ヒストリア

著者 :
  • KADOKAWA
3.84
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感想 : 36
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  • Amazon.co.jp ・本 (632ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041034651

作品紹介・あらすじ

第二次世界大戦の米軍の沖縄上陸作戦で家族すべてを失い、魂(マブイ)を落としてしまった知花煉。一時の成功を収めるも米軍のお尋ね者となり、ボリビアへと逃亡するが、そこも楽園ではなかった。移民たちに与えられた土地は未開拓で、伝染病で息絶える者もいた。沖縄からも忘れ去られてしまう中、数々の試練を乗り越え、自分を取り戻そうとする煉。一方、マブイであるもう一人の煉はチェ・ゲバラに出会い恋に落ちてしまう……。果たして煉の魂の行方は? 
『テンペスト』『シャングリ・ラ』の著者が20年の構想を経て描破した最高傑作!

感想・レビュー・書評

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  • テンペストの作者による、沖縄からボリビアに移民した女性の話。
    幾度となく成功と挫折をくり返すバイタリティは、人間としてとても魅力的。
    この話の肝である、マブイ(生き霊のような二重人格)の設定だけが、自分には馴染めなかった。

  • ボリビア、沖縄。壮絶だけどどこか軽やか。主人公の魅力で一気に読める。

  • 22沖縄戦と復帰までの悲惨な経験を一人称で。今も戦争は終わっていないんだと思い知らされる。冷戦が終わっても民族紛争は世界で起こり次はコロナ。国の都合で庶民が苦しむのはもういいです。

  • 3冠達成、鬼才・池上永一が描く壮大なエンターテインメント!

    第二次世界大戦の沖縄地上戦で家族とすべてを失い、魂(マブイ)を落としてしまった知花煉(ちばなれん)。戦後の闇市で一時の成功を収めたのも束の間、米軍のお尋ね者となった煉は、新天地を求めて南米ボリビアへと渡る。しかしそこも楽園ではなかった。移民にあてがわれたのは伝染病が蔓延する未開の地。呆然とする煉に、米諜報機関CICの魔手が迫る。一方、魂が分裂したもう一人の煉は、若き革命家チェ・ゲバラに出会い恋に落ちてしまった……。

    (気になった言葉)

    〇 p290 主人公 知花煉のセリフ「ほとんど通じない 言語間でも私たちは目的を九十九パーセント達成することができる。言語は残りの一パーセントの微細を詰めるための補助にすぎない。翻れば私たちは一パーセントの誤差を埋めるために、多大な努力を費やして言える。

    〇p305 なぜ南米にはこんなにたくさん族がいるのだ。普段はのほほんと働かないのに、銃を持たせると人が変わる。

    〇沖縄の方言
     かりゆし⇒めでたい、縁起がいい
     めんそーれ⇒いらっしゃい
     ヌチグスイヤサ⇒滋養がある
     ハッサヨー⇒あれまあ、呆れてものが言えない                        

  • ふむ

  • ものすごく分厚い本なのにぐいぐいと話に引き込まれてしまった。時は戦争末期の沖縄
    そこから生き延びた1人の少女が南米ボリビアに移住し、たくましく生きていく姿と沖縄の古くからの考えとを融合させた話
    最後の結末はなかなかよかったと思う。

  • 第二次世界大戦、沖縄で戦争に遭い、家族も、住居も、すべてを喪った知花煉。
    本来だったら死ぬはずだった彼女は不可思議な運命に導かれるように生き残り、若い女の身一つで、どれだけ辛酸を舐めようともしぶとく戦後を生き抜いていく。

    池上永一氏らしくコミカルで少しブラックな「ありえない」エピソードもあちらこちらに登場し、全体としては完全にフィクションである前提で描かれているのだけれど、米軍による沖縄支配、B円とドルの関係、移民政策、米ソの対立とどこまでも自国のやり方を通すアメリカ・・・と、語られる内容は重い歴史だ。

    憎めないイノウエ兄弟や勇ましきカルメンなど、愉快なキャラクターと、煉のふてぶてしさと無謀さがエンターテイメントとして彩ってくれてはいるのだけれど、どれだけ茶化しても、ふざけても、アメリカへ、米軍への強い憤りが物語に宿っているように感じた。

  • 池永永一の最高傑作、という評判を聞いて手に取ってみた。
    確かにおもいっきりエネルギーを注ぎ込んだ、力作である。登場人物もストーリーもページ数も中に詰まった思いも何もかもが「パワー」「ヒート」「エネルギー」なのである。

    悪く言えば「暑苦しい」のだが、こういう力づくで引っ張ってくれる物語、好きである。これが政治やアジや知り合いだったら、「ウゼー奴は嫌い」とばかりに距離を置く。でも小説や映画なら歓迎する。

    主人公からして、マブイ(魂)を落とした女性とその魂の多重人格の二面表記という大技。
    物語の舞台が、終戦直前の地獄と化した沖縄、開拓団として未開の地に放り込まれたボリビア、キューバ危機寸前のキューバ。
    脇を固める連中が、女子プロレスの大スター、チェ・ゲバラ、ナチス残党、CIC、CIA、米軍総司令官、共産主義活動家のクズ。

    どや、熱いやろ、ガンガンきそうやろ。って設定をそろえて、想像以上のエネルギー全開な物語をこれでもかと読ませてくれる。読むほうも相当なエネルギを消耗させられて楽しいがしんどい。運動以外でこの心地よい疲労感を味わうのはなかなかないぞ!

    著者のイデオロギー、ポリシーによってベクトルがかかっている部分があって、そこに違和感を感じなくもないが、そういうのを持ってない作家の小説なんかかえってオモロないと思う。価値観が違えど生き方の立脚点や目的地が違えどオモロい小説はオモロい。

    「テンペスト」「シャングリ・ラ」等まだ読んでなかったかな。読んでたとしても再読必至。こちらにも読める体力があるうちに体調整えて挑んでみるか。

  • 主人公の女性の人生は、なかなかに破天荒。
    カリスマ女性レスラー、テロリスト、軍部高官とのパイプ(?)を持ち、飛行機を操縦し、しまいにはキューバ危機を救うとか。
    殺意や殺気を感じ取るとか、ニュータイプみたい。
    でもラストはララァを失ったシャアのように、決して埋められることの無い心の穴が残って終わる、、、戦争の残酷さ。

  • 舞台は沖縄→南米→沖縄。
    チェ・ゲバラ表紙だけど思ったほど彼は活躍しません。カリスマイケメン。
    パワフルな女主人公で爽快感があるのに、終わり方には少しモヤモヤ。
    逆境に負けないところか踏み台にしてパワーアップしてしまう彼女だが、あの困難にはどうやって立ち向かうのだろう。立ち向かえるのだろうか。

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著者プロフィール

池上永一
一九七〇年沖縄県那覇市生まれ、のち石垣島へ。九四年、早稲田大学在学中に『バガージマヌパナス』で第六回日本ファンタジーノベル大賞を受賞しデビュー。九七年刊の『風車祭』が直木賞候補に。二〇〇八年刊の『テンペスト』はベストセラーとなり、一一年の舞台化をはじめ、連続テレビドラマ、映画にもなった。一七年『ヒストリア』で第八回山田風太郎賞を受賞。他の著書に『シャングリ・ラ』『レキオス』『ぼくのキャノン』『統ばる島』『トロイメライ』『黙示録』などがある。

「2023年 『海神の島』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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