ヒトの言葉 機械の言葉 「人工知能と話す」以前の言語学 (角川新書)

著者 :
  • KADOKAWA
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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784040823485

作品紹介・あらすじ

AIと普通に話せる日はくるか。人工知能と向き合う前に心がけるべきことは。そもそも私たちは「言葉の意味とは何か」を理解しているか。理論言語学出身の気鋭の作家が、言葉の「不思議」と「未解決の謎」に迫る

感想・レビュー・書評

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  • 非常に機智あふれた『働きたくないイタチと言葉がわかるロボット』を書いた川添さんの著作ということで手に取る。擬人化したイタチが、言葉がわかるロボットを作ろうと、他の動物たちが持つ技術を頼りにして機能強化していくという物語で、まったく独創的ではあるけれども人工知能とはどういうもので、どういう課題があるのかをわかりやすく示すことに成功していた。この人は本当に頭がよくて、信頼できる人なんだろうという印象を持った。

    本書『ヒトの言葉 機械の言葉』は、川添さんが言葉の意味とは何か、機械にとって言語を理解するとは何かを平易に書き下ろしたものであるとのこと。『イタチ』とは違って物語形式は取っていないため、ストレートに研究分野・技術分野としての課題は伝わってくるが、少しわくわくするような面白さというものはなかった。また、内容も同音異義語や文の区切りやコンテキスト、フレーム問題など具体的な日本語のわかりやすい事例とともに示されており、入門書としては良書であるといえるものの、やや物足りなかった。ただ、丁寧な語り口は相変わらず信頼できる人だという印象は変わらない。

    AIについては、『自動人形の城 人工知能の意図理解をめぐる物語』という物語形式のものを『イタチ』と本書との間に出しているようなので、そちらもいずれ読んでみたい。


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    『働きたくないイタチと言葉がわかるロボット 人工知能から考える「人と言葉」』(川添愛)のレビュー
    https://booklog.jp/users/sawataku/archives/1/425501003X

  • AIが「言葉を理解する」ということの意味を、平易な言葉で説明している。最終的には人が言葉を理解するとはどういうことなのか、言葉の意味とは何か、という問題に行きつく。人が言葉を判断する時は、辞書にある意味だけでなく、常識や文脈、状況やその言葉を発している相手が属している文化などを全体として理解しているから、言葉の単独の意味が分かることだけでは人間と同様の理解にはならない。
    AIの中身がブラックボックスである以上、その性能は「振る舞い」で評価するしかない、と著者。チューリングテストと同じだ。受け手が「人間だ」と感じる程の振る舞いをすること。中身を「理解しているか」とは別問題だ。でもそれは人間同士にも言えることだ。言葉を尽くしているつもりでも、理解してもらえないということがあるわけだから。そう考えると、なかなか話が通じない、空気を読めないなどと言われる場合の”人間世界”のコミュニケーションは、AI程度、と形容できそうな気もしてちょっと面白い。

  • ここのところ少し時間があることもあり、川添愛の本をいろいろと読んでみようと思っていまして、今回は図書館で見つけたこの本を読んでみました。

    「AI(機械)による言葉」の説明に多くの紙面が割かれていまして、「AI(機械)はヒトの言葉を理解しているのか?」についても、かなり丁寧に考察がなされていました。

    この本で、「『AI(機械)による言葉』に対する理解が、『ヒトの言葉』に対する理解につながる」と語られているように、「機械に対する理解が、ヒトに対する理解を深める」というのは、これからの社会において、重要な視点かもしれません。
    同時に、「機械の振る舞い」と「ヒトの振る舞い」は、たとえよく似ていたとしても、本質的には異なるかもしれない、という視点も重要かもしれません。

    AI(機械)の特徴や振る舞いを正しく理解するためにも、この本に書かれているような内容を理解しておくことは、現代人にとって重要なことだと思います。

  • AIを「数の並びを入力したら、数の並びを出力するもの」と定義して、AIがが出来ること、出来ないことを平易な言葉で解説してくれている。
    ヒトの言葉の難しさ、言いかえれば人間の言語能力の凄さが分かって面白かった。本書はAIの可能性と限界について考えるきっかけになる。

