「させていただく」の使い方 日本語と敬語のゆくえ (角川新書)

著者 :
  • KADOKAWA
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  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784040824147

作品紹介・あらすじ

「させていただく」は正しい敬語? 意識調査とコーパス調査で違和感の正体が明らかに。現代人は相手を敬うためでなく、自分を丁寧に見せるために使っていた。明治期、戦後、SNS時代、社会環境が変わるときには新しい敬語表現が生まれる。言語学者が身近な例でわかりやすく解説!

感想・レビュー・書評

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  • 「確認させていただきます」「寄付させていただきました」“違和感敬語”はなぜ使われるのか?~注目の新書紹介~ | GetNavi web ゲットナビ
    https://getnavi.jp/book/691665/

    「「させていただく」の使い方 日本語と敬語のゆくえ」 椎名 美智[角川新書] - KADOKAWA
    https://www.kadokawa.co.jp/product/322104000605/

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      程良い距離感で丁寧に 『「させていただく」の使い方』 法政大教授・椎名美智さん:東京新聞 TOKYO Web
      https://www.tok...
      程良い距離感で丁寧に 『「させていただく」の使い方』 法政大教授・椎名美智さん:東京新聞 TOKYO Web
      https://www.tokyo-np.co.jp/article/161187?rct=book
      2022/02/21
  • 違和感を覚える人も多い「○○させていただく」について(自分も場面によっては強く違和感を覚える)、語用論の観点から分析している本。

    著者が以前に出版した学術書の内容を非専門家向けに噛み砕いて解説しているため、内容の妥当性を保ちつつ、非常に読みやすい。

    敬語に遠隔性と近接性があって、これらの調節の自由度が高いために「させていただく」の人気があることや、「させて」と「いただく」が統合的に運用されており、その後に続く語の多様性が損なわれていくことが平板的な表現を招き、特に働き盛りの世代からの人気が少ないこと、そもそも全ての敬語は「敬意の漸減」を免れ得ないことなど、興味深い分析結果がたくさん披露されている。

    また、「させていただく」の運用についてのみならず、語用論のアプローチ自体の概説書になっているのも面白い。「言葉は生き物だから」という言葉自体ももはや耳慣れすぎて若干食傷気味だけれど、語用論アプローチがこれほどまでに丁寧に言葉の運用のされ方や変遷を描くことができるのか、ということを発見できて感動した。
    さらに、ゴフマンの理論が用いられており、社会学を専攻していた身からしても親近感を覚えた。

    言葉の運用について、それを排他的に扱うでもなく、称揚するでもないような眺め方は、人間をよりよく理解しようという人文学・社会科学の根幹に適切に則ったものだな、と感じた。

  • 中身は語用学という言語学分野の観点からの真面目な敬語論で、なぜ「させていただく」が便利に多用されるようになったかを解き明かしていく(決して「させていただく」の「使い方」の本ではない)。著者の考察には結構「なるほど」でした。
    また、日本語の敬語分類がかつての3種(尊敬語、謙譲語、丁寧語)から最近は5種とされているのも初めて知りました。

    なお、著者は「させていただく」の多用については中立的な立場ですが、私自身は普段から「なるべく「『させていただく』を使わないで表現できないか」を意識しています。笑 (「させていただく」の多用はちょっと芸がないので)

  • 言葉は生き物。変わっていく。今空前の(?)「させていただく」ブームかな。
    全て間違いではないが、聞いていて違和感があるものがある。しかしそれも時間がたてば普通になるのかもしれない。

  • 身の回りに溢れた「させていただく」を敬語の変化、意識の変化から探る本。統計もしっかりしています。言葉は常に移ろいゆくものですがこの言葉もまたその過程にあるのだなと感じました。面白くためになる本です。おすすめ。

    「させていただく」も敬意漸減が生じているとしたら次にくる敬語はどのようになるのか?その点についてはこの本では問題提起のみです。わたしの予想では再度「いたします」が復権するのでは?と考えています。文字数も少なくスマートなので「いたします」が増えて欲しいなあという願望もあります。

    芸能人は受賞すると「受賞させていただきました」と言いますがこれは「名誉ある賞を頂きました」の方がスマート。その後に「監督やスタッフ、その他全ての人に感謝します」と文を分ければよい。

  • 初めはいいのだが、だんだんくどくなるのが、専門家。
    「させていただく」は自分のために。「帰る」の謙譲語がないから、「帰らせていただく」になる。
    KADOKAWAの本の表紙カバーは反り返って邪魔。他の出版社のはならないのに。「本日は大安なり」も、KADOKAWAだった。反り返ってひどくて、

