草枕・二百十日 (角川文庫)

著者 :
  • KADOKAWA
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感想 : 15
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  • Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041001042

作品紹介・あらすじ

俗世間から逃れて美の世界を描こうとする青年画家が、山路を越えた温泉宿で美しい女を知り、胸中にその念願を成就する。「非人情」な低徊趣味を鮮明にした漱石の初期代表作『草枕』他、『二百十日』の2編。

感想・レビュー・書評

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  • 冒頭があまりにも有名な漱石の作品。

    若き画家が「非人情」を求めて旅に出て、鄙びた温泉宿で、訳ありの女性那美に出会うという物語。

    漱石の芸術論は理解できたとは言い難いけれど、自然や植物(椿、白木蓮、木瓜など)の描写がうっとりするくらい美しく、春の野山のむせ返る香りが漂ってくるよう。

    『二百十日』は阿蘇に登ろうとする2人の男性を描いたもの。若さと活気に溢れた掛け合いが楽しい。

  • 『二百十日』で印象に残ったのは以下の部分。世の中、上手くいくものでもないし、そもそも、世の中が正しい方に行くかも分からないよね、と思った。
    「なれば世の中がわるいのさ。不公平な世の中を公平にしてやろうというのに、世の中がいうことをきかなければ、向のほうが悪いのだろう。」

  • 3月19日草枕読了.「山路を登りながら、こう考えた。智に働けば角が立つ。」で始まる漱石のこの小説は名前は知っていたが、読んだことはなかったので読んだ。青年画家が温泉宿で美しい女性 那美さんと出会う。惹かれているのに、絵に描かねばと色々理由を考える主人公の芸術へのこだわりが漢詩や漢文 短歌などが出てきて読むのにひどく時間がかかった。那美さんの仕草がなかなか色っぽいのだが、それを画家として見る主人公のストイックさ真面目さ。確かに文章は美しいです。でも読みづらかったです。
    3月20日二百十日読了。圭さんと碌さんの阿蘇に登る話で、会話のやり取りがポンポンと軽妙で割とすいすい読めた。圭さんが当時の社会を批判する。阿蘇山に登って2人で話すというお話でした。

  • 読みやすさ◎

  • 【草枕】
    俗世は煩わしいことが多いと田舎で俗世から離れて生活する漱石の話。すごく難しい単語が並ぶのでなかなか読むのは辛いが頭のいい人は色々と考えるのだろう。自然への造詣が深く,すごく豊かな心の持ち主なんだなと思った。だからこそ俗世が厭わしく思ったのかな。

    人の世は人が作っているんだから,煩わしいところはあれど改善もできるってことだよね。漱石は芸術に解決を求めようとしたけど。


    【二百十日】
    言ってる内容は草枕とほぼ同じに感じた。ただ、基本的に登場人物の会話がメインなのでこっちはかなり読みにくい。知識ばっかりで悪いことばかりしてる人が我が物顔でいる世の中をなんとかしたいなという話。

  • 草枕、序盤は漢文が多くて読みにくかった…
    どちらも熊本が舞台で、登場人物同士の掛け合いの様子などは良かった
    いつかスルッと読める時がくるのかしら

  • 二百十日は昔読んだことがあったので、草枕だけ読んだ

  • 非人情の美学が説かれているロマンティシズムの極致。非人情とは東洋古来の漢詩や俳句に流れている根本的態度であり、一切の人間の事象を自然に対すると同じ無私の眼で見ること。
    どこへ越しても住みにくいと悟った時、詩が生まれて、画ができる。
    着想を紙に落とさぬともきゅうそうの音は胸裏に起こる。

    「前を見ては、後へを見ては、物欲しと、あこがるるかなわれ。腹からの、笑いといえど、苦しみの、そこにあるべし。うつくしき、極みの歌に、悲しさの、極みの想、籠るとぞ知れ。」
    あの雲雀のように思い切って、一心不乱に、前後を忘却して、わが喜びを歌うわけにはゆくまい。

