ヤンのいた島 (角川文庫)

著者 :
  • 角川書店(角川グループパブリッシング)
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  • Amazon.co.jp ・本 (368ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041005200

感想・レビュー・書評

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  •  久しぶりにとてものめり込んだ小説。一度読み終えたあと、どうにも本の世界から戻れずに、もう一度最初のページを開いた。
     二度目もわくわくした。やっぱりファンタジーが好きだ!
     ただ、好き嫌いはけっこうはっきり分かれそうな内容です。

     舞台は、太平洋上に浮かぶ島イシャナイ。
     近代の国際社会よって「発見」されたその島では、欧州からの移民によって築かれた国家と、それに対抗するゲリラの抗争が続いていた。
     島の生態調査のためやって来た主人公の瞳子は、そこで、ゲリラのリーダーにして、原住民族の象徴とも言うべき「ヤン」と出会う。

     先進国が押し付けた国際社会のルールによって、蝕まれ壊されていく後進国。
     「発見」される前は独立して自給自足できていた小さな島を、外からの「支援」なくしては成り立たないようにしてしまう残酷さ。
     本来なら優劣のないはずの個々の文化を無理やり一個の枠におさめて、弱者を作り上げている。
     枠へおさめるためなら暴力も非道徳も厭わず、一度枠へ入ってしまえば二度ともとには戻れない。
     これが国際社会の一面なのだと思うと、やるせなくなる。

     なによりも、ただそこに存在していただけのヤンが人格を与えられ、重い決断を背負い、そしてすべての結末へ向かっていくことが、悲しくてならなかった。

     瞳子が、熱帯林を「生態系」ではなく「美しいもの」として見るようになったのと同じく、頭に詰め込まれた固定観念というフィルターを外して、思うままに、感じるままにものごとを受け止め、それらを信じられるようになりたいです。
     昔は、それが確かにできていたはずだから。

  • 強烈。こんな話になるとは。
    しばらくはぐるぐると考えてしまいそうだし、その度に違った視点が見えてきそう。果たして、より明るい未来に繋がる手がかりにたどり着けるのだろうか?

  • 海の真ん中 独自の文化を持つ小さな島国が近代化という名の侵略にどう対処したら幸せに生き残れるのか??
    ヤンに守られていたこの島の行く末は……

    先に近代化した国が偉いのか?いわゆる後進国に対して自国のモラルを押し付けて勝手なことをするのが許されるのか?

    誰でも幸せに暮らしたいと思っているはずなのに。苦しんでいる人、辛い思いをしている人が沢山いる。
    どうして誰もが幸せにくらせないのだろうか

著者プロフィール

1963年広島県生まれ。鳥取大学農学部卒業。91年に日本ファンタジーノベル大賞に応募した『リフレイン』が最終候補となり、作家デビュー。98年、『ヤンのいた島』で第10回日本ファンタジーノベル大賞優秀賞を受賞。骨太な人間ドラマで魅せるファンタジーや、日常生活のひだを的

「2013年 『ヤンのいた島』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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