バベル九朔 (角川文庫)

著者 :
  • KADOKAWA
2.74
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本棚登録 : 990
感想 : 89
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  • Amazon.co.jp ・本 (384ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041077627

作品紹介・あらすじ

世界には「無駄」が必要だ。

カラス女、ヘンテコ店舗、夢の結末――雑居ビル管理人を最上階で待つものは?
全編ビルから出ずに繰り広げられる、最狭(さいきょう)かつ最高の冒険譚!


俺は5階建ての雑居ビル「バベル九朔」の管理人をしながら作家を目指している。
巨大ネズミ出没、空き巣事件発生と騒がしい毎日のなか、ついに自信作の大長編を書き上げた。
だが、タイトル決めで悩む俺を、謎の“カラス女”が付け回す。
テナントのギャラリーに逃げこんだ俺は、ある絵に触れた途端、見慣れた自分の部屋で目覚める――外には何故か遙か上へと続く階段と見知らぬテナント達が。
「バベル九朔」に隠された壮大な秘密とは?

感想・レビュー・書評

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  • 5階建ての雑居ビル「バベル九朔」の管理人をしながら作家を目指す主人公は、騒がしい日々の中、ついに自信作の大長編を書き上げた。
    だが、そんな自信作のタイトル決めでで悩む主人公を謎のカラス女が付け回す。ビル内のテナントに逃げ込んだ主人公がある絵に触れたとたん、目覚めたのは見慣れた自分の部屋。外には何故かはるか上へと続く階段が?
    「バベル九朔」に隠された壮大な秘密とは?


    タイトルだけは前から知っていましたが、管理人さんのお仕事小説ではなくファンタジー小説なんですね。びっくりしました。
    作者紹介を読むと、万城目さん自身も雑居ビルの管理人をしながら作家を目指していたそうで、そういった思い出も投影されているのかもしれません。

    ストーリー的には壮大でちょっと掴みづらいところもありますが、エッシャーの騙し絵のような不思議な魅力があります。超現実的というか。
    神話のバベルの塔のように、高慢に肥大していく雑居ビル。はたして夢とは「無駄」なのか「自由」なのか。モラトリアムに対する一つの回答のよう。
    ラストの解釈も人それぞれな気がして、不思議な本でした。

    テレビドラマにもなったそうで、いったいこれをどう映像化したのか気になってしまいます。

  • 雑居ビルの中のテナントが永遠に積み上がっている中を探察し、バベルの謎を追うストーリーです。設定としては非常に興味深い作品でしたが、序盤は山場が無く退屈な印象を持ちましたし、終盤は話がややこしくなり、ついていくのが大変でした。

    この小説は中盤が最も面白いという今までに無い、ある意味とても面白い作品でした。

  • 万城目学のデビュー作『鴨川ホルモー』を読んだとき、その発想の奇抜さとストーリーの愉快な展開に、なんてすごい作家が現れたんだ!とすぐにファンになった。
    ところが『とっぴんぱらりの風太郎』や『悟浄出立』を読んで、あれ?本当に書きたいのはこういう作品なのかな?と思った。

    主人公の俺は、バベル九朔という5階建ての雑居ビルで管理人として働きながら、作家デビューをするために小説を書いては応募する毎日を送っている。
    が、一次予選すら一度も通ることなく、二年の月日が過ぎようとしていた。


    ###以下ちょっとネタバレ###

    どこにでもあるありふれた雑居ビルのはずだったバベル九朔が、人びとの夢や希望を絶望に換えながら広がっていく「バベル」だったということが徐々に判明していき、大きくなり過ぎたこのバベルは、崩壊の危機に面しているという。
    現実世界に影響を与える崩壊を選ぶか、バベル九朔とともに自分までこの世から消えてしまう消滅を選ぶのか。

    人びとの夢や希望を糧に肥え太っていく存在なんて、現実にはいくらでもある。
    「君には才能がある」「かけがえのない存在だ」と言われ続けて夢にしがみついても、花開かないことだってある。
    甘言をささやき続けた(励ましだったかもしれないが)方が悪いのか、夢をあきらめきれない自分が悪いのか。
    それは無駄なことなのか、不幸なことなのか。

    思えば作家という職業は、登場人物に夢も希望も、現実も絶望も与え、その相互作用で生まれたものをもとに作品を作り上げているのだから、これは全くバベルの在りようと同じわけだ。

