後宮の検屍女官 (角川文庫)

著者 :
  • KADOKAWA
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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041112403

作品紹介・あらすじ

「死王が生まれた」大光帝国の後宮は大騒ぎになっていた。
謀殺されたと噂される妃嬪の棺の中で赤子の遺体が見つかったのだ。
皇后の命を受け、騒動の沈静化に乗り出した美貌の宦官・延明(えんめい)の目にとまったのは、
幽鬼騒ぎにも動じずに居眠りしてばかりの侍女・桃花(とうか)。
花のように愛らしい顔立ちでありながら、出世や野心とは無縁のぐうたら女官。
多くの女官を籠絡してきた延明にもなびきそうにない。
そんな桃花が唯一覚醒するのは、遺体を前にしたとき。彼女には、検屍術の心得があるのだ――。
後宮にうずまく数々の疑惑と謎を検屍術で解き明かす、中華後宮検屍ミステリ!

感想・レビュー・書評

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  • 妃嬪の女官・桃花が、実は検屍官の家の出で、普段はいねむりばかりしているぐうたらだが、後宮に起こった連続死をその見事な検屍術で解き明かしてしまう。桃花は魑魅魍魎の住む後宮で、いつもいねむりをして夢の世界に生きている。皇后の命で事態の解決を取り仕切る美貌の宦官・延明が、この桃花に目をつけて検屍をさせる。桃花は女性として全く延明になびかないのだが、心に屈託を抱える延明の取り澄ました仮面を剥がして逆に変えていってしまうのが面白い。しかし、延命と関わることで桃花もきっと変わっていくのに違いない。おっと、ミステリーの部分でもなかなか面白いと思うよ。中華ものだね。

  • 大光帝国の後宮は、謀殺されたという噂の妃の棺から赤子の遺体が見つかったことで幽鬼騒ぎに揺れていた。
    皇后の命で沈静化に乗り出した宦官の延明は、調査の最中侍女の桃花に目をつける。普段は出世欲もなく居眠りをしてばかりのぐうたら侍女だが、彼女には検屍術の心得があった。


    中華風の後宮を舞台にした、検屍ミステリキャラクター文芸です。
    第6回角川文庫キャラクター小説大賞の、大賞と読者賞をダブル受賞した作品。

    出世や寵愛を求める欲望や、宦官に対する差別や忌避感などどろどろした感情渦巻く後宮での事情に全く興味を持たず、泰然としている桃花。それでも友情に厚く、慈愛や正義感も持ち合わせていて、誰かが本当に必要としている言葉を自然とかけてくれる。魅力的なヒロインだと思います。
    個人的に、おっとりした言葉遣いが好き。

    キャラクター小説大賞という事で、登場人物に惹かれるのはもちろんですが、ミステリ要素や推しである検屍の部分もしっかりと書かれているように感じました。

    妃や宦官たちの立場や階級、後宮や宮城の立地や位置関係などは、一読しただけではすっと入ってこないかも? と思いましたが、いわゆる「後宮もの」を読みなれていると違うのかもしれません。

  • 中華後宮の小説を読むのは初めてでした。

    学生の頃、中国の処刑の話を習った時に感じた後味の悪さを思い出しました。主人公の境遇もですが、宦官・延明の過去、賄賂の横行している後宮内、桃花くらい出世や野心と無縁でないとやっていけないと思います。

    後宮内で次々に起こる事件に、検屍で挑む桃花。検屍に対する桃花の覚醒度合いのギャップと、検屍だけでなく周囲に対する観察眼も素晴らしいです。

    少しずつ近づいていく延明との距離感もよかったです。

  • 久しぶりにこの手の小説で面白いと思いました。

    ミステリとしても秀逸であり、歴史もよく学んでいる。

    こうした作品はキャラクターに引きずられてしまう傾向がありますが、読みごたえがありましたね。

    これからの活躍が楽しみな作家が出てきました♪

  • 亡くなった妃嬪の棺に、赤子の遺体が現れた。
    幽鬼が徘徊しているという噂で、後宮の者たちは恐れおののく。

    第6回角川文庫キャラクター小説大賞受賞作。

    現在の寵妃の侍女・姫桃花。
    空閨をかこつ皇后の宦官・孫延明。

    対立する陣営に仕える者同士の、奇妙な協力関係。

    後宮での上昇志向がゼロで、延明の色気にも惑わされない。
    桃花のキャラクターが、たのしかった。

    検死の知識、医学的素養が一般的でない時代だからこその、ストーリー。

  • 中華後宮ミステリー。
    検屍女官の桃花と宦官延明が活躍する。
    桃花は普段はぐうたらなのに検屍する時は覚醒し、事件を解決していく。
    とても読みやすくて次巻も読んでみたいと思った。

