こんな街に「家」を買ってはいけない (角川新書)

著者 :
  • KADOKAWA
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感想 : 25
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  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784040820828

感想・レビュー・書評

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  • 新年(2017)早々読み終わった本です。昨年末に2040年にはあらゆるビジネスモデルが終焉する、という衝撃的な本を読みました。その本の著者が、不動産に関する本を書いていることがわかり、取り寄せて読んでみたのが経緯です。

    数年前に読んだ本がきっかけで「なぜ、以前すごい価格で売り出されていたスキーリゾートのマンションが、10万円で売られているか」のカラクリが分かりました。結局は、ババを把まされるということでした。トランプのババ抜きと同じで、誰かにババを渡さない限りゲームに負けてしまう(不動産的にいえば、永遠に維持費を払い続けることになる)のです。

    この本も趣旨としては同じようなアドバイスがなされています。しかし、少し厄介なのは、その不動産が相続するものであったり、自分が苦労してローンを組んでやっと手にしたものであることです。かつて住んで懐かしい思い出が詰まっている住居を、不良資産・不良債権とは思いたくないですよね。しかし、そのような感傷的なことはさておき、具体的に問題を先送りしておくとどうなるのか、新法(空き家特措法、2015.5)施行により、どのような影響が及ぶのか。現在払っている固定資産税にはどのような特典(本来の6分の1へ軽減)があるのか、知っておくべきことが満載でした。

    以下は気になったポイントです。

    ・空き家が増加する背景として、1)戦後一貫して増加し続けてきた人口が2008年を境に減少、毎年20万人減少しているにも拘らず、毎年100万戸が着工している、2)人口構成の極端な高齢化、3)ライフスタイルの変化(p20)

    ・郊外の高級住宅地の人気が凋落した理由は、都心部で高級仕様のマンションが数多く誕生したから(p25)

    ・1996年頃を境に、専業主婦世帯と共働き世帯は逆転している、91年くらいでほぼ同じになり、2000年を超えたあたりから差が激しくなった。2015年現在では、1114万世帯vs687万世帯(p34)

    ・1997年に大都市法の改正が行われて、容積率の緩和、計算方法の変更、日影規制の緩和により、マンションを大量に供給可能となった(p56)

    ・木造住宅は、しばらく人が居住していないと、建物の劣化スピードが早まる。(p74)

    ・2014年8月に広島で発生した大規模土砂災害は、新興住宅地で広島市内に通勤するベットタウンとして発展してきた、1960年代後半から開発された(p85)

    ・ニュータウンは都市郊外部に面的に拡大してきたが、今は超高層マンションのように、立体的に伸びるニュータウンとなっている(p90)

    ・買ってはいけない新興住宅地として、1)東京までの通勤時間1時間超、2)1970-80年代に開発、3)駅からバス、4)住宅地内の傾斜がきつい、5)近隣に観光地なし、6)地域内に産業がない(p92)

    ・不動産価格の高騰を享受できたのは、戦中世代から団塊世代まで、1950-60年代の人たちが割りを食っている(p98)

    ・タワーマンションは、新築時は、修繕費は安かったが、25年も経過すると何倍にも増額、さらに修繕に対して追加負担(p101)

    ・今は、孤独死や自殺があったら、重要事項説明書で告知が必要(p102)

    ・賃貸する場合のポイントは、毎日必ず使う水回りの「清潔度アップ」である(p142)

    ・不動産屋のチラシで、古屋ありといった表示は、たいていの場合、築20年以上の家屋があり、買い手側で取り除いてくれといった意味(p196)

    ・家賃を払うとは、費用として捨てているのではなく、「効用を得るためのもの」である(p206)

    ・コモディティになると、価値は急速に下落する、郊外戸建て住宅地の不動産価格が下落しているのは、当たり前の商品になってしまったから(p209)

    ・自宅が財産かどうかは、住んでいる間の家族の効用、そして最後に売却した場合の売却益がどの程度のものになるかで判断される(p213)

    ・4000万円を20年の元利均等返済、金利1.5%、返済額は毎月19万円、年間で231万円、効用が20年続くかという判断となる。(p214)

    2017年1月3日作成

  • 賃貸暮らしの私が家に対して思っていたことが結構書かれていた。
    持ち家なんて負債になってばかりじゃんという思いがより強まったw

  • 題名は直接は郊外の新興住宅地のことで、これは事前に調べていたので「やっぱり」としか思わなかったが、著者はもっと長い目広い視野で「同じ論理でタワーマンションも買ってはいけない」という。これは鋭い指摘だった。
    その論理とは、街に新陳代謝があるのか、ということ。郊外の新興住宅地の問題は、同じ時代に同じ年代の人がいっせいに更地にして住宅を建築したことで住人が同時に一様に年をとってしまうことにある。土地も二世帯住宅(三世代居住)できるほど広くなく、区画の分譲も空きなく売り切るため次の世代が住む余地がない。そういう物理的な制約に加えて、心理的にも住み続けたいと思わせるような絆はない。お父さんは都心部の職場へと往復するだけの何十年間。子供は習い事や学習塾、都心の私立校へ電車通学、友人とはネットでつながりとなれば、育った街に戻りたい理由はない。なので子世代は都心のタワーマンションを買う。
    ところが、20年後30年後には、今のニュータウンと同じことがタワーマンションで起きるようになる。タワーマンションはニュータウンが横に広がったところを上に伸ばしただけで、同じ世代が同じ時期にいっせいに入居して同様に年をとっていく、三世代住居にならず街として成り立たない点が同じだから。

  • 家の作りを重視する本が多い中、この本では「地域」を焦点に記載されている点が面白い。また、時間経過に伴う家の存在意義についても書かれており、自分の理想の「家」とはどのようなものか、を考えるきっかけとして大変有意義であると思う。

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著者プロフィール

不動産プロデューサー。1959年生まれ。東京大学卒業後、第一勧業銀行(現みずほ銀行)、ボストン コンサルティング グループ、三井不動産などを経て、オラガ総研代表取締役兼全国渡り鳥生活倶楽部代表取締役。著書に『空き家問題』『不動産激変』『ここまで変わる!家の買い方 街の選び方』など。

「2022年 『2030年の東京』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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