棘の家

著者 :
  • KADOKAWA
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感想 : 105
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  • Amazon.co.jp ・本 (304ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041122587

作品紹介・あらすじ

クラスで起きているいじめについて相談を受けた中学教師の穂刈。
学校の校長が我が校にいじめはないと言い張っているため、その証拠の写真を消すように生徒に命じた。
そんなある日、穂刈の小学校六年生の娘が学校の窓から飛び降りた。けがを負った娘の由佳。飛び降りの理由もまたい
じめだった。しかし、学校はやはりいじめを認めない。
いじめを認めたくない教師から、いじめを認めさせたい親に立場が一転した穂刈。
父親として穂刈は、娘のいじめについて認めない学校に業を煮やし加害者児童の名前を告発。
そんな中、加害者児童が死体となって発見。穂刈の息子が容疑者として警察に連行される。
子供を亡くした加害者児童の親に「殺人犯の親」と罵られた穂刈は──。

感想・レビュー・書評

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  • 「いじめ」って学校にとっては不祥事なのか。
    妙に納得した。
    いじめの発覚した学校ではこんなやりとりが実際に行われているのかな、と思った。

    それにしてもお母さん、良妻賢母だと思ってたのに何やってんだ。

  • 子供の間で蔓延っている“イジメ”問題。
    それを、自分の保身のために、隠蔽する学校関係者。
    一度、事件が起こると“他人の不幸は蜜の味”とばかり飛びつく、マスコミ。
    その上、無責任な、ブログにSNS、画像投稿サイトに、巨大掲示板。

    ある日、穂刈は、娘がイジメを受け、それを苦に、学校の教室から飛び降り、自殺未遂をしたと、知らされる。
    中学教師でもある、穂刈は、教師と父親の立場で、揺れ動く。

    一旦途中で、読むのを止めると、続きを読むのが、苦痛になるような、心が澱むような内容だった。

  • いじめをテーマにした小説は、けっこうあるけれど中山七里さんは、初じゃないかなぁと。

    中学教師が、クラスのいじめの相談を受けるが、深く聞くこともせずに穏便に済ます。
    数日後に、娘がいじめを苦にして自殺を図るという…

    教育者としての矜持と父親としての責任のあいだで揺れ動く感情は妻にとってはイライラMAX。

    いじめの首謀者である少女の名前が、ネットで晒されると…
    そこから二転三転…
    「悪意」を見事なくらいみせてくれる。

    ラストも普通ではない工夫がされていて夢中で読破。

  • ❇︎
    当たり前のように常にそこにあって
    平穏と安寧に包まれた家庭。

    その中で平々凡々と年を重ねることを
    疑いもしなかった主人公(教師の穂刈)が
    娘の自殺未遂をきっかけに自分自身と
    家族の姿を見つめ直してゆく物語。

    主人公を通して、自分の目に見えている
    家族一人ひとりの姿はほんの一面にすぎない。
    いかに自分という偏ったフィルターから
    家族という存在を見ているかを思い知らされた
    気がします。

    1.穏やかな翠
    2.棘のある葉
    3.毒を持つ嚢
    4.不穏の茎
    5.そして根は残る

    家を棘のある植物に見立てているところに
    妙に納得ができました。

    触れなければわからないけれど、一人ひとりに
    別々の棘や毒がある。
    その毒で大怪我をすることもあれば、毒が薬に
    なることもある。
    棘や毒の悪い面ばかりが気になるけれど、
    それらが深い意味を持っているんだと
    そんな風にも感じました。

    ある意味、やや悲しい部分もありますが、
    多少バットエンドを含んでいても再生への
    淡い芽も感じ取りました。












  • 中学教師の穂刈(父)。
    クラス内のいじめを黙殺しようとしている。
    そんな折、小学生の娘が校舎から転落。どうやらいじめられていたらしい。

    元教師の妻と、中学生の兄。
    父親なのか教師なのかと家族から問われ、自問する日々。

    そしていじめの主犯格が殺されてしまい、なんと息子か参考人として警察に連れていかれてしまう。
    穂刈は父として家族を守れるのか?!

