芋虫 江戸川乱歩ベストセレクション2 (角川ホラー文庫 え 1-2 江戸川乱歩ベストセレクション 2)

著者 :
  • 角川グループパブリッシング
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  • Amazon.co.jp ・本 (208ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041053294

感想・レビュー・書評

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  • 凄い話。
    はっきり言えばグロイ。 グロい話であるのは間違いない。

    戦争で四肢と触覚と視覚以外を失った須永中尉とその妻時子。
    二人しか存在しない世界・どうしようもない、やるせない世界。
    そこから逃げることが出来ないし、逃げようともある意味してない世界。
    その窒息しそうな世界で繰り広げられる残虐性を孕んだ快楽。
    嗜虐性を誘う夫の姿。それにどんどんのめりこんでいく妻。

    相手を滅茶苦茶にしてやりたいと言う時子の歪んだ気持ちは一種の純粋な愛情の現われなのだろうか。

    相手を滅茶苦茶にしてやりたいという欲望に駆られて、負けて
    夫に唯一残っていた外界に対する直接的な架け橋である視覚をい奪ってしまった時子。

    そしてその後我に返り「ユルシテ」と夫の触覚に訴える時子。

    夫はどういう気持ちだったのか。
    自分のせいで妻が狂っていってしまったことを知って、自分の命を自ら絶つために芋虫のごとく這っていき、古井戸に投身自殺を図る。「ユルス」という言葉を残して。


    相手を滅茶苦茶にしてしまいたいと思ってしまうってのは、
    「愛」と「憎しみ」が紙一重の状態になっているのだろうか。
    「愛」ではなくてただの「欲望」なのだろうか。それとも「執着」なのだろうか。

  • 独特な世界観かつ着眼点がおもしろい。

    芋虫、赤い部屋、人でなしの恋 がお気に入り。

  • ★3.5。
    現在ではアウトな設定・描写が幾つかあることは否定できない事実ではありますが、書かれた時代を考えると、むしろこの作家の反逆性が際立つというもの。
    また、こういう作品の扱いには「品」が問われるという気がする。例えばこの作家の作品の映像化の幾つかは、それを物語っているかなと。裏返して言えば、作家の上品さが作品をぎりぎりのところで止めているかと。

  • 小説でこんなに恐ろしい体験をできるのか。
    戦争で手足を失った夫を介抱する妻。芋虫みたいになり、植物状態の夫を称えろという周りの人間。戦果中の同調圧力が気味が悪かったのと、芋虫みたいになった夫に対する妻の心情変化が最も恐ろしい。人間の根源的傲慢さ、ドス黒さをこれでもかと感じられる。戦争だけでなく、その中にいる人間が恐ろしい。

  • 江戸川乱歩の作品の中でも、ミステリ色ではなくホラー色の強い作品が詰まった一冊。

    乱歩の描くホラーには、体の内側を這うようなねっとりとした気味の悪さがある。それでも読み進めてしまうのは、どこか共感してしまうからではないだろうか。読んでいると、平生では片鱗さえみせない感情が刺激され、顔をむくりむくりとだしてくるのである。そして芽生えてきた、共感できてしまう自分にもまた恐ろしさを感じるのである。しかし私はその恐ろしさすらも愛おしく思ってしまうのだ。

    私は、『赤い部屋』が1番のお気に入りである。
    偶然を操り人を殺めていく語り手。自分にもできてしまいそうな、そして自分も同じように殺されてしまいそうな、そんな身近さを感じる。

  • いつも酒を飲みながら本を読んでいると言われそうですが、はい、たいていそうです(笑)。だって酒を飲みながら読書するのは至福の時間。アルコールが入っても覚醒するタイプの本もありますが、これは幻想世界に誘われて時おり眠気を催すタイプ。しかし夢うつつの状態で読むのにもまたピッタリ。鮮やかなる狂気、美しき変態とでも言いましょうか。

    装丁に惹かれて揃えた江戸川乱歩ベストセレクション。2巻目に当たる本作の表題作は『芋虫』。これをモチーフとした映画『キャタピラー』が強烈で、いまだに大西信満を見るとあの芋虫のような映像が頭に浮かび、眉間に皺が寄ってしまいます。しかし映画ではどうしようもない人柄に描かれていた「軍神様」が、この本では妻のおもちゃになっているかのよう。まるで異なるイメージに驚愕。

