転生魔女は滅びを告げる (富士見L文庫)

著者 :
  • KADOKAWA
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感想 : 4
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  • Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784040737768

作品紹介・あらすじ

「今日こそ学校に行く」その思いを胸に、十八歳の誕生日に非業の死を遂げた星奈。天使の計らいで転生したが、ある事故から今世でも引きこもりになってしまう。けれど不遇の王子と出会い、運命の環が巡り始める……!

感想・レビュー・書評

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  • 少女は抱える、呪いの言葉を。少女は解く、呪いの言葉を。祝福の詩へと謳い上げる。

    世に出た順番としては同名の漫画の三巻に続く形での、こちら小説版の刊行となっています。
    つまりは漫画で言うところの二巻までの内容をあますことなく収録しています。
    具体的には主人公「セナ」が彼女にとってのヒーローである「キース」王子に連れられて旅立ち、風のドラゴンの王と出会い、自分がこの世界で何ができるかを知り、自らの意志に基づいて再出発に至る。

    言うならば、作品全体の導入部を忠実にノベライズした作品となっているのです。
    もっとも、この小説版は原作者がそっくりそのまま手掛けられているのでノベライズという形容が正しいかどうかについてはいささか自信がありませんが。まぁそんな話はさておきますか。

    現状漫画の方ですが、2022年11月現在時点ではなんらかの事情があって連載のペースが低調になっています。コンテンツとして理想的な形で完結まで持って行くことは難しいと個人的に不安を抱いています。
    もちろん、今後進展の可能性はあります。しょせんは何も知らない一読者の意見に過ぎません。

    繰り返しますが、どうか杞憂であってほしいと私個人としては願っています。
    とは言え、本作を手に取る上ではどこかの区切りを待たずにブツリと物語が断ち切られる可能性を心の隅に置き、ある種の覚悟を胸の内に携えていただけいたほうが良いかもしれません。

    なお本書にはナンバリングが付けられていないので、小説として巻を重ねていくことはあまり視野に入っていない風です。結末も、今後の予感を胸に眠りにつくという形で堅実にまとめられています。

    コミックが続こうと立ち消えようと、ある意味関係ないポジションに立っているともいえましょう。
    なので、その都度になって星の数を増減させるのは道理を欠くかもしれません。
    よって、この本の評価は妥当とも妥協ともいえる星四つで固めることにいたします。ご容赦ください。

    また、漫画は既刊五巻で、現状は二巻ごとに舞台を変えて新章に向かう構成を取っています。
    個人的な評価を付記しておくと、導入である第一章が上々、次なる第二章で疑問符が付く展開、今の第三章で巻き返しを図っている最中といったところと愚考する次第です。
    いずれにせよ、興味を持たれた方はほかの方の意見は参考程度に留め、ご自身で見極めていただければ。

    さて話が少々飛びました。話を戻して小説、漫画をひっくるめた本作について語らせてください。
    忠実なノベライズと先に申し上げた通りに必要な情報は漫画の方でしっかり拾ってくださっています。なのでことさらに小説で手に取る必要はない。
    そう私も思っていました。思っていた――つまりは過去形であり、評価は改めています。

    実際のところ、漫画を読んでみて世界観とキャラクターが気に入ったのなら読む価値は十分にある。
    作品を取り巻く状況を捨て置けば、そう断言できるくらいにはかっちりした出来だと判断しました。

    まず、媒体によって描き方がどう変わるか比較する楽しみがあるのがひとつです。
    良くも悪くもストレートでわかりやすいのが小説で、詩的な部分を拾い上げてより劇的な形に仕立て上げているのが漫画、そういった違いがひとまずは挙げられると思います。

    すべてを拾っていたらテンポを損なうのも確かです。情報をかみ砕き、再構成しながらちゃんと必要な情報をその都度美麗な演出で魅せてくれている漫画の完成度の高さを改めて再認識しました。
    忠実な分、比較対照するだけで勉強になるなあと思うこともあったりで面白かったです。