    という展開。
    まさかあそこまで穂刈家が壊れかけていたなんてね。
    兄は立派だったけど、母よ...安直でお手軽すぎないか。
    これから穂刈家はどうなるんだろう。
    完全に分解するか、無理やり円満な家族を演じるかのどちらかでは。

  • 自分の弱さや卑怯な深意、時にそれを正義か不義かも思い違えるのが人間。
    善意も悪意も渦巻く複雑な人間心理がよく描かれているなと思った。

    最初は煮え切らない父親にイラッとしたけど全てが明らかになって見えていなかった家族の本当が見えた後の父親を信じたい。

    そして「まだ間に合う、お互いを思っているうちは」この刑事の言葉を信じたい。

    中山先生の本に出てくる刑事が私は好きなんだなと思う。

  • いじめの被害者と加害者。
    その立場が変わることで、周りの目が一気に変わるところが恐ろしい。
    ほとんどの登場人物(駿君以外)の性格が好みではないからか、なんとなく陰鬱な気分で読んだ。
    でも、内容自体には引きこまれて一気読みした。

  • 追う者と追われる者、加害者と被害者が入れ替わる構造の作品は、中山先生の作品だけでも3作目かな。3作に共通しているのは無責任な大衆とSNSの怖ろしさ。

  • 蕁麻の表題の方が自分的にはしっくりとくるような気がした。人の心に巣喰う闇がどんどんと表在化してくる後半はなんともやりきれない気持ちでいっぱいに。様々な立場で役割を全うすることや何を優先するのか、自分が立たされた状況で一変することの怖さをひしひしと感じた。犯人は予測できなかったなぁ。棘からの毒は侮れない。人は身勝手であるものなのか、自分で矜持を持っていないと壊れてしまいそう。正義感とは、なんなのだろう。

  • 中学校で教師として働く穂苅。
    クラス内のちょっとしたイジメに悩んでいた時、自分の小学生の娘が飛び降り自殺を図る。
    原因はイジメ。
    イジメられていた子を守る為に、逆にターゲットにされて、衝動的に校舎から飛び降りた。
    一命を取り留めたが、今度はイジメの加害者である少女が公園で遺体を遺棄されて見つかる。
    イジメがさらなる不幸を呼ぶ負の連鎖。
    殺人容疑で逮捕されたのは穂苅の長男。妹の仇を討つため、加害者である少女を殺したと疑われた。
    しつようなマスコミの追い回しなど、最近違う作家さんの作品で読んだ内容とかなりオーバーラップするが、何の作品なのか、思い出せなかった。
    今作の登場人物も、どこか淡々としていて、人間らしさが感じられず、読んでいて苦痛を感じる。
    学校を休職することになった穂苅が真犯人に迫るが、そこまで驚きもなく、何かまとまりのないままエンディングを迎えてしまった。そんな感じが否めない。

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著者プロフィール

1961年岐阜県生まれ。『さよならドビュッシー』で第8回「このミステリーがすごい!」大賞を受賞し、2010年にデビュー。2011年刊行の『贖罪の奏鳴曲(ルビ:ソナタ)』が各誌紙で話題になる。本作は『贖罪の奏鳴曲(ソナタ)』『追憶の夜想曲(ノクターン)』『恩讐の鎮魂曲(レクイエム)』『悪徳の輪舞曲(ロンド)』から続く「御子柴弁護士」シリーズの第5作目。本シリーズは「悪魔の弁護人・御子柴礼司~贖罪の奏鳴曲~(ソナタ)」としてドラマ化。他著に『銀齢探偵社 静おばあちゃんと要介護探偵2』『能面検事の奮迅』『鑑定人 氏家京太郎』『人面島』『棘の家』『ヒポクラテスの悔恨』『嗤う淑女二人』『作家刑事毒島の嘲笑』『護られなかった者たちへ』など多数ある。


「2023年 『復讐の協奏曲』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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