    作品の結末についてはいかようにも解釈できるだろうけれど、私は、作家としての業は重々承知のうえで、作家として今後も努力を続ける、と、「言葉」で伝えることの大切さ、大変さを決して忘れないという、作者の宣言と捉えました。

  • 難解でした。これは、どうしても好き嫌いわかれてしまう小説かな・・・。

    作家になれる保証もないのに、会社を辞め、親戚が所有する雑居ビルに転がり込み、管理人になり、日々ビルの管理人をしながら、作家デビューを目指す久朔満大。この設定は、万城目さんご自身そのものだそう。自伝的な小説家と思いきや、カラス女が出てくるあたりからおかしくなり、一気に奇想天外な世界へと進んでいく。

    「夢」を見ることは「無駄」なのか。「無駄」は排除すべきか・・・そんなことを考えつつ読み進めるも、やっぱりよくわからない。
    最後は「え?これって結局・・・?」と思って、夫(少し前に読了)に確かめるも、やっぱりよくわからず。もうそんな小説だと思うことにした。

    難解だったけれど、万城目さんの小説家としての力を見せつけられたような気がした。

  • 九朔は祖父の遺産の雑居ビル「バベル九朔の管理人をしている」
    夢は作家

    バベル九朔のテナントは
    B1 SNACKハンター
    1 レコー(中古CD)
    2 清酒会議(和風居酒屋)
    3 ギャラリー蜜
    4 ホーク.アイ.エージェンシー(探偵事務所)
    5 管理人室

    ある日、謎のカラス女が現れる
    ある絵にふれた途端九朔の部屋で目覚めるが
    外には上へ続く階段

    これは異世界なのか現実なのか
    よく分からない感覚になる
    階段をのぼると現れるテナントの名前に
    くすりと笑える
    不思議な世界観の小説
    もう少し登場人物達とのやり取りを見たかった

  • 無駄が源となるバベル九朔。このビルに住まう人達の群像劇と思っていたら、不意にオカルト方向へ。
    過去、異世界、別の自分達と不思議な世界での冒険となるが、夢が叶うバベル九朔。大九朔の野望?と重なり合い、超展開となる。どこから彼の作品だったのか?時は繰り返されるのか?シュールな回のドラえもんの話のよう。

    思い通りの未来となるなら、この世界に残っていればいいのにと、楽な方へ思ってしまう自分がいて苦笑い。
    付録的な短編も全く関係ないのものと、思いきや、何気ない一言からの創作。この短編がどういう評価されているのか、彼の今後の執筆についても想像してしまいます。

  • 時間軸や背景がもう一つ理解しきれなかったのでもう一度読み直したいと思う。それでも後半のスピーディーな展開には引き込まれる様でさすがの万城目節で満足しました。

  • バベル九朔という雑居ビルの管理人が
    別の世界へ引き込まれるストーリーで、
    途中はどうなるのかと面白くて
    次々とページをめくる事ができたが、
    最後がちょっと分かりにくい結末だった。
    主人公のこれからや、
    叔母さんどうなったの?
    と謎は残る…

  • 2020/3/16
    なんだか乗れず。すみません。
    一つだけ非現実があってそのルールに基づいて普通の人たちが右往左往一生懸命動くファンタジーは好き。
    でも次から次へといろんな非現実が襲ってくるのは途中でへこたれる。
    へこたれました。はい。

  • 万城目さんの作品を初めて読みました。目が出ない作家志望の主人公が管理人を務めるバベル(ビル?塔?)で奇怪な体験をする。現実なのか夢なのか・・。独特の世界観で面白かったです。

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著者プロフィール

万城目学(まきめ・まなぶ)
1976年生まれ、大阪府出身。京都大学法学部卒。
2006年、『鴨川ホルモー』(第4回ボイルドエッグズ新人賞受賞)でデビュー。主な作品に『鹿男あをによし』、『プリンセス・トヨトミ』、『偉大なる、しゅららぼん』などがあり、いずれも文学賞ノミネート、映像化等など、大きな話題を呼ぶ。また、エッセイ集に『ザ・万歩計』、『ザ・万遊記』、対談本に『ぼくらの近代建築デラックス!』がある。

「2013年 『ザ・万字固め』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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