あわのまにまに

著者 :
  • KADOKAWA
3.38
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本棚登録 : 1102
感想 : 67
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  • Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041121566

作品紹介・あらすじ

「好きな人とずっといっしょにいるために」、あのとき、あの人は何をした? 
2029年から1979年まで10年刻みでさかのぼりながら明かされる、ある家族たちをとりまく真実。

あの時代、確かにそうやって、わたしたちは生きていた。
隠されていた「わたしたちの秘密」を理解したとき、あなたは平常心でいられるか。

『余命一年、男をかう』で第28回島清恋愛文学賞を受賞した著者が放つ、生き方、愛、家族をめぐる、「ふつう」を揺らがせる逆クロニクル・サスペンス。


〈全6章〉
1 二〇二九年のごみ屋敷
2 二〇一九年のクルーズ船
3 二〇〇九年のロシアンルーレット
4 一九九九年の海の家
5 一九八九年のお葬式
6 一九七九年の子どもたち

感想・レビュー・書評

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  • 吉川トリコさん最新作。
    ホンタメでも紹介されていて気になっていた作品。

    ある家族の歴史を2029年から1979年まで10年刻みで各章毎に遡っていく。概略をまとめると、普通の家族小説かなと思うが、この家族、とにかく秘密が多くて、複雑で、ぶっ飛んでいる。

    例えるなら、平安時代の源氏物語や、昔の中国の皇室なんかの現代版(含む異性愛)という感じかな…?

    私は2章に入った段階で人物相関図がわからずパニック状態。我慢できず、最終章から巻き戻しスタイルで読了。
    巻頭に家系図があるけれど、参考にできるのは1章だけかな。家系図なんて、見せかけに過ぎないなと思わされる。一方で、家族は血縁なんて関係ないと思わせる力がこの作品にはあり、とても不思議な感覚になった。

    ------------------------------------
    以下かなりネタバレ要注意
    紺ちゃんと美幸の関係(一見仲良さそうにみえて、互いに腹の中で抱えている感情が違う、女性同士の関係ならではの複雑さ)、いのりに対する杏一郎の恋心(彼らは異母兄妹という複雑さ)、いのりと操の関係(しっかりものの妹から見た自由奔放な姉、しかも異父姉妹という複雑さ)、夫と息子の恋仲を知った上で、息子との間に娘を作った(?)いのりの複雑な感情、その複雑な家族関係を外から見守る弥生さんの心境…。
    どこを切り取っても簡単には飲み込めない複雑さがあり、相関図を頭に描きつつ、登場人物たちの感情も想像しつつと、とても読み応えがあった。

    これまで吉川トリコさんの作品はいくつか読んで来たけれど、本作はこれまでのどの作品とも違う新鮮さがあり、また一段好きになった。まだ読んでいない過去作も手を伸ばして見たい。

  • 時を遡る連作集『あわのまにまに』 少しずつ明かされていく、ある家族の風景とは | ananニュース – マガジンハウス
    https://ananweb.jp/news/472037/

    二度読み必至の吉川トリコ最新小説『あわのまにまに』 TBS系列「王様のブランチ」BOOKコーナーで特集決定! | カドブン(2023年02月22日)
    https://kadobun.jp/news/press-release/entry-47790.html

    home - murasakiyurie
    https://murasakiyurie.jimdofree.com/

    吉川トリコ『あわのまにまに』特設サイト | カドブン
    https://kadobun.jp/special/yoshikawa-toriko/awanomanimani/

    「あわのまにまに」 吉川 トリコ[文芸書] - KADOKAWA
    https://www.kadokawa.co.jp/product/322109000581/

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      当たり前ってなんだろう?「“ふつう”を問い直す小説5選」 | カドブン
      https://kadobun.jp/feature/book_co...
      当たり前ってなんだろう?「“ふつう”を問い直す小説5選」 | カドブン
      https://kadobun.jp/feature/book_concierge/entry-47966.html
      2023/03/27
    • 猫丸(nyancomaru)さん
      吉川トリコさん「あわのまにまに」 ある一族の恋愛模様に描かれた、結婚・出産・性自認の半世紀|好書好日(2023.03.19)
      https:...
      吉川トリコさん「あわのまにまに」 ある一族の恋愛模様に描かれた、結婚・出産・性自認の半世紀|好書好日(2023.03.19)
      https://book.asahi.com/article/14862429
      2023/06/16
  • 10年ごとに遡る、家族の話。
    章ごとに話し手を変え、家族の秘密がそっと明かされる。
    それぞれはっきりした結末があるわけではないので、それで、どうなるの?!次の展開教えて!と、白黒つけたい私には章ごとにぼんやり感が残るのがイマイチ。
    でも、そこがこの本の良さであることは明白。