  • 人間と自然な言葉のやりとりができるAIが登場していますが、「果たしてAIは言葉の意味を理解しているのかどうか?」という疑問について深掘りした1冊です。
    現在のAIは「こういう単語や語句の後には、このような語句が続くことが多い」といったように統計的に解析して言葉を発しているようです。これを「言葉の意味を理解している」と言って良いかどうか、微妙な問題です。
    その辺りの議論を正確に進めるために、本書は「言葉の意味とはどういうことか」という点、「人が言葉の意味を理解するとはどういうことか」などAIの議論をする前に一歩下がって、まずは「人間が言葉をどう理解しているのか」という点について言語学者の著者が分かりやすく述べています。
    「意味→単語や文そのものが表す内容」、「意図→話し手が聞き手に伝えたい内容」といった定義づけや、子供の言語習得に際して文法などの知識をいかに習得していくのか、といった言語学の興味深いトピックスも登場しています。
    私たちが日常会話でスムーズにコミュニケーションができている背景には、言葉の意味だけではなく文化や常識といった広い共通認識がベースになっていて(例えばある文脈で”あがる”という動詞について、「上昇する」のか「緊張する」のかどちらの意味か)、無意識のうちに瞬時に様々な情報を取捨選択したり推測したりしながら(”水を下さい”と言われた時、飲み水なのか、その量はどれぐらいか、熱いのか冷たいのか等)会話をしているという指摘は”なるほど”と思いました。そういう言葉の背景全てを処理できて初めて「言葉を理解できた」と言うのならば、”AIが言葉を理解する”というのはまだまだ先のように思います。
    AIの性能が日々向上している今こそ、人間のこういった能力について改めて考えなおすのは非常に重要だと感じます。そのようなきっかけとして、大変分かりやすい文章で書かれている本書はおすすめの1冊と感じました。

  • ヒトの言葉から機械の言葉への橋渡し。機械の言葉を論じる前にまず人の言葉についてよく分かっていないことを思い知らされる。外国に行くと逆に自分の国のことがよく見えたりするのに似ているかも。言葉で表せないものは機械では扱えないという至極当たり前のことからやっぱりシンギュラリティはまだまだ先(もしかしたら永遠に来ないのかも)と思わざるを得ない。言語モデルGPT-3って知らなかったけれど、これはすごい。相互排他性バイアス(「ヘクを取ってあげて」)の研究はなかなか面白い。

  • 言葉の専門家が考える言葉の問題。
    言葉とその周辺には、まだまだ奥深い。AIなんて決して簡単じゃない。

  • 的確に要件がまとめられていてとても読みやすかった。

    AIの言語に対する理解は最終的には文字コードという件は、人の神経系は最終的には化学反応による電気伝達だからあまり差がないとも言えるし、現状ではまだそのロジックがわかっていないだけとも言えるとか色々なことを思ったのですが、大体の疑問の解説をされていたので、至れり尽くせりの解説本だと思います。

  • 女子栄養大学図書館OPAC▼https://opac.eiyo.ac.jp/detail?bbid=2000069307

  • 【本学OPACへのリンク☟】
    https://opac123.tsuda.ac.jp/opac/volume/666694

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著者プロフィール

川添 愛(かわぞえ・あい):1973年生まれ。九州大学文学部卒業、同大大学院にて博士号(文学)取得。2008年、津田塾大学女性研究者支援センター特任准教授、12年から16年まで国立情報学研究所社会共有知研究センター特任准教授。専門は言語学、自然言語処理。現在は大学に所属せずに、言語学者、作家として活躍する。 実績 著書に『白と黒のとびら』『自動人形の城』『言語学バーリ・トゥード』(東京大学出版会)、『働きたくないイタチと言葉がわかるロボット』朝日出版社、『コンピュータ、どうやってつくったんですか?』(東京書籍)『ふだん使いの言語学』(新潮選書)など。

「2023年 『世にもあいまいなことばの秘密』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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