  • 「反省させていただきます」
    「入籍させていただきました」
    「ご報告させていただきます」

    そしてSMAPの
    「解散させていただくことになりました」と
    V6の
    「解散します」

    爆発的に使われているけれど賛否両論ある“敬語”「させていただく」の謎を語用論的なアプローチによって解明する

    〈つまり、「させていただく」は「私ってちゃんと人と丁寧に話すことのできる人間でしょ」というポーズを示す自己愛的な敬語で、敬語のナルシシズム現象なのかもしれません。〉p.205

    著者は法政大学文学部教授
    専門は言語学、歴史語用論、コミュニケーション論、文体論

    『「させていただく」の語用論』(ひつじ書房/2021年)が専門書としては異例のヒット、新書を書いてほしいとの要望に応えて本書につながる、2022年1月刊

    「させていただく」の氾濫に眉をひそめる人にも、多用する人にも、ご紹介させていただきます

  • 「させていただく」の使い方 日本語と敬語のゆくえ
    著者 椎名 美智
    定価: 990円(本体900円+税)
    発売日:2022年01月08日 判型:新書判 商品形態:新書 ページ数:224 ISBN:9784040824147
    なぜ、使わずにはいられないのか
    「させていただく」は正しい敬語? 意識調査とコーパス調査で違和感の正体が明らかに。現代人は相手を敬うためでなく、自分を丁寧に見せるために使っていた。明治期、戦後、SNS時代、社会環境が変わるときには新しい敬語表現が生まれる。言語学者が身近な例でわかりやすく解説!
    https://www.kadokawa.co.jp/product/322104000605/

    【目次】
    もくじ
    はじめに
     SMAPとV6の解散劇

    第一章 新しい敬語表現――街中の言語学的観察
     用例を採集する
     「免除させていただきます」
     愛されるタメ語キャラと毒舌キャラ
     サザエさんは「させていただい」てない

    第二章 ブームの到来――「させていただく」の勢力図
     「語用論」のアプローチ
     新しい敬語のお仕事
     敬意漸減の法則
     遅れてきた「させていただく」

    第三章 違和感の正体――七〇〇人の意識調査
     敬語の「乱れ」は変化の兆し
     違和感を左右する三つの要素
     最大の要因は「聞き手の存在」
     話し手が持つ違和感

    第四章 拡がる守備範囲――新旧コーパス比較調査 
     距離感が二極化している
     政治家は「させていただく」をよく使うのか
     関わるようで直接の関わりは避ける
     合理化か貧困化か

    第五章 日本語コミュニケーションのゆくえ――自己愛的な敬語
     「させていただく」は関西発祥なのか
     「表敬」から「品行」へ
     敬語のナルシシズム
     そして他者はいらなくなった

    おわりに
     「させていただく」はコミュニケーションの変化を示す指標
    [ほか]

  • 「させていただく」使用の理由や歴史的経緯について。著者はこの言葉について中立的あるいはやや肯定的な立場で説明している。文法とか元々の意味から言葉遣いを考えるというよりは、今よく使われているのは理由があるからだ、という立場。させていただくというのを、文法的に謙譲語だと言うのでなく、使われ方からもはや丁重語だと分類している。

    敬意漸減というのは初めて聞いたけれど、納得感が大きかった。かつては適切だった敬語が、時代とともに敬意がすり減って、失礼に聞こえるようになる。自分自身、「させていただく」を使うのは、敬語を使っているはずだけど何となく失礼に聞こえる気がする、というときに「敬語の上乗せ」として使うという感覚がある。
    敬語は、相手への敬意とか自分のへりくだりという上下の位置調整のほかに、相手との横方向の距離感調整という機能もある。
    調査に関しては、比較の仕方や解釈に疑問を覚えるところもあった。ただ、これは新書だからということで説明が省かれている面もあるのかもしれない。

    敬語に対するこのような感覚を、私たちがどうやって身につけるのかに興味がある。学校で習う敬語はたぶん時代ごとにそう変わらないだろうに、なぜ私たちは敬意漸減を感じ取って、させていただくのような新しい敬語をちょうど良いと認識するようになるんだろう。不思議だ。

  • 違和感があるのに多用してしまう「させていただく」は、相手への敬意より自分のため? 「させていただく」の使用拡大と慇懃無礼な印象という矛盾した両面の謎を、身近な例をあげながら、語用論のアプローチで解き明かす。【「TRC MARC」の商品解説】

    関西外大図書館OPACのURLはこちら↓
    https://opac1.kansaigaidai.ac.jp/iwjs0015opc/BB40289722

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著者プロフィール

1956年生。ランカスター大学大学院博士課程修了(Ph. D.)。法政大学文学部教授。言語学。『歴史語用論の世界―文法化・待遇表現・発話行為』(共編、ひつじ書房、2014年)、『歴史語用論入門―過去のコミュニケーションを復元する』(共編、大修館書店、2011年)。

「2015年 『目に見えるものの署名』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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