    登場人物がみんな残酷。
    そこまでして家族として集団を構成する意味ってなんだろう?
    どの時代も大人に悪い意味で影響される子供が気の毒だった。

  • 香水瓶
    タバコ
    海の家
    妊娠


    2029年から10年ごとに遡って描かれる家族の秘密。
    ミステリーかと思って読んでましたが、ちょっと色合いが違ってました。
    どことなく匂いを感じる作品
    図書館本

  • 2029年から始まり1章毎に10年さかのぼって物語が展開されていく。
    だんだんと不穏な空気になっていき、「どういうこと??」って思って、
    どんどんピースがつながっていき、最後に「あー」となる。
    とにかく人間関係が複雑で頭の中がこんがらがる。

    なかなか不思議な読書体験だった。

  • ある2家族の3世代の物語
    2029、2019、2009、1999、1989、1979年
    物語は過去へとさかのぼる
    だんだんと明かされていく家族の秘密

    始めは何が何だか分からないが
    だんだんとピースが繋がって
    不思議な読書感
    後味が深く残る作品
    良い作品なのだと思う
    (ただ好き嫌いは分かれる作品)

    読み返すなら後ろの章から前と読むと
    さらに物語の解釈が深まりそう
    (残念ながら図書館で借りて
    予約待ち図書なので今回は読み直せず残念)

  • 構成がとても面白い。
    ある家族の流れを次第に遡っていく。
    後半で、前半を時々めくってこういうことかと納得するのが、謎解き気分にもなって楽しめたのだけど、書かれていることはなかなかにしんどい。
    家族であることと個人であること、その間で押し潰されたり、跳ね返したり。
    愛情とは残酷なものですわ…。

  • 複雑な人間関係が少しずつ解き明かされていく。読み終わって家系図を書いて頭を整理しいろいろ考えた。もう一度最初から読むと新しい発見がたくさん。指輪の餃子ロシアンルーレットは改めて読み直すと悲しい場面だったんだな。最初に読んだときはいのりの気持ちがわからず、杏一郎に対してひどいことしてると思ったけど、いのりが杏一郎との本当の関係に薄々気がついていたとしたら切ない。
    人間関係は複雑だけど、登場人物たちのたくましさ、しなやかさを感じて読後感はいい。
    畑の弥生さんはクルーズで出会ったあの女性だったんだな。ジンさんも人生で二度にわたりこの不思議な家族と接している。他にも見落としていることがありそう

  • これはすごい。ある家族の3世代渡る物語を10年を区切りとして逆行していくサスペンス調の連作集。遡っていくので前の話で出てきた結果の真相が次の話で分かる構成なのだが、なにせ10年のスパンなので真相も曖昧で答えが出ているようで出ていない。ある一部分だけを切り取っているだけで後は読者の判断に任せてあるように書いてある。その切り取り方が上手い。白眉は「2009年のロシアンルーレット」全体の主役である姉妹を妹側からの視点で描いているのだが、女性の心情が巧みに描かれている。それが深く暗く重たい。うーむ唸らされる。

  • 著者初読み。
    世代を巻き戻していく物語、今までも読んできたけれど良い意味で異質である。
    読み進める毎に謎をつまびらかにするのではなく、さらに疑問が湧いていき、想像力を掻き立てる。

    そうなのだ、自分の気持ちも含めて、人の行動は不可解なのである。真実など本の一握り、ようやく少しわかってきた歳に差し掛かってきたと実感させられた。

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著者プロフィール

1977年生まれ。2004年「ねむりひめ」で<女による女のためのR-18文学賞>第三回大賞および読者賞を受賞、同作収録の『しゃぼん』でデビュー。著書に『グッモーエビアン!』『戦場のガールズライフ』『ミドリのミ』『ずっと名古屋』『マリー・アントワネットの日記 Rose』『女優の娘』『夢で逢えたら』『あわのまにまに』など多数。2022年『余命一年、男をかう』で第28回島清恋愛文学賞を受賞。エッセイ『おんなのじかん』所収「流産あるあるすごく言いたい」で第1回PEPジャーナリズム大賞2021オピニオン部門受賞。

「2023年 『コンビニエンス・ラブ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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