マルクスを再読する 主要著作の現代的意義 (角川ソフィア文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (400ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041053683

作品紹介・あらすじ

資本主義国家が外部から収奪できなくなったとき、いったい資本主義はどうなるのか? 
この問題意識から、日本を代表するマルクス研究者が主要著作を読み解いた講義録。

「グローバリゼーションが社会を上位均衡化させる」は、幻想だった。
実際に起こったのは中産階級の崩壊であり、下位均衡化(下の方で貧しくなる事)でしかなかった。
「<帝国>以後の時代」を考えるには、資本主義後の世界を考えたマルクスを再読する必要がある。

ネグリの帝国論とその課題から入り、アルチュセールからスピノザの思想を押さえたうえで、マルクスの主要著作を、「代議制民主主義が世界に普及している現在において、あえて近代市民社会を批判する」という視点から解題していく。
この挑戦、刺激的な読み解きは、資本主義が支配する世界以外を考えられない私たちの頭を解き放つ。
そして、まるで“中世かポスト現代か”というような、ナショナリズムや民族主義、原理主義が氾濫する現代社会を切り拓き、新しい世界を展望するきっかけとなるだろう。

文庫版まえがき

第一部 現代思想と<マルクス>
 一章 アントニオ・ネグリの「帝国」の概念
 二章 アルチュセール・ショック
 三章 スピノザ革命

第二部 <マルクス>の著作を再読する
 四章 現代社会とマルクス
 五章 共産主義社会とは何か--『経済学・哲学草稿』の類的本質
 六章 唯物論とは何か--フォイエルバッハテーゼの一一番
 七章 たえざる運動としての共産主義--『ドイツ・イデオロギー』
 八章 構成された価値と労働運動--『哲学の貧困』
 九章 共産主義の亡霊と『共産党宣言』
 一〇章 国家の解体--フランス三部作
 一一章 オリエンタリズム
 一二章 方法の問題--『資本論』と『経済学批判要綱』
 一三章 社会運動とマルクス

あとがき
文庫版あとがき
解説 佐藤優

感想・レビュー・書評

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  •  冷戦の終戦を機に、マルクス主義の影響力は弱まった。これで、マルクスの思想は過去の遺物だと、そう思われた。しかし、21世紀アメリカ一強の時代となった矢先に、イスラム勢力が台頭し、その象徴たる同時多発テロ事件は世界を震撼させた。これ以降、世界情勢は混乱を極める。そのような時代だからこそ、マルクスの書物に目を向けるべきだと著者は説く。たしかに、社会主義や革命の必然性は誤りであったが、それでもなお、マルクスが現存する資本主義システムの見方は今も色あせない。このように、本書は『資本論』を含むマルクスの著書を、改めて読み直し、今後の社会の動向、システムにどのように向き合うべきかを考えさせてくれる。
     本書を読むと、現代人はどれほど近代的価値観に刷り込まれているのかを思い知らされる。著者によると、近代とは、人間が頭の中で思い浮かんだことを、現実へと移行させようと邁進した時代であったという。そのため、資本主義とは、人間の潜在的な欲望を具現化させるための社会システムだといえる。また、近代以降に誕生した国家とは本質的に装置であり、その中核である国家権力を奪おうと革命を起こしたところで、微動だにしない。ゆえに、資本主義社会とは、均衡のあるシステムである。これら以外にも、従来とは違う解釈で、マルクスの思想に迫るが、いずれにせよ、現代人に何らかの意義を与えてくれる。

  • マルクスの思想が現代思想にどう活かされているかを概観した上で、
    代表的な著作を一つ一つ解説した本
    私見では、マルクスの思想を再読する意義は経済学的においてはほぼ無く、
    哲学・社会学的にはそこそこくらいだと思う

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著者プロフィール

的場昭弘(まとば・あきひろ)1952年宮崎県生まれ。マルクス学研究者。1984年、慶應義塾大学大学院経済学研究科博士課程修了。経済学博士。一橋大学社会科学古典資料センター助手、東京造形大学助教授を経て現在、神奈川大学教授。マルクス学の提唱者。マルクスの時代を再現し、マルクス理論の真の意味を問い続ける。原資料を使って書いた作品『トリーアの社会史』(未來社、1986年)、『パリの中のマルクス』(御茶の水書房、1995年)、『フランスの中のドイツ人』(御茶の水書房、1995年)をはじめとして、研究書から啓蒙書などさまざまな書物がある。本書には、著者による現在までのマルクス学の成果がすべて込められている。

「2018年 『新装版 新訳 共産党宣言』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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