准教授・高槻彰良の推察9 境界に立つもの (角川文庫)

著者 :
  • KADOKAWA
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  • Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041129517

作品紹介・あらすじ

4月。尚哉は3年生に進級し、友人の難波と共に晴れて高槻ゼミの一員となった。
尚哉と難波は、初回ゼミのあと、数少ない男子学生どうし5人で仲良くなり、学期中に行われるグループでの研究発表を一緒にやろうと話す。
動画サイトで話題の「幽霊トンネル」を題材にしようと取材に赴くが、帰り際、尚哉は耳元で「どうして」という女の声を聞き――!?(「第一章 トンネルの中には」)

高槻が講義で、口裂け女やかまいたちといった「鎌」が絡む怪異について話したところ、大学の演劇サークルの代表から相談が。
先日、夜道を一緒に歩いていた次の舞台の主演女優の髪が、まるでかまいたちの仕業かのように、ばっさりと切られてしまったのだという。
高槻と尚哉は調査のため、サークルを訪れる。部員に一通り聞き込みをし、いざ帰ろうとした瞬間、高槻の従弟・優斗から着信が。なんと、高槻の父が刺され、病院に運ばれたという。
一緒に病院へ行こうと言う優斗に、高槻は「僕は行かない方がいいと思う」と呟き……。(「第二章 黒髪の女」)

高槻から「難波くんと何かあった?」と聞かれた尚哉。実はある理由で、難波との関係がぎくしゃくしているのだ。
悶々とする尚哉に高槻は「気分転換に旅行に行こう」と提案。運転免許を取り終わった尚哉の練習も兼ねて、桜を見に箱根に行こうという。
しかし宿の従業員から、桜の隠れ名所である、旅館の向かいにある山には鬼が出る、と言われ――?(「第三章 桜の鬼」)

己の「耳」の、己の「過去」の謎と向き合うふたりに、異界の魔の手が迫る――?
高槻をマークしている警視庁捜査一課・異質事件捜査係(通称:異捜)の動きも不穏さを増し……!?
高槻と尚哉、それぞれに試練が訪れる、目が離せないシリーズ第9弾!


イラスト/鈴木次郎

感想・レビュー・書評

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  • 気づいたらもう9弾。
    尚哉は3年生になり、高槻ゼミの一員となったところから話が進みます。
    きちんと季節が進んでいるんですね。

    異捜も徐々に近づいてきていて、やや不穏な感じがします。
    難波くんは本当にいい奴でよかった。10巻も楽しみです。

  • シリーズ9の一冊。

    今作も良かった、濃かった。

    トンネル、かまいたち、サトリの怪異、旅行、友情、extraと盛りだくさん。
    トンネルが境界という解釈には納得感。

    箱根旅行は笑いと桜と怪異と…楽しかったな。
    みんなそれぞれちょっとした壁にぶち当たっていたけれど、やっぱりこの絆なら何があっても大丈夫と信じられちゃう。

    アキラ先生を一人にしたくない尚哉のサポートも良き、難波くんもほんと良き。

    尚哉の進路も固まりつつあるかな…と思いきや、まさかのあの人に目をつけられていたとは。
    "もう一人"もやっぱり謎。
    善か悪か、境界ゆらゆら。

  • 2023年3月角川文庫刊。書き下ろし。シリーズ9作目。トンネルの中には、黒髪の女、桜の鬼、それはかつての日の話Ⅲ、の4つの連作短編。異捜の山路に誘われた深町の話も興味深いが、友人の難波に異能力感づかれた話も面白い。物語りは佳境にはいった感がある。どこに着地するのか?次回が楽しみ。

  • 高槻と深町それぞれに試練が訪れる?!民俗学ミステリ第9弾!
    深町も大学3年生になり、難波とともに高槻ゼミの一員として活動することに!しかもゼミは20人近くの大