長期腐敗体制 (角川新書)

著者 :
  • KADOKAWA
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感想 : 17
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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784040824222

感想・レビュー・書評

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  • あの悲劇的な事件があった今こそ、情緒を排して安倍政権とは何だったのかを冷静に問わなければならない。今までずっと政治に関して薄々感じてきた違和感が鮮やかかつ冷静に描かれており、日本国民必読の書である。が、しかしこれを読んで「そうだそうだ、確かに安倍政権は何の成果もなかったし、寧ろ世の中は劣化した」と共感できる知性を持っている人は残念ながら少数派だろう。これも長年に亘る愚民化政策の成果であり、自民党の思い描いた通りの結果になっている。もう後戻りできないところまで行ってしまっているようにも感じる。非常に残念だ。

  • 資本主義の終焉、民主主義の限界、そして国民国家の瓦解。平成以後の日本の政治的・経済的退廃の構造がよく分析されている。それとともに、民主制の危機という人類共通の課題も炙り出されてくる。日本もヤバいが、翻って世界もそう安穏としてられる状況ではない。

  • 白井聡さんの新書。
    深堀TVの番組見て手に取った本。戦後からの日本政治の流れを大枠で把握する意味でもすごくわかりやすかった。

    インデックスは以下
     序章 すべての道は統治崩壊に通ず - 私たちはどこに立っているのか?
    第1章 2012年体制とは何か? - 腐敗はかくして加速した
    第2章 2012年体制の経済政策 - アベノミクスからアベノリベラリズムへ
    第3章 2012年体制の外交・安保保障Ⅰ - 戦後史から位置付ける
    第4章 2012年体制の外交・安保保障Ⅱ - 「冷戦秩序」幻想は崩壊した
    第5章 2012年体制と市民社会 - 命令拒絶は倫理的行為である
    あとがき

    著者は、2012年から始まった安部政権以降の政権を「2012年体制」と呼び、「政権」ではなく構造的な「体制」だと論じる。たしかに、その後の菅・岸田政権も、結局は安倍政権のコピーでしかない。岸田氏は宏池会なのでちょっと違う路線に見えるが、安部政権時代の官僚をそのまま登用しており、方針にたいした違いはない。安倍政権以上に方向性が定まっていないし。就任してから約1年間、ほぼ何もやってないもんな、この人。。

    この本を読んだ数日前に安部氏は殺害された。
    そして、現在のメディア(・・と言っても私はテレビは見ていないが)は安倍礼賛を繰り返しているらしい。おそらく神格化され、過去の実績(政策の是非、森友・加計、桜を見る会などの問題)を正当に評価する者はマスメディアではほぼ居なく(居られなく)なるだろう。

    この本に書かれている2012年体制で行われていたことは、日本をさらに「劣化」させた。元々劣化してたので、さらに止めを刺した、と言えなくはない。そして、著者もこの本で何度も語っているが、これは「安倍晋三」個人の問題ではない。この2012年体制は「現象」に過ぎず、本当の原因は一番最後の章で語られている、国民自身の「劣化」にある。それは、古くは小泉政権から始まり、2012年体制でも実施した「B層マーケティング」が結実した姿なのかもしれない。

    しかし、5章に書かれてる日経ビジネス(2021年12月27日号)の分析結果は衝撃的だったな・・安部氏の殺害を「民主主義の危機」とか言ってる人がいるが、そもそも日本は民主主義国家ではない、ということをはっきり示してる。選挙とかやる以前の問題だわ。。

    その分析を裏付けるように、このレビューを書いてる2日前に行われた参議院選挙は、当初の予定通り「自民党の圧勝」だった。多くの国民は、「バカ」のまま、「現状維持(国家として下降し続けること)」を選んだわけだ。

    私は、宮台真司氏の影響もあり、「加速主義」の立場を取る。
    今の政治含めた日本社会で既存権力(既得権益)を壊すことなど出来ないし、落ちるところまで落ちるしか改善する方法はないと思う。その過程で多くの弱い人が悲惨な目に合うから、著者の白井氏はこういった本で少しでもその痛みを和らげようとしているのは理解するし尊敬もする。「明日」を「今日」よりほんの少しでもマシにしようとする努力を、私も怠ろうとは思わない。

    しかし、崩壊は避けられないと思う。

    だが、崩壊したその先に「希望」があると思う。
    社会が崩壊すれば人が輝く。出来るだけ早い方が良い。そうなれば、それだけ早く回復できるのだから。

  • 2012年~2022年初頭くらいまで(一部自民党55年体制の話もあり)の、10年間の日本の政治について分析された一冊(帯の「なぜいつも頭(トップ)から腐るのか」のインパクト大)。本書では、2012年に自民党が大勝してからこれまで続く政治体制(安倍晋三総理→菅義偉総理→岸田文雄総理)を「2012年体制」と表現して、2012体制が行ったアベノミクスや安全保障問題、コロナ対策などが著者の解釈で分析される。ここ10年くらいの日本の政治の本質を知りたい人にオススメ。

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著者プロフィール

1977年、東京都生まれ。早稲田大学政治経済学部政治学科卒業。一橋大学大学院社会学研究科総合社会科学専攻博士後期課程単位修得退学。博士(社会学)。思想史家、政治学者、京都精華大学教員。著書に『永続敗戦論─戦後日本の核心』(太田出版/講談社+α文庫)、『武器としての「資本論」』(東洋経済新報社)など。

「2022年 『撤退論 歴史のパラダイム転換にむけて』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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