    今の時代のホラー作家にも乱歩を読みあさった人は多いのかも。古めかしいのに、いつまで経っても新しい。

  • 巻末、三津田信三氏の解説が実に的を射ていると思うのだが、乱歩の志向した理知性と、素養として備えていたであろう怪奇性および幻想性がバランスよく配合された短編集。
    まず表題作でズドンと奈落の底まで突き落とされ、続く3作ほどは余韻を引きずりながら一気に。
    「踊る一寸法師」で再び感情を強く揺さぶられた後に、「夢遊病者の死」、「双生児」で左脳を刺激される。
    そして「赤い部屋」で何とも名状し難い感銘を得ているうちに、「人でなしの恋」へとなだれ込む…。
    シリーズ1巻と同様に、作品パワーもさることながら、編纂の上手さも感じられる。

  • 同期に借りた。芋虫は名前だけ聞いたことあったし内容もぼんやりは知っていたけれど期待を裏切らないキモさだった。時子は内なる残虐性を満たすために肉独楽化した夫の世話をしていた…というか飼っていたんだろうな。愛もあったから世話をし続けられたのかもしれないけれど夫のためというかは自分のため。白昼夢も狂気的な愛の話っぽかった。夢遊病者の死は以前読んだ『儚い羊たちの祝宴』に出てきたし双生児は後に読んだ『死体を買う男』にもオマージュされている感じがあった。(乱歩作品には一人二役トリックが多く用いられているらしい。)どの作品も残虐。印象に残ったのは踊る一寸法師。いじめられっ子がキレて手を付けられなるってこういうことなんだろうな。あと人でなしの恋はこの時代にも人形嗜好ってあったんだ…と思った。エドガー・アラン・ポーは読んだことないけれど乱歩の作品と比べてみたい。

  • 読む前から妄想膨らんでいたから(笑)

    割とあっさりだなと思った(^_^;)


    でも、他の短編もレベル高い!

  • 「乱歩を知らぬまま、大人になってはいけない」
    これも松丸本舗のポップでみたメッセージ。友達から進められて初めて読んだ。
    タイトルの話が気持ち悪いせいでとっつきにくかったけれど、後半の話は知的かつ悪趣味な話が多く、結構面白かった。

  • インスピレーション源

  • 芋虫は不気味だけれど、確かに切ない作品でした。

  • 赤い部屋が好きでした。
    あと、人でなしの恋のじわじわ感がたまらない。
    喋る人形というわけではなく、あくまで夫が声音を変えて話していた、というところが凄い。だからこそ怖い。

  • ベッドで真似したりして。芋虫の

  • 標題作の「芋虫」が、映画「キャタピラー」のヒントになったという作品で、映画を観た後に読んでみた。
    戦争で四肢とコミュニケーション手段をほとんど失った帰還兵と、その妻の話。
    小説では、戦争の愚かしさではなく、人間のこわさがテーマの中心になっている。
    終盤の場面、文字では読めたけど、映画には反映されなくてよかった。実写ではエグくてみれないよ。。

    「芋虫」以外の短編も面白く、特に「踊る一寸法師」、「赤い部屋」、「人でなしの恋」が気に入った。


    いわゆる『ホラー小説』は読み切れたことがなく、現代小説でもないので、苦手意識があったけど、読みやすかった。
    江戸川乱歩すごい。

  • 作品ごとに好き嫌いのムラががが。

  • あぁやっぱり乱歩の短編大好き!

    「双生児」はポーの「ウィリアム・ウィルソン」からきてるのかな?
    話の内容はもちろん違うけど、一瞬フラッシュバックした。

    あと「夢遊病者の死」は「アッシャー家の崩壊」となんか違う話を掛け合わせたような印象があるなぁ。


    乱歩コンプリート(明智さん以外)するぞー☆

  • やはり表題の『芋虫』はインパクトがある。
    中学生の頃に読んだ記憶があり、ラストが古井戸に落ちて自ら、命を絶って終わるイメージがなく、草むらを這い回り逃げていく印象が強かった。
    近代のお話よりは、このような設定はむかしむかしと始まるほうが怖いのだろう。『芋虫』はそんな昔ではなけれど。

  • 明智先生も書けるのにどうしてこういうのも書けるの?凄過ぎる。

  • 不気味なホラーですが、それがすべて人間の手による恐怖だ、というところが小気味良い。

著者プロフィール

1894(明治27)—1965(昭和40)。三重県名張町出身。本名は平井太郎。
大正から昭和にかけて活躍。主に推理小説を得意とし、日本の探偵小説界に多大な影響を与えた。
あの有名な怪人二十面相や明智小五郎も乱歩が生みだしたキャラクターである。
主な小説に『陰獣』『押絵と旅する男』、評論に『幻影城』などがある。

「2023年 『江戸川乱歩 大活字本シリーズ 全巻セット』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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