京都なぞとき四季報 町を歩いて不思議なバーへ (角川文庫)

著者 :
  • KADOKAWA
3.17
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本棚登録 : 307
感想 : 27
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  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041061367

作品紹介・あらすじ

京都の大学の散歩サークル「加茂川乱歩」の遠近倫人の周りには、つねに謎が寄ってくる。同じサークルの謎解きが大好きな理系女子・青河幸の気を惹くため、奮闘するも、目の前の謎は手強いものばかり。

感想・レビュー・書評

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  • 京大キャンパス内のどこかで営業しているという、謎めいたバー〈三号館〉。
    お店に入っただけで、ホームズ張りに主人公のことを見抜くシーンが、おもしろかった。
    個性的で美しいドリンクも素敵。

    京都市内を歩き回るサークルの活動も、観光的にたのしい。
    大学生のゆるい感じにぴったり。

    青河のためにがんばる遠近も、ほほえましかった。

    さらっと読めるミステリ。

    『クローバーリーフをもう一杯』の改題。

  • 京都学生青春ホッコリミステリ。突然現れる謎のバーテンダーが、日常の謎を解くアームチェアディテクティブ。
    私は個人的に京都の学生生活にめちゃくちゃ憧れがありますので、評価は甘めです。
    ミステリとしては、ルヴォワールのあのとんでもない作風はどこ吹く風で、極めてマイルドで読みやすく、悪く言えば個性がない印象。

  • 京都が舞台の本を見つけると、つい手に取ってしまう。

    一浪して京都大学に入った、遠近倫人(とおちかりんと)は友人の誘いでお散歩サークル『賀茂川乱歩』に入った。
    週末に京都の観光地を巡るのが活動。
    そこで出会った気になる女性は、青河幸(あおかさち)

    そして、もう一つの出会い。
    大学構内に神出鬼没の不思議なバー「三号館」は謎を持つ人しか辿りつけないという。
    「三号館」のマスター、蒼馬実希(そうまみき)が作るカクテルが謎解きの鍵。
    京都初心者で恋愛初心者の倫人は、学業と恋愛と謎解きで、充実したキャンパスライフを送る。
    いいなあ~キャンパスライフ!楽しそう。
    守る価値はある。


    『クローバー・リーフをもう一杯』
    サークルの新入生歓迎コンパの待ち合わせ場所へ。
    タクシーに乗ってる人が入れ替わった?!

    『ジュリエットには早すぎる』
    「五月の三条を楽しむツアー」は鴨川の川床から“鴨川をどり”へ。
    席が入れ替わった?!

    『ブルー・ラグーンに溺れそう』
    京都水族館で出会った謎の女性とイルカショーの謎。

    『ペイルライダーに魅入られて』
    京都が最大に盛り上がる祇園祭。
    宵山初日に青河さんの身に起きた重大な出来事と、招かれざる客。

    『名無しのガフにうってつけの夜』
    「三号館」の危機?!最後に倫人は最大の謎を解く。

  • ● 感想
     円居挽らしい作品。京都,それも京大が舞台。京大の新入生が,同じサークルの女性に恋をするという青春モノっぽさと,京大の中に存在する謎のバー三号館での謎解きがメイン。しかし,いずれも設定が練りこまれていない印象。個々の短編の謎は,いわゆる日常の謎系。サークルからの美人新入生の消失,気が付くと隣に青河が座っていたといいう謎から始まり,水族館での二人の人の消失,青河の転落事件,そして,ミステリ研の放火なっている。
     謎解きの真相も,サークル会長の二股で,同じプレゼントを使ったアリバイトリック,周囲にいた人が協力して目印になる人を移動させていたというトリック,水族館の従業員だったというトリック,第1発見者が犯人というトリックとモンティ・ホール問題をテーマとしたちょっとした掛け,そして,プレハブを1つ追加して場所を錯覚させたというトリック。最後のトリックこそ,それなりに面白かったが,ミステリとしてはちょっと小粒円居挽らしい強引なストーリーは,大人の鑑賞に堪えうるものでもない。個人的には,逆転裁判的なノリのこのめちゃくちゃな筋書きは嫌いではないが。
     トータルのデキは,円居挽が好きという点を加点して★3で。

