- Amazon.co.jp ・本 (336ページ)
- / ISBN・EAN: 9784041124406
作品紹介・あらすじ
両親と弟が鬼籍に入り、かつて花街だったという古い町並みにある町屋の実家に戻ってきた貴樹。貴樹が書斎として定めた部屋はかつて弟が使っていた部屋だった。何気なく、書棚に立てかけられた鏡をずらしてみると、柱と壁に深い隙間があった。そしてその向こうに芸妓のような三味線を抱えて座るはかなげな着物姿の人影が見えた。その女と弟の死には関係があるかもしれないと探すうちに、貴樹がその女を見ずにはいられなくなり――。(「芙蓉忌」より)
他、「関守」「まつとし聞かば」「魂やどりて」「水の声」「まさくに」の全6篇を収録。
解説は織守きょうや氏。 2019年、第10回 山田風太郎賞最終候補作。
感想・レビュー・書評
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隣家の女を盗み見してる間に魅せられ「芙蓉忌」
行きはよいよい、帰りはこわい「関守」
亡くなった猫が夜な夜な現れる「まつとし聞かば」
古家を弄るのが大好き女子の間違い「魂やどりて」
腐った水の臭いがし、鏡に子供の足が映り、次第近づいて来る「水の声」
屋根裏部屋に潜り込むとアレがいた「まさくに」
今回も六遍の怪異譚。営繕屋の尾端さんが出てくれば何とかなるんだけど‥‥。段々と家屋内の話ばかりではなくなっているから、厄介。どう営繕するのが最適解なのか、読者たるわたしにはわからない。
文庫本公式HPによれば、舞台はどうやら福沢諭吉旧宅があり、著者の故郷でもある大分県中津市中津藩城下町辺りである。HPは場所まで特定していて、湧く湧くと行ってみたくなる。
遠くに見える隣家の窓の隙間に妖しい何かを覗くことぐらいは、誰しも覚えあるのではないか。
薄暮時の小径は異世界への扉であるという。宜なる哉。
小動物は時々怖い。わたしの家の屋根裏で鼠にしてはあまりにも重い音がした事もあるし、押入の奥では訝し気な音が屡々する。
素人のリフォームは顔を蹙め眉を顰めるものもあるだろう。
彼等は祟ろうというよりか、言伝の為に出て来ることの方が多いのかもしれない。
狼狽え気圧され蟀谷痛み顔が強張り口噤み痼りが残り、二進も三進もいかず尾端を呼んで板を捲り検めれば、可怪しなものたちは宥められ怪異は納り、人は生き存える。
今回も楽しかった。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
「営繕かるかや怪異譚」シリーズ第二弾。
1話目からゾゾっと。
1作目より怖かったな〜。
前作は家そのものに関わる怪異だったけど、今作では人にも関係する怪異だった。
今回も祓うのではなく、折り合いをつけるお話。
ただ尾端さんの出番が短かくて残念。
特に印象に残ったのは、「芙蓉記」「まつとし聞かば」。
芙蓉記は1番怖かった。
まつとし聞かばは最後あたたかい気持ちになった。
他の話も前作よりインパクトあって、より好きでした!
その参も早く読も〜!
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'24年1月22日、Amazon audibleで、聴き終えました。「かるかや」シリーズ、二作目。
基本的には、一作目と同じ、「ホッコリ」ホラーで、僕的にはとても好き。「まさくに」が、一番好きです。「魂やどりて」も、凄く良かった!幽霊(?)にも、色々種類があるんだなぁ、と…ちょっとジーンときました。
三作目まであるらしく…是非読みたいです! -
ホラーが苦手な人にでも魅力的なお話。
どちらかといえば雰囲気ホラー、そして哀しく優しい。そして想像されられる風景はとても美しいです。
猫好きとしては「まつとし聞かば」は、温かい気持ちで読み終えた一編。 -
営繕かるかや怪異譚の第二作目。
「営繕かるかや」尾端が介入するのが前作より少なめな感じがして、短編の主な人物の人間的な部分が増えたかと。
怪異がちょっとオドロオドロしくなってる話もあるが、やはり尾端が来てくれたときの安心感がたまらない。
今作も怪異を理解したり、折り合いをつけて暮らしてゆく話は良きでした。 -
1冊目読み終わって
2冊目も完読
短編集だから
ちょっとずつ読めていい
ちゃんと
ゾワっと怖い
面白いのが
霊媒師とか除霊とかって
話しじゃなくて
営繕屋が解決する所
空間把握能力が
極めて低い私は
間取りを想像するのが下手くそで
時間がかかるけど
なんとか
3冊目も読み終えたい
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シリーズ第2弾。
「解説」が私の思ったことを実に的確に書いてくれていて、レビューに書ける事がない。
強いて言えば、間取り図を載せてほしい。これで随分わかりやすくなる部分もあるかも。
古い城下町が舞台。
それぞれの短編の舞台が同じ街なのかどうかは分からないけれど・・・
歴史ある街の、古民家に住まう人たちが遭遇した怪異のお話、6編。
怪異。常識ではありえない現象。なぜそんな事が起きるのか。
取り込まれるように自ら近づいてしまう人あり、生活もままならぬほど絶望してしまう人もあり。
異なるものとの距離の取り方はなかなか難しい。
そこを、第三者的に公平な目で見て、問題を解決してくれるのが、尾端(おばた)
霊能力があるわけではなく、怪異を調伏したりはしない。
しかし、古の物語への知識は豊富。そこが鍵かな。
家の「障り(さわり)」を修繕することによって、古い住民と現在の住民のどちらも気持ちよく過ごせるようにする。
『芙蓉忌』
空き家になっていた実家に帰ってきた貴樹(たかき)
弟の自殺の原因とは・・・
『関守』
「通りゃんせ」が怖い佐代。
幼時のトラウマは意外な形で原因がわかる
『まつとし聞かば』
シングルファザーの俊弘(としひろ)は、息子の航(わたる)が可愛がっていた猫の小春が、交通事故で死んでしまったことを言い出せないでいた。
『魂やどりて』
すぐに結果を求めたがる人が、奇抜な方法を思いつく、それは否定しない。
けれど、他人がコツコツと時間をかけて行ったことをないがしろにしてはいけない。
『水の声』
子の霊は、河童のイメージか。
警察が来るのも、シリーズでは珍しい。
『まさくに』
ビジュアル的には一番怖いのだけれど、いい話であり、ちょっと微笑ましいオチではあった。 -
癒し系ホラー。営繕屋さん、本作でも頼もしい。前作よりミステリー色が強まった感じ。おぞましい怪異の意外な正体に驚かされる。「水の声」「まさくに」はインパクトがあった。第三弾が出ればまた読みたい。
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家にいる不可思議なものは何だろう?
この家に住んでいた人が心を残していたのは何だろう。
営繕屋の尾端が解き明かす。