- Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
- / ISBN・EAN: 9784041129159
作品紹介・あらすじ
新聞にいっせいに掲載された三つの死亡広告。うちの一人、宝石王古家万造氏が何者かに殺害された。光る無気味な目や大きくさけた口。復讐の怨念に燃える青髪鬼を、三津木俊助は捕らえることができるのか?
感想・レビュー・書評
-
横溝作品に出てくる育ちがいい女の子は口調が可愛くて好き。でも金田一先生がいなくて物足りない。
詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
横溝先生が描いた少年少女が活躍するジュブナイルシリーズ復刊作品。生きている人間の死亡広告が出されたことに端を発する大事件を描いた表題作の中編。その他には少女たちが主人公として語られる短編3作が収録されている。
『青髪鬼』(せいはつき)
新聞に掲載された生きている三人の死亡広告!このうちの一人、宝石王・古家(ふるや)万造が何者かに殺されかけた。青髪鬼と名乗り、復讐を実行する怪人の正体とは?!新米記者・御子柴進が三津木俊助記者と挑む難事件の真相やいかに?!
生きている人の死亡広告という謎から一瞬で引き込まれた。不気味な開幕から青髪鬼という怪人が現れ、謎が謎を呼ぶ展開の連続!さらには白蝋(びゃくろう)仮面なる怪盗まで登場し、三つ巴の争いになだれ込む!変装が得意な怪盗って強キャラだよなあ(笑) でも、なかなかお茶目なところもあって憎めない。
青髪鬼たちと事件の謎を追いかけ、巻き込まれた少女・月丘ひとみを救うべく行動する進の勇気はいつもながらカッコいい。怪人に怪盗!大宝窟!暗号!誕生日に届くダイヤ!海の底まで続く鍾乳洞!冒険心をくすぐるアイテム目白押し!まさしくジュブナイル要素てんこ盛りという作品。むしろ、いろいろありすぎてここまでしなくてもいいってほど(笑)
個人的に好きな台詞で、ひとみが水攻めにあった時に「ああ、それじゃあたしたち、ここで水におぼれて死ぬの? いやだ、いやだ。どぶねずみみたいになって死ぬのいやだ」の、どぶねずみをたとえに出すところがシュールで笑ってしまった。
『廃屋の少女』
家に忍び込んだ泥棒と出くわした少女・御子柴千晶。彼女が泥棒に手を染めた青年の心を癒したことで、その後に巻き起こる事件が変わっていく──。
「やさしい両親からいつくしまれてきた千晶には、世のなかにはおそろしいものとてはなに一つない。人はみなたがいにしんせつにしあわなければならぬ、と教えられてきた千晶には、泥棒さえもこわくなかった。」
とはいえ、12歳とは思えぬ千晶の器の大きさよ。24ページほどの短編。いろいろすっ飛ばしてご都合主義なところは否めないものの、この一文は心に沁みる。
『バラの呪い』
S学校の寄宿舎で起きた幽霊騒ぎ。それは春に病死した妙子ではないかという噂になっていた。彼女と親友だった榊鏡子は妙子の部屋の前で死んだはずの彼女の声を聞くが──。さらに届けられる復讐のメッセージの意味とは?!
ホラー・サスペンス色が濃い短編。女学校の寄宿舎、親友の死、バラの記憶。過去を手繰り寄せるほどに、友情がゆえに口外できない秘密へと至るのが切ない。幽霊の噂がさざ波のように広まっていくほの暗い雰囲気がよかった。
『真夜中の口笛』
昆虫博士の叔父・片桐敏郎と温泉旅館へ静養に来ていた益美。そこで夜更けに怪しげな物音と、口笛の音を聞く。その口笛を聞いた者は死ぬ──それによって家族をみんな亡くしてきた益美ははたして助かるのか?!
益美が置かれた境遇もさることながら、安全かと思われた温泉旅館で夜に謎の物音と口笛は怖すぎる。同じく宿泊に来ていた同年代の畔柳雄策に相談し、二人は真相を追うことに。「ルルルルル」の口笛の表現は北の国からを思い出す。仕掛けはミステリ好きならニヤリとできるものだけど、状況的にバレそうだし、それってほんとに可能なの?!ってツッコむのは野暮かなあ。 -
2022/10/30読了