不死蝶 (角川文庫 よ 5-43)

著者 :
  • KADOKAWA
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感想 : 6
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  • Amazon.co.jp ・本 (400ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041073971

作品紹介・あらすじ

「蝶が死んでも、翌年美しくよみがえるように、いつか帰ってきます」二十三年前、謎の言葉を残し、突然姿を消した一人の女。当時、鍾乳洞殺人事件の容疑者だった彼女は、成長した娘と共に疑いをはらすべく、今、因縁の地に戻ってきた。だが、その彼女の眼の前で、再び忌わしい殺人が起きた! 被害者の胸には、あの時と同じく、剣のように鋭い鍾乳石が……。迷路のように入り組んだ鍾乳洞で、続発する殺人事件の謎を追って、金田一耕助の名推理が冴える!

感想・レビュー・書評

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  • 表題作と『人面瘡』(同タイトルの短編集にも収録されている)の二作を収録した金田一耕助シリーズ作品。家同士の対立に洞窟探検など横溝先生の庭が楽しめる表題作。『人面瘡』は怪奇小説にも似た味わいの一作。

    『不死蝶』
    「蝶が死んでも、翌年美しくよみがえるように、いつか帰ってきます」
    23年前に起きた鍾乳洞での殺人事件。その容疑者である朋子(ともこ)はそう書き置きを残して姿を消した。底なし井戸に身を投げたかと思われたが、今になってその姿を現した?!朋子らしき人物は娘・マリを連れて町へと戻ってくるが──。

    対立する二つの家!絡み合う人間関係と愛憎劇!迷路のような鍾乳洞!過去と現在の事件が重なっていくストーリー!横溝先生のお家芸を堪能できる。全然知らない土地なのに、この空気だよな!ってなる。鍾乳洞で巻き起こる連続殺人!「底なしの井戸」「蝙蝠の窟(いわや)」「逃げ水の淵」「とどかぬ窟(あな)」など、二つ名がカッコいい。洞窟探検というとロマンと冒険心をくすぐられるけど、ここまで広くしろとは言っていないというレベルでデカい!鍾乳洞度が高すぎる!

    人間関係もまた鍾乳洞の迷路の如く入り組んでは乱れている。あからさまな描写と、思わぬ伏線の二段構え。真相を見通せた時の切なさや、ささいな描写の意味がわかる構成が上手い。自分が守りたいものは何なのか。家か、愛か、自分か、他人か。それが明暗を分けるドラマになっている。両家の対立の発端となった矢部杢衛(もくえい)と玉造乙奈(たまつくりおとな)のドラマは味が濃い愛憎を感じさせる。描かれる様々な愛の形がやり切れない。

    『人面瘡』(短編集『人面瘡』にも収録)
    「あたしは今夜また由紀ちゃんを殺しました。由紀ちゃんを殺したのはこれで二度目です」
    金田一耕助が磯川警部と逗留した宿で巻き起こる怪死。女中の松代は自分が妹・由紀子を殺したと思って自殺を図る。彼女の腋には妹の呪いだという人面瘡が浮かび上がっていて──。

    夢遊病に人面瘡に右頬に火傷痕の男など、怪奇小説の雰囲気も感じる作品。真相が顔を出すにつれて怪異が人間への恐怖へと入れ替わっていく構成が秀逸。悪意を持った人間こそ一番おぞましい。その行動原理は狂気か欲か執念か。磯川警部と骨休めしに来たはずが、まったく休まってない!いつものことだけど(笑)

  • 夢遊病が出てくることがすごく多く感じるのだが、この時代は夢遊病になる人が多かったのだろうか…。話自体は先の展開が気になる面白さはあったけど、どちらかというと最後の短編の人面瘡の方が切ない感じで心に残る作品だったと思う。あと、人面瘡って初めて知った面白さもある。

  • 『不死蝶』鍾乳洞といい対立する二家といい、八つ墓村を思わせるいかにも横溝的な話。罠を仕掛けて嵌めようとするパターンは好きなので、金田一先生にしては珍しいと思いながらもわくわくした。結局失敗するところもご愛嬌。
    『人面瘡』松代は本当にいいの?大団円になってるけど、下半身に弱すぎる男はやめた方がいいと思う。

  • 読者が推理できるよう、いくつかわかりやすい提示をしている。
    マリとよく似た君江の姿 とか、
    金田一耕助がわざとらしくクシャクシャと手紙を慌ててしまう様子 とか
    真相を知る者が皆死んでしまったのは残念だったが…。
    23年前の君江の書き置きを実行した、その真相は、とても自分の中ですっと入ってきた感じ。

    人面瘡は、ホラー的な要素でも楽しませてくれる。
    昭和の時代のホラーが、周りの世界より不気味にしてくれる。

  • 昔読んだ本

  • 横溝作品らしい、田舎独特のドロドロがあり、八つ墓村とはまた違った鍾乳洞でのゴタゴタありで読み応えありました。
    もうひとつのお話【人面瘡】は、現代だったらあまり考えられないだろうなぁという展開。戦時中はこういうことあっただろうなと考えられる作品でした。

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著者プロフィール

1902 年5 月25 日、兵庫県生まれ。本名・正史(まさし)。
1921 年に「恐ろしき四月馬鹿」でデビュー。大阪薬学専門学
校卒業後は実家で薬剤師として働いていたが、江戸川乱歩の
呼びかけに応じて上京、博文館へ入社して編集者となる。32
年より専業作家となり、一時的な休筆期間はあるものの、晩
年まで旺盛な執筆活動を展開した。48 年、金田一耕助探偵譚
の第一作「本陣殺人事件」(46)で第1 回探偵作家クラブ賞長
編賞を受賞。1981 年12 月28 日、結腸ガンのため国立病院医
療センターで死去。

「2022年 『赤屋敷殺人事件』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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