北の詩人 新装版 (角川文庫)

著者 :
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本棚登録 : 24
感想 : 4
  • Amazon.co.jp ・本 (400ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041123324

作品紹介・あらすじ

第二次世界大戦後間もなくの朝鮮半島。詩人・林和は、かつて祖国を裏切り、日本警察の弾圧に屈服して日本帝国主義の植民地政策に加担したという暗い過去があった。その過去をアメリカ軍諜報機関は利用し、林和をスパイとして操ろうとする。謀略の罠に捕らわれていく林和。弾圧から逃れ北朝鮮に逃亡するも、朝鮮の北にも南にも理解されることはなく、ついにはアメリカのスパイとして軍事裁判で処刑されてしまう。イデオロギーと政治権力に押しつぶされ、現在でも南北の朝鮮文学史から完全に抹殺されている悲劇のプロレタリア詩人を描いたノンフィクション・ノベル。

感想・レビュー・書評

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  • 私が読んだのは1983年出版のもの。

    舞台は解放直後のソウル。主人公は左翼の大物詩人、林和。彼はのちに北朝鮮に渡り、要職につくがアメリカのスパイだったとして処刑される実在の人物である。周りを固める登場人物も実在の人物だ。

    北朝鮮での「裁判」での「証言」と「判決」から、南での林和の行動を創造して組み立てたものであるため、残念ながら北朝鮮の「判決」が信用に値しないものである以上、やはりこれは「小説」というしかない。しかし、さすが松本清張である。引き込まれる。

    身体の弱い主人公は日帝時代、すでに「転向」していた。拷問を恐れてのことであったが、それを自分の病のせいにしたのだ。解放後も彼は左翼の人々に尊敬される詩人であった。誰も転向のことは知らない。
    そんな彼のもとにアメリカの情報機関の手が伸びる。アメリカは主人公の「転向書」を持っている。
    投獄を恐れ、生に執着してアメリカのスパイとして絡められていきつつも、左翼詩人としての名誉を捨てたくないために自分の行動を正当化しようと悩む生々しい人間の姿が描き出される。

  • 日本の敗戦から朝鮮半島の分断。米ソの狭間で独立を目指す朝鮮人の活動家。戦時中は転向、その経歴を握られ米のスパイとなった詩人を主役とした異色の小説。

    日本の敗戦から朝鮮戦争までの朝鮮半島情勢は日本ではあまり話題になっていないように思う。エアポケット的な部分をあの
    松本清張が小説にしていたことを知りさっそく購読。

    スリーパーとなった男の不安。それは小さな嘘を重ね破滅に進む清張ドラマの主役そのもの。

    結果として日本の敗戦のタイミングが、南北分断を招いている。祖国が分断された悲しみは日本人には理解できない、負の部分だろう。

    金日成と李承晩による南北別れた独立の少し前を描いた傑作でした。
    やはり清張ドラマは奥が深い。

  • 史実を基にしたフィクション歴史小説。何度も挫折しかけながら最後まで読み通したが、よく理解できない……。

  • 2

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著者プロフィール

松本清張
1909年、福岡県小倉(現北九州市)に生まれる。51年、《週刊朝日》主催の〈百万人の小説〉で「西郷札」が三等に入選。53年「或る『小倉日記』伝」で第28回芥川賞を受賞。55年、短篇「張込み」で推理小説に進出し、56年に作家専業となる。58年に刊行した初の推理長篇『点と線』は大ベストセラーになり、一大推理小説ブームを引き起こす立役者のひとりとなった。70年『昭和史発掘』で第18回菊池寛賞、90年朝日賞受賞。92年死去。

「2022年 『歴史をうがつ眼』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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