不在

著者 :
  • KADOKAWA
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感想 : 87
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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041049105

作品紹介・あらすじ

長らく疎遠だった父が、死んだ。「明日香を除く親族は屋敷に立ち入らないこと」。不可解な遺言に、娘の明日香は戸惑いを覚えたが、医師であった父が最期まで守っていた洋館を、兄に代わり受け継ぐことを決めた。25年ぶりに足を踏み入れた錦野医院には、自分の知らない父の痕跡が鏤められていた。恋人の冬馬と共に家財道具の処分を始めた明日香だったが、整理が進むに連れ、漫画家の仕事がぎくしゃくし始め、さらに俳優である冬馬との間にもすれ違いが生じるようになる。次々現れる奇妙な遺物に翻弄される明日香の目の前に、父と自分の娘と暮らしていたという女・妃美子が現れて――。愛情のなくなった家族や恋人、その次に訪れる関係性とは。気鋭の著者が、愛による呪縛と、愛に囚われない生き方とを探る。喪失と再生、野心的長篇小説!

感想・レビュー・書評

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  • 売れている漫画家、斑木アスカ。家族の関係が複雑。父親の家を相続して片付けているうちに。。。。

  • 家族だからこそ抱く憎しみがある。家族なのになぜという苛立ち。
    家族というだけで何故か分かり合えるのが当たり前と思ってしまうけれど、実はそれぞれ1人の人間で。ましてや親はもともとは他人同士なわけで。ああはなりたくないと思いながらも、ふと自分の中に似ているところを見つけて絶望する。

    家族は支えであり、重荷であるとつくづく思いました。だからといって、顔も見たくないくらい嫌いなのかと言われるとそうでもないし…。

    適度な距離感と、相手に対する寛容さをお互いがもつていれば幸せなのかなと思いました。

  • 最近お気に入りの彩瀬まるさん作品。

    主人公がどうしても好きになれなかった。

    自分より立場が下だと見なした恋人や編集の緑川に対する、「教えてやればいい」「教えていかなければならない」等の言葉が鼻について仕方がない。
    なんでも家族や生い立ちの所為にしている姿も酷く傲慢に見えてもやもや。
    でも主人公の「私はこんなに恵まれていないのに!」と地団駄を踏んでいる様が私自身と重なる部分も多く、痛い所を突かれているような気持ちになった。

    暗くて重いままお話は締め括られるのかな?と思っていたけど、気付きを得た主人公が前を向いて生きていけそうで、良い読了感。

    主人公は好きになれなかったけど、お話はとても好き。
    主人公が漫画家で、心境と作品の傾向がリンクしている所も好きだった!

    最近、「家族」をテーマにした小説を読む機会が多い。
    「父」であっても、「母」であっても、個々の人間なんだよな。と、そんな当たり前の事を最近になって理解したように思う。

  • 彩瀬 まるさんの長編小説

    主人公は斑木(まだらぎ)アスカのペンネームを持つ漫画家
    本当の名は錦野明日香、31歳

    仕事も成功し、5歳年下の俳優、冬馬と同棲し、一見なんの不自由もない生活を送っている様に見える。

    だが長らく疎遠だった父が亡くなり、遺産として大きな洋館が残され、その屋敷の整理をして行くうちに過去から現在までの様々な出来事に想いが巡り、今の生活が少しづつ崩れて行く様が不穏な空気感の中で描かれている。

    父親に対して燻っていた感情が、屋敷の整理と言う行動を通して表面化した時、明日香の内に秘めていた思いが冬馬に対して爆発してしまう。
    明日香の言う「愛」とは冬馬にとってはただの執着で忠誠でしかない。
    明日香の発する言動からいかに愛情に餓えていたかが感じられヒリヒリする。

    淡々と静謐な雰囲気で描かれているが、人と人の関わり方、人間のエゴイズムなどが表現されていて深みがあった。
    ざらざらとしているけれど、ラストには気づきもあり読後感は良かった。

  • すごく!面白かった。家族の話。
    愛は花。すぐに枯れて腐ってなくなってしまう、だけど咲いていたことまで否定しなくたっていい。なくなったからって偽物だったわけではない。昔、きれいな花が咲いていた。それでいいんだ。
    私も家族の関係について考えすぎて囚われているけど
    枯れて腐ってしまったこともそれでいいんだと全肯定されてるような感じで。
    漫画家である主人公の創作についてアイデアが湧き上がるところとかもワクワクした。
    読んで良かった。

  • 主人公があんまり好きではなくて…なんか、全て【家】や【家族】のせいにしてる感じがして最後までしっくり来なかった。
    ゆっくりでも前を向いていけそうな終わりでそこは読んでてホッとした。

  •  またいつか読み返したら違う気持ちになれそうな感じがします。

  • 大人になっても心理的に親に縛られ続ける女性。親ってどこかで絶対で、その考えは子どもに染み渡っている。例え、親がいなくなっていても。自分の育ち方や親を否定することは苦しい。しかし、自分が悪いんだと思っても苦しい。そのどちらでもなく、親と同じような生き方をしている自分を知りながらそこから一歩出ようとする主人公が結末にある。

  • 主人公が恋人とどうなるかはかなり早い段階からわかっていて
    それでもきちんとどうなるか読み進めなければならないと感じる本
    家族について思うところのあったことがある人には何かしら刺さるだろう
    今流行りの毒親問題周りにいる人なんかもいいかもしれない

    最後の、カレンちゃんと主人公のセリフを
    演劇のワークショップで教えてもらった通りに声に出してみながら読んでみた
    勝手に涙が出てくるしびっくりした

    本を読むっていうのは、私にとって箱庭を上から眺めるものだったけど
    こういうやり方を覚えると中に入っていけるんだな

  • 長らく疎遠だった父が、死んだ。
    「明日香を除く親族は屋敷に立ち入らないこと」。
    不可解な遺言に、娘の明日香は戸惑いを覚えたが、医師であった父が最期まで守っていた洋館を、兄に代わり受け継ぐことを決めた。
    25年ぶりに足を踏み入れた錦野医院には、自分の知らない父の痕跡が鏤められていた。
    恋人の冬馬と共に家財道具の処分を始めた明日香だったが、整理が進むに連れ、漫画家の仕事がぎくしゃくし始め、さらに俳優である冬馬との間にもすれ違いが生じるようになる。
    次々現れる奇妙な遺物に翻弄される明日香の目の前に、父と自分の娘と暮らしていたという女・妃美子が現れて――。
    愛情のなくなった家族や恋人、その次に訪れる関係性とは。
    (アマゾンより引用)

    片付けの出来てない家の整理とか考えただけでゾッとするな。
    主人公には共感できんやったなぁ。
    物語は好きだ。

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著者プロフィール

1986年千葉県生まれ。2010年「花に眩む」で「女による女のためのR-18文学賞」読者賞を受賞しデビュー。16年『やがて海へと届く』で野間文芸新人賞候補、17年『くちなし』で直木賞候補、19年『森があふれる』で織田作之助賞候補に。著書に『あのひとは蜘蛛を潰せない』『骨を彩る』『川のほとりで羽化するぼくら』『新しい星』『かんむり』など。

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