人生パンク道場

著者 :
  • KADOKAWA/角川書店
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本棚登録 : 150
感想 : 20
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  • Amazon.co.jp ・本 (250ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041038192

作品紹介・あらすじ

恋愛相談、Noといえる男になりたい、酒を断ちたい、顔がきれいで心がどす黒い女がちやほやされるのが許せない、お金をためたい、元彼とよりを戻したい、阪神ファンの妻が許せません、息子の進路について悩んでいます、女遊びがやめられない、都合のいい女になってしまう、趣味の見つけ方を教えてほしい、朝、起きられない、捉えどころのない不安と不満に苛立ってしまう、40代、のダイエットの方法、ペットロスから立ち直れない……など。人生には悩みがつきもの。そんな悩みに、町田康が寄り添い、真摯に答えた悩み相談。結果、目からウロコの爆笑アドバイスのおかげで一気に解決すること間違いなし。読めばあなたの悩みも吹っ飛びます!「本の旅人」に寄せられた読者の23の悩みに書き下ろし2作を加え、単行本化。

感想・レビュー・書評

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  • 町田康の人生相談。
    小説じゃなくてもやっぱりキレキレで超面白かった。いいなーいい男だなぁ。

  • この人がいなければ、自分は違う人生を歩んでいただろうというくらい強い影響を受けた町田康さん。
    もっとも、違う人生が今より良かったか悪かったかは分からない。
    さよう。
    人生とは選択の連続で、ひとつびとつの選択が果たして正しかったのかどうかは死ぬまで分からず、また、死ぬ時にしたって「あの時、こっちの道を選んでおけば」と後悔した方の道を仮に歩んでいたとしたら、歩き始めた瞬間不慮の事故に遭ってとっくの昔に死んでいたなんてことも可能性としては、これは大いにあるのである。
    そんな不確実性に満ちた人生を歩んでいくうえで付き物の悩みや迷いに答えたのが本書。
    その悩みや迷いたるや深刻で筆舌に尽くし難く、たとえば中でもこれはというものを紹介するとー
    「彼氏とは別のバンドメンバーを好きになってしまった」
    「頼まれごとをうまく断りたい」
    「酒の隠し方を伝授してほしい」
    「身体を壊したが酒をやめたくない」
    「顔がきれいだけど、心がどす黒い女に、簡単に騙される男が許せない」
    ーなどである。
    町田さんはこうした悩みや迷いに対して、実にユーモラスに丁寧に回答しています。
    たとえば、「顔がきれいだけど、心がどす黒い女に、簡単に騙される男が許せない」という28歳、女性会社員からの相談には、
    「外見が一目瞭然、一目見れば、綺麗かそうでないかがわかるのに比して、心というのは目に見えず、その本当の心、心根を知ろうと思ったらかなり深く付き合わないとわからないからです。結婚が少なからず失敗に終わる原因はここにあります」
    などと述べます。
    そのうえで、「恣意的に男性陣の外見のみを評価してみては」と助言します。
    どういうことかと云いますと、男性が「顔がきれいだけど、心がどす黒い女」をチヤホヤするなら、あなたも女性として同じことをやり返せと云っているのです。
    「具体的には、地道に仕事を頑張っている男性ではなく、アーパーで仕事はちゃらんぽらんなのだけれども顔だけは綺麗、みたいな兄ちゃん、そういうのが職場にいなければ、外見が百点にもっとも近い人、を選出し、その人だけをひたすらにチヤホヤし、休み時間に飴を持っていったり、ちょっとした贈り物をしたり、ほかの者には仏頂面で応対するのにそいつにだけは笑顔で接したり、ほかの者にはヤンキー丸出しの粗暴な言語で話すのに、そいつにだけは丁寧に、或いは、可愛いぶって喋る、などするのです。」
    そうすれば、男衆(「おとこしゅう」ではなく、「おとこし」ね、「おとこし」)は「理不尽だ」と思うようになるそうです。
    実に為になります。
    「恋愛は不在の不安に妙味があり、結婚は常在の安心に意義がある」
    「自分から遠いものに対して人間は驚くほど冷淡」
    「選択肢があることによって、いまの人間は、あったかもしれない可能性、について後悔し続ける、という苦しみを常に負っているのです」
    「夜空を見上げれば必ずある星を見て進むべき方向を知るための羅針盤です。それこそが親が子に与えられる唯一の正しいものです。ではその羅針盤とは具体的にはなになのでしょうか。それは実は単純で、様々の局面で、なるべく善きことをし、なるべく悪しきことをすな、ということでしょう」
    など、思わず唸る言葉も散りばめられています。
    角田光代さんが帯に書いていますが、猫を飼っている方には、最後の回答をぜっひ読んでいただきたい。
    ラスト5行に涙すること必定です。
    では、さようなら、さようなら。