    足の下に時々蒲公英を踏みつける。鋸のような葉が遠慮なく四方へのして真中に黄色な球を擁護している。

    恋はうつくしかろ、孝もうつくしかろ、忠告愛心も結構だろう。
    しかし自身がその局に当たれば利害の旋風に巻き込まれて、うつくしき事にも、結構な事にも、目は眩んでしまう。
    したがってどこに詩があるか自身には解しかねる。
    これがわかるためには、わかるだけの余裕のある第三者の地位に立たねばならぬ。
    三者の地位に立てばこそ芝居は観て面白い。小説も見て面白い。芝居を見て面白い人も、小説を見て面白い人も、自己の利害は棚に上げている。見たり読んだりするあいだだけは詩人である。
    取柄は利欲が交わらぬという点に存するかもしれぬが、交わらぬだけにその他の情緒は常より余計に活動するだろう。それが嫌だ。

    われわれは草鞋旅をするあいだ、朝から晩まで苦しい、苦しいと不平を鳴らしつづけているが、人に向かって曾遊を説く時分には、不平らしい様子は少しも見せぬ。面白かった事、愉快であったことはもちろん、昔の不平さえ得意に蝶々して、したり顔である。
    旅行をする間は常人の心持ちで、曾遊を語るときはすでに詩人の態度にあるから、こんな矛盾がおこる。
    してみると、四角な世界から常識と名のつく、一角を磨滅して、三角のうちに住むのを芸術家と呼んでもよかろう。

    憐れ

    文明はあらゆるかぎりの手段をつくして、個性を発達せしめたる後、あらゆるかぎりの方法によってこの個性を踏みつけようとする。一人前何坪何合なの地面を与えて、この地面のうちでは寝るとも起きるともかってにせよというのが現今の文明。同時にこの何坪何合の周囲に鉄柵を設けて、これよりさきへは一歩も出てはならぬぞとおどかすのが現今の文明。
    文明は個人に自由を与えて虎のごとく猛からしめたる後、これを檻穽の内に投げ込んで、天下の平和を維持しつつある。この平和は真の平和ではない。動物園の虎が見物人を睨めて、寝転んでいるのと同様な平和である。
    檻の鉄棒が一本でも抜けたらー世はめちゃめちゃになる。
    第二のフランス革命はこの時に起こるのであろう。

    おさき真っ暗に盲動する汽車はあぶない標本の一つである。

  • 美しい表現が多々。物事をありのままに捉え表現しているってことかな?ちょっと言葉が難しくて理解できていないところもある。そんななかでも人生の教訓のようなものを読み取ることができる。最初の2,3ページが印象的。

  • 智に働けば角が立つ。情に棹させば流される。意地を通せば窮屈だ。とかくに人の世は住みにくい。

    何回でも読みたい綺麗な文章。
    この文章が印象強すぎて本編はあんまり。。

  • 俗世間を逃れて旅をする青年画家の前に、那美(なみ)という美女が現れる。俗世を離れた「非人情」を描いた物語。

  • '09.9.27読破

  • 二百十日の印象が強いです。東海道五十三次みたいなお話。

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著者プロフィール

1867(慶応3)年、江戸牛込馬場下(現在の新宿区喜久井町)にて誕生。帝国大学英文科卒。松山中学、五高等で英語を教え、英国に留学。帰国後、一高、東大で教鞭をとる。1905(明治38)年、『吾輩は猫である』を発表。翌年、『坊っちゃん』『草枕』など次々と話題作を発表。1907年、新聞社に入社して創作に専念。『三四郎』『それから』『行人』『こころ』等、日本文学史に輝く数々の傑作を著した。最後の大作『明暗』執筆中に胃潰瘍が悪化し永眠。享年50。

「2021年 『夏目漱石大活字本シリーズ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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