  • キャラ設定もトリックも借り物の作品です。

    キャラ設定は大人気作品「薬屋のひとりごと」から。
    後宮という狭い世界が舞台なので多少は似てしまうのは仕方がないにしても、
    ・主人公は不本意ながら後宮に来て寵妃の侍女になる
    ・普段はやる気がない変人だが医学知識豊富で検屍が絡むとやる気を出す
    ・あだ名は老猫(薬屋主人公の名前は猫猫)
    ・捜査の相棒は美貌の宦官
    と、ここまで似てるのはちょっとどうかと…?

    そして、全4話のうち2話は「宋の検屍官」という20年以上前に刊行された乱歩賞作家作品と酷似したトリックを使われています。
    宋時代に書かれた洗冤集録を題材に書かれている作品なので、同じ資料を参考にしたのなら似ても仕方がないのかも知れませんが、ここまで似るか?というところ。
    妊婦の死因が髪で隠された頭部に打ち込まれた熱した釘であることと、撲殺された被害者が実は毒殺だったという2話です。
    ミステリーの肝であるトリック部分を他作品からの拝借で済ませてしまうのはどうなんでしょうか。残り2話もなにかから引用したのでは?と思ってしまいます。

    新人のデビュー作、受賞作品であるのなら仕方がないのかな?と思う部分もありますが、
    何年も前に既にデビューしていて何冊も出している人が、大賞&読者賞W受賞という華々しい謳い文句で刊行されていてこれですか。
    ご本人の作家としての良心と矜持を疑いますし、編集者の見る目のなさにもガッカリと致します。

    文章の丸写しでなければ盗作とは呼べないといっても、心証は最悪ですよね。

  • 後宮もので検死官。
    しかも出世に全く興味おない女官がその検死官という意外性。
    魑魅魍魎、呪いが蔓延っていてもおかしくないそんな後宮で(実際そんな噂で後宮内は混沌と化している)本格推理ものと称してもおかしくない骨太ミステリという。
    これも意外。
    この意外性が目新しく、ミステリとしても本当に謎解きが楽しい話で非常に面白かった。
    謎解きのために、女官も、そして彼女の相方というべき宦官も体を張る羽目にはなるが。
    二人そろって融通が利かないんだよなあ。
    そこが愛すべきところでもある。

    感覚としては後宮版『科捜研の女』として読んだ。
    謎解きのための調査が本当に本格的なのである。
    また一度解決したかに思えた事件も後の再調査で話がひっくり返ることも。
    大どんでん返しとまでは言わないが、わくわくできる展開である。
    連続ドラマのように次々起きる事件を解決していく検死官と宦官のコンビの活躍が本当に(不謹慎ながら)楽しい作品だった。
    そんな中でも着実に距離が縮まっていく二人の関係も。
    特に彼女の考え方が無実の罪で宦官にされた彼の心の救いになった点は大きい。
    彼女は自分の信念に真っ直ぐ進んでいるだけではあるけれども、ゆえに宦官という身分に捕らわれていないところが救いになっている。
    だから最初はお役目のためとはいえ、あれだけ女性を転がしてきた彼が容易に彼女に転がるという。
    終盤の彼は寧ろヒロインのようにも思えた。
    彼女の方が逞しいしなあ。

    ミステリとしてもキャラものとしても本当に面白い作品だったので、これは是非シリーズ化してほしい作品。
    そんなに後宮で殺人事件は起きて欲しくないが、でも面白かったからなあ。
    続刊、お待ちしております。

  • 医学が発達していない時代の検屍の方法は興味深かった。

    桃花、延明は魅力的な主人公だと思うけど、続編に期待。

  • 大光帝国の後宮は騒ぎに揺れていた。謀殺されたと噂される妃嬪の棺から赤子の遺体が見つかったのだ。
    皇后の命で騒動の沈静化に乗り出した美貌の宦官・延明の目にとまったのは、幽鬼騒ぎにも動じず居眠りしてばかりの侍女・桃花。彼女には検死の心得があった。
    検屍の手捌きもさることながら、宦官への差別や苦しみへのフォーカスも独特。次作も読もう。

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著者プロフィール

福島県在住。「ようこそ仙界! 鳥界山白絵巻」で第13回角川ビーンズ小説大賞〈読者賞〉を受賞してデビュー。「後宮の検屍妃」で第6回角川文庫キャラクター小説大賞〈大賞〉〈読者賞〉をダブル受賞。

「2023年 『後宮の検屍女官5』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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