    ● メモ
    ● 設定
     主人公は遠近倫人という京都大学の新入生。京都大学の公認で,京都市内を歩き回ることを目的とする「賀茂川乱歩」というサークルに所属している。
     同じサークルの青河幸という女性に恋をしている。
     遠近倫人は,京大のキャンパス内のどこかで営業している「三号館」という「どんな悩みでも解決するというバー」に謎を持ち込むことになる。三号館のマスターは蒼馬美希という女性
    ● クローバー・リーフをもう一杯
     「灰原」という賀茂川乱歩というサークルで人気のあった,美人の新入生が姿を消した。遠近倫人は,青河幸と一緒に,灰原が四葉のタクシーに乗った場面を見るが,そのまま姿を消し,新歓コンパにも姿を現さない。灰原の連絡先の欄は,空白になっている。灰原はどのようにして,どこに消えたのか?
     遠近は,三号館に迷い込み,クローバーリーフというカクテルを飲む。そして,謎を解く。
     真相は,賀茂川乱歩の会長である大溝が二股を掛けていたというもの。副会長の千宮寺という女性と付き合いながら,灰原と付き合おうとして,四葉のタクシーを利用したトリックを使った。千都寺と灰原に同じカルティエの時計を送り,サークルにストーカーがいるとして,灰原をサークルから遠ざけた。
     2つのカルティエの時計を使ったアリバイトリックはそれほどのものでもないが,四葉のタクシーの存在等,伏線がきっちりしておりそれなりに楽しめる短編
    ● ジュリエットには早すぎる
     歌舞練場で,遠近の隣に座っていなかったはずの青河が,気が付いたら隣の席にいた。その謎を解くために,遠近は,再び三号館に。真相は,遠近と青河が接近するようにと,千宮寺と東横が仕掛けていた。川床での食事も遠近と青河が二人になるように仕掛けていたが,遠近はそれをよしとしない。あ死後は東横と千宮寺が付き合うことになる。 
     トリックは,遠近をトイレに行かせて,目印になる人を移動させていたというもの。トリックはチープだが,円居挽らしく,伏線はきっちりしている。ミステリというより,青春小説として読むべき作品か。青春小説として読めば,やや青臭いがそれなり
    ● ブルーラグーンに溺れそう
     水族館で出会った藤ミーナという女性と,その女性にぶつかった男が消えた。
     真相は,藤ミーナには右目の視力がなかったというもの。そのため,小学生がぶつかったことに気付かなかった。藤は,自分の右目の視力がないことを隠すために,ダミーの男性にぶつかったことにし,あり得ない方向に逃げたと嘘の証言をした。藤はイルカショーに出演する人物であり,従業員であることから,専用の通路を利用して隠れたので,いなくなったように見えた。藤は,イルカのトレーナーと一緒にいる姿を東横に見つけられる。
     謎としては極めてチープ。今回は伏線もやや弱い。小説としてもさほど面白くない。イマイチ
    ● ペイルライダーに魅入られて
     かつて,三号館の常連だったという面浦という男。法学部の4回生。この男が,再び三号館に行くために,青河が倒れるという悪意のある謎を用意する。面浦は,遠近を騙し,一緒に三号館に行き蒼馬にペイルライダーというオリジナルカクテルを注文する。
     相手にいうことを聞かせるというカクテルとモンティ・ホール問題がテーマ。トリックは,ペイルホースというカクテルを1つも作らず,全て,ペイルライダーというカクテルだったという点。全てペイルライダーなので,当然,面浦はペイルライダーを飲む。蒼馬も遠近も飲んでいた。
     トリックありきで後から物語を作ったという印象の作品。小説としてのデキはイマイチ
    ● 名無しのガフにうってつけの夜
     三号館が火事になり,遠近は放火の容疑者になる。御園生というかつて三号館の常連だった教授が登場。放火の容疑者となった遠近は青河と捜査。ミステリ研で瓶賀という女性に出会う。捜査の結果,トリックに気付く。トリックは,7つあるプレハブが8つに増えていたというもの。犯人は,自分の名前のボトルを抜見だそうとしたが,停電で電気が付かなかったので火を付けた。しかし,その部屋は,となりのミステリ研の部屋だった。夜盲症で携帯を持たない人物。御園生教授が犯人だった。
     蒼馬の正体は,サークル活動の動向を知ることができた,学生課の職員だった。
     

  • なかなかおもしろかったです☆
    でも後半の2つのお話は、確率…とかちょっとわたしには難しい。人体消失なんかのお話はワクワクしたし、突然現れる学内の幻のバー「三号館」も魅力的!と思ったのに。
    京都の四季を鮮やかに描写していてそこも良かったです☆
    結局、三号館はなんだったのか…幻か、で終わると思ったら現実にいたとは。続編もあるみたいだけど、正体バレてどう続けるんだろ。
    いつか読んでみたいです。

  • 宵闇色と琥珀色

  • 京都の大学生による日常青春小説!
    大きな謎解きではなく、その時々に起こるちょっと不思議な謎を解く物語。
    大学内で都市伝説的に語られる幻のバー「三号館」…
    そんな場所が大学にあったら、面白いでしょうね~
    来店できる人にはある特徴があって…
    私は絶対に来店出来なさそうです。
    謎とかあっても「あ、そう…。不思議だな~」で終わらせてしまうので……

    京都の観光名所もいくつか出てきて、京都水族館に行ってみたいです!
    オオサンショウウオのぬいぐるみが欲しいです!
    賀茂川乱歩に参加したいです!

  • 日常系謎解きミステリー。
    京大は不思議が実際にあり何かと舞台になりがちだが、そこまでスポットを当てた感じはない。
    日常にておこる小さなミステリー5本が収録されているがファンタジーじみたものなど少々トリックが雑な印象が多い。

    大学にひっそりと存在するバー「三号館」という都市伝説めいたアイデアはワクワクして面白い。普通ならあり得ないが京大ならもしやと思わせるのは不思議。

    もうちょっと青河さんのキャラを立たせても良いのでは?と思わないでもない。

  • 京大のキャンパスで神出鬼没なバー「三号館」にお題代わりに謎を持ち込んでカクテルを飲むと謎の答えに気づかされるお話
    連作短編日常の謎もの

    収録作は以下5編
    ・クローバー・リーフをもう一杯
    ・ジュリエットには早すぎる
    ・ブルー・ラグーンに溺れそう
    ・ペイル・ライダーに魅入られて
    ・名無しのガフにうってつけの夜


    「四季報」なんて単語が入っているので「株に関する謎か?」と思ったけど、京大の学生による日常の謎だった
    もしかして4冊で一年間の物語の予定とか?

    腐れ学生とまでは行かないけど、森見登美彦がよく書くキャラクターの風味を感じる
    主人公もそうだし、憧れの女性の描写もそれっぽく思ってしまう
    ただ、「江戸川乱歩」をもじった「加茂川乱歩」は、森見さんならもう一捻り加えてくるかもとも思う


    謎に関しては、偶然性に頼り過ぎな謎が結構ある
    まぁ、日常の謎に限らずミステリはそんなの多いですよねー


    あと、バーの女性店長を「マスター」と呼ぶのは違和感がある
    かといって、「バーメイド」「ミストレス」という表記をされると、それはそれで違和感を持つ人も多そうですね
    まぁ、この作品ではそんな知識のなさそうな大学生視点で描かれているので、地の文でもマスターと呼んでいても「そう呼ぶでしょうねぇ」としか思わないかな


    「モンティ・ホール問題」は、スタンダードな条件だと変えた方が有利ではあるんだけど
    些細な条件で確率って変わるからねぇ
    事前情報の有無や情報を知っているかどうかで変わってしまうものは、果たして確率論としてどうなんでしょうね?


    ストーリーに関して、バーの存在がファンタジー的なものかと思いきや、そんなオチとは
    ただ、理屈は説明できても、そんな営業形態にする動機がよくわからない

    あと、ペイル・ライダーの前提要件が明らかにファンタジー要素を含むんだけど、これも現実的な説明ができるなんだろうか?
    それとも、これも心理的な思い込みによるものなんですかね?

    とりあえず、続きを読む

  • 京都、京大が舞台の青春物は、森見さんや万城目さんの小説で大好物で、よくチェックしています。

    以前にルヴォワールシリーズを図書館で見つけて、いずれ読もうと思っていたのですが、たまたま2冊セットで置いてあって、同じ作者だと思い読んでみました。

    短編集で、主人公の奥手の京大1年生の恋愛をベースにストーリーは進んでいきます。学生生活の中で起きるちょっとした謎を、これまた京大の三号館に出現する神出鬼没のバーのバーテンダーの蒼馬さん(和服の似合う若い女性)の助けを借りて主人公が解き明かしていくという話でした。

    毎回、蒼馬さんが、謎の解決にちなんだカクテルを出してくれるのですが、かっこいい名前でとても美味しそうで飲んでみたくなります。

    各短編では、サークル、大学生活、恋愛、京都のお祭りが描かれていて、「鴨川ホルモー」や「夜は短し歩けよ乙女」のような、大学生活の醍醐味も詰め込まれていて、忘れていた学生時代を思い出しました。

    最後に、蒼馬さんの謎も明らかになるのですが、主人公の恋愛ストーリーが中途半端に終わっているが残念。続編に期待したいと思います。

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著者プロフィール

ミステリ作家。1983年、奈良県生まれ。2009年に『丸太町ルヴォワール』で講談社BOXからデビュー。同作から始まる〈ルヴォワール〉シリーズ(講談社)のほか、著作に『キングレオの冒険』(文藝春秋)、『シャーロック・ノート』(新潮文庫nex)など。

「2022年 『円居挽のミステリ塾』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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