    ただその一方で漫画ではテンポ重視でつなぎ部分を省略していたり、細かいところで拾えていない心情描写や補足もあるので小説で補完する意味は十分にあると思います。
    私が思った範囲内では、風のドラゴンの王「リシュカル」の危うい心情やエピローグで語られた現状の確認などでしょうか。特に後者は漫画に盛り込んでおけば今後がスムーズに進んだのかなと思ったりも。

    それから比較する限りでは漫画では現実的な生臭い政治の話が省略気味でしょうか。
    良くも悪くも主人公の「セナ」とそれを支える「キース」の関係性を重視しています。主に恋愛と感情にフォーカスが当てられているようです。要は話に焦点を当てる向きが微妙に違うのですね。

    ただ私の感想としては、キースがなんだかんだで王子という上の視点からきちんと周囲を見ているのだという事実を本書から読み解くことができた。ここが一番自分の中では大きいです。
    それに原作者に陰謀渦巻く世界情勢を書く意志はあるのだという確信も持てました。結果として、漫画だけ読んだ時よりキースへの好感度が上がりましたし、今後のシナリオへの期待値も上方修正できました。

    では次に、漫画と共通するシナリオの特色について改めて触れていきます。
    本作における世界観は魔法と精霊とドラゴンが密接につながった王道のファンタジーです。
    全体的にシンプルにまとめられており、判断に迷う部分はそうはないのでよくできていると思います。

    特に露骨なほどに簡素に綴られた序盤の文章も劇的さはないこと自体が結構お気に入りだったりします。現代日本から異世界に転生したはいいものの、外界に出ることがなくほとん変わり映えのしない日常を送るしかない主人公の虚脱感を演出していますから。

    続く唐突な来訪者に連れられ広い世界に旅立つパートを、ギャップとして上手く盛り立てることになりますから。上手く解放感を生んでいるのですね。

    ただし、具体的な形で触れることはしませんが、ラストに向けて前に進む上での障害となる主人公とヒーローの過去のトラウマを解決するパートについては好みが分かれるかもしれません。
    明快な言葉で解決するというよりぐちゃぐちゃな感情の奔流で押し流すしかなかったわけですから。

    きっとそうだろうと仮説は立てられます。
    おそらくはそうだろうと劇中でも受け入れられています。
    しかし、そもそも確かめようがないし、謎解きとしては地味、そこに尽きます。
    ただ、きちんとクライマックスに盛り上げどころを持ってきているので気にならないとは思います。

    以上。
    漫画において、服飾を中心に異世界を盛り立てようとする絵的な説得力がずば抜けており、またシナリオの大枠は変わらないため小説の方はどうしても副読本として目を向ける形になってしまいました。

    必要以上に文言を並べてしまった部分もあるでしょう。
    とは言え、書評として差異を述べることは叶ったと思います。
    それが適切かは置いておいて、少しでもご興味を引けませたら幸いです。

    小説だろうと漫画だろうと同じ本。そして本は新たなる世界を開くための扉であるとよく言われます。
    なので世界の入り口はいくつもあってもいいのだと。つまりはそういうことなのかもしれませんね。

  • これは続くの?何属性かもわからない、用途は限られた魔法2つしか使えないヒロインちゃん。たまたまやってきたヒーローくんに連れられ、ぼっち脱却。そこに竜も絡んできてー。え、もっと絡んでよ、ヒーロー竜氏、もっともっとー!という感じで何か物足りなさを感じてしまった。

  • “爆ぜろ”と“滅びろ”しか魔法が使いない少女セナと王子キースの出会いと少しずつセナが成長していくストーリーにグッときます。
    小説の前に漫画の方を拝読したのですが、転生ものでありながら胸キュンシーンもあってとても読みやすいです。

  • 08/16購入。

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著者プロフィール

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「2017年 『野獣な騎士団長は若奥さまにメロメロです』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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