  • 相談に対する回答で、特に目から鱗な解決策なかった。
    でもその解決策の書き方や、そこにたどり着くまでのあれやこれや考え巡らしているところに町田康節が炸裂していて良かった。

  • どの相談に対しても、そもそも悩みの本質について追究し、独特な回答で面白かった。自分の悩みなんて、人からしたらバカバカしいのかなと思えた。

  • 2020/3/6購入
    2020/5/18読了

  • 雑誌に掲載された人生相談をまとめたもの。相談への秀逸な回答は様々な経験をされてきた賜物なのでしょう。我々読者もそれら経験の一端を共有できるという非常にお得な(?)本です。

  • 面白くて深い

  • 中島らもさん、開高健さん、遠藤周作さん、今東光さん
    面白い生き方をしていらっしゃる人生相談は面白くないわけがない
    また一人、そんな生き方をしていらっしゃる方が
    町田康さんです。

  • あとがきまでおもしろかったです。「まだ生きている以上、たどり着いた瞬間、そこが出発地になるのではないだろうか、…(あとがき)」ナビにより問題が解決したように見えるけど、本当の目的はその到着後にあるのだよと、出張とか旅行とかを思えば確かにその行程をいかに過ごしたかで目的の達成具合も変わってくることがあるよなあと思いました。

  • 進路に選択肢があることによって、人はあったかもしれない可能性について後悔し続ける。失敗をするなら自分で選択したうえで失敗をしないとその失敗が身に沁みない。助言や忠言はかえって害になるだけ。なぜなら、どのルートが正しいかは誰にも分からないから。親の辿ったルートは、一刹那ごとに幻のように消え、同じ条件の同じルートというのは決して存在しない。仮に設定できたとしても双六程度の粗略粗雑なもの。親が子に言えることは、なるべく善きことをし、悪しきことをするな、ということぐらい。さらに付言するならば、夜空にある北極星のように同じ位置で、羅針盤のように輝くこと。せいぜいその程度であることを、しかと弁えなければならない。

  • たまらんごと面白かった

  • 読者からの悩み相談に、著者がユーモアを交えながら答えていったもの。
    クスッとなりながらも、妙に深く重く感じる言葉や文章が出てきてハッとさせられた。

    「自分が変わればいいのです」

  • 本当に大好きです。
    ああ、私もマーチダ先生に相談したい。
    もしマーチダ先生がそれに答えてくれたなら、私の人生ももっと薔薇色にマーチダ色に変わることでしょう。それが正しいかはさておき、無宗教の私がマーチダ教の信者に成り果てるのではと少しく恐怖も覚えます。
    こんなにも真摯にうけとめて、かつあとがきにもあるように、同じ地平の目線から一緒に苦しみ抜いて答えたと、握った手だけは離さなかったと、なんとも愛溢れるこんなにも魂震える人生相談の回答者がかつてあっただろうか?
    まだお目にかかったこともないが、もしそんな機会があったらば、何語話すまもなく興奮して血が駆けめぐって死してしまうのではないかと思うほど大好きです。

  • P59恋愛は不在の不安に妙味があり、結婚常在の安心に意義がある

    読者からの悩みに適当に面白な回答をし、しかし意外と的を得ていて笑いながら関心した。
    ありきたりな悩みに無駄に悩まされても、ちょっと違う視点というか広い目で見てみると悩んでる本質がズレていてはっとさせられることがあるよなあ。

  • あのパンク人生を送っている町田康の人生相談。さぞかしパンクな回答なのだろうと期待して読み始めたが、パンク度が意外と低い。笑いを取りにいくわけでも無い。かと言って、「今すぐ活用できる」というのともずれている。パンクな彼が出した真摯な回答が「この回答」なのだろう。いろいろ、悟りを語ってみたり、時には破天荒になりつつも、本当に質問者の質問に真剣に答えている。町田康の回答の中にあった言葉で「人間を忘れっぽく作ってくれたことこそが神の慈悲」とあった。今、感じる痛みや悩みもいずれ忘れて過去の物になるのかもしれない。

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著者プロフィール

町田 康(まちだ・こう)
一九六二年大阪府生まれ。作家。九六年、初小説「くっすん大黒」でドゥマゴ文学賞・野間文芸新人賞を受賞。二〇〇〇年「きれぎれ」で芥川賞、〇五年『告白』で谷崎潤一郎賞など受賞多数。

「2022年 『男の愛 たびだちの詩』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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