たちは認めない。だからお前たちは隠せ。」
    かっこいい言葉だと思う。いい人の振りをしない。自分の要求は押し通す。それが相手も自分も平和に暮らすためになると思っているから。


    「たった一つの特徴を自分の全てだと思い込んで、本当の自分自身を見失っている。」
    これはホモであることだけじゃなくどんなことにも言える。このマインドを持っとくことは、今後コンプレックスに押しやられそうになっても前をむく糧になると思う。

  • 本屋でタイトルを見た時に、「これは読まないといけない(絶対におもしろい)」と思った。
    読んでみて、こんな心を抉られるような、感情を揺さぶられるような、読みながら読むのがつらくなるくらいなのに読み進めずにいられない。
    久しぶりにこういう小説に出会えてよかった。

    あらすじを簡単に言えば、「同性愛者であることを隠している主人公の男子高校生とBL好きのヒロインの女子高生の青春ラブストーリー」なのだけれど、作中に出てくるように、例えば、物理の問題で「ただし摩擦はゼロとする」や「空気抵抗はないものとする」とあるように、世界を簡単に理解するために、カテゴリーにはめ込まないで欲しい。
    ただ、読んでほしい。後悔はしないと思う。

  • タイトルにそもそもホモって侮蔑的な言葉が入ってるけど大丈夫?と読む前は思ってたけど、
    全然そんなことはなくて、むしろ世間が思っている認識しているリアルを理解するためにあえてこのタイトルにしたのかもしれないと思った。
    ラストらへんで安藤くんから三浦さんに対しての言葉でこの内容について回収されてて、
    安藤くんが三浦さんに本当に自分をさらけ出して、これからも人間同士として大好きでいようという決意が見えた瞬間でもあった気がする。

    三浦さんのスピーチの「彼は透明な壁を目の前に置いてて、この世界を壊さないように、自分がこっち側にいるようにしてる。彼は自分が嫌いで私たちが大好きなんです」辺りが本当にくらった。。。
    わかろうとしてても他人のことは奥深くまでわかるものじゃないし、それでもただ単純にそのままありのままそこにあることを皆が当たり前と思うだけで、誰かが救われることもあると思う。
    普通なんてどこにもなくて、自分の中の普通に自分が寄っていく
    摩擦や空気抵抗をなくすみたいに自分を偽らない
    難しいけど差別偏見をなくすには知識とリアルを知ることなのかなやっぱり、、
    この話があまりに当たり前すぎてつまらんよねって言われるぐらい、皆が色んなことを知って普通の認識を変えられる世の中になって欲しいと本当に思う。
    後書きのエンパシーの話も印象的でした。

    映画も見たい!

  • 知り合いにゲイのカップルがいたり、普段からLGBTの記事を読むようにしていたので、サラッと読める小説かなあ?と迂闊に手を出しました。
    読み初め、想像を超える生々しさに動揺。最後まで読めるかしら?なんて心配したり。でもそんな心配なんて無用だった。

    2020年に読んだ本の中で1番面白い!とまでは行かなくても(たくさん面白い本を読んだので、どの本も甲乙つけがたい…)、ゲイ等のマイノリティな立場の人への考え方がすごく変わった。ほとんどの同性愛者は同性婚をしたいのではないかという勝手なイメージが崩れた。
    そりゃそうだよね、たくさんの子供や孫に囲まれて幸せな老後過ごしたいよね。なんでそんな当たり前なことになぜ気付かなかったんだろう…

    2020年読んで良かった本No.1です!

  • ネットで知って気にはなっていた本。書店で手に取りました。タイトルが独特ですね。
    ライトに書かれているので青春の青臭さもありながら、性的マイノリティーについて深く思うこともありで、なかなか読みごたえがありました。わたしは読みやすかったと思います。

  • お気に入りの本。
    有識者であれば「え?」と思うタイトルも、後半できちんと説明されています。

    自分が卑屈な分、素直な三浦さんはちょっと苦手。

    なんとなく続編は読まない方がいい気がして、手が出せない。

  • 読了。ゲイである高校生がBL好きな同級生の女の子と付き合い始めて自分の性癖とそれに抗えない自分に対する葛藤とで…凄く深くて読んでてちょっと苦しくてなっちゃいました。

  • 作品名で買ったけど途中鳥肌立つくらい超絶面白かったしタイトルだけでは語れない素晴らしい内容だった

    近年特にこう言った話題が取り上げられて自分も含めみんな綺麗事を吐いている。だけどいざ実際に同性愛者がいたら純くんがゲイってバレた最初の月曜日の亮平と同じ普段通りに見えるけどぎこちなくなるんだろうなって思った

    だから小野が言ったみたいな同性愛者がコソコソ隠れる世の中なんだろうなとは感じた
    口で言うのと行動するのは全然違うって改めて感じた





  • 自分がゲイだった場合、そのことを周りに言えるのかと考えてみたが、そうできる自信がない。
    それは周りからの目が変わってしまうと思うから。

    主人公のゲイを隠しながら生きているときの心の声が苦しみを物語っている。
    周囲が"普通"と話していることや、"当たり前"とされていることに対して、毎回葛藤しながらそっち側の世界の"常識"で生きていかなければならないのだから。

    常識なんてないことを示してくれる一冊。
    性についても深く考えさせられる。

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著者プロフィール

小説投稿サイト「カクヨム」に2016年10月より『彼女が好きなのはホモであって僕ではない』を投稿開始。2018年同作で書籍デビュー。同作は2019年に『腐女子、うっかりゲイに告る。』のタイトルでドラマ化され、話題となる。他著作に『御徒町カグヤナイツ』(KADOKAWA)、『今夜、もし僕が死ななければ』(新潮社)、『#塚森祐太がログアウトしたら』(幻冬舎)などがある。

「2023年 『100日後に別れる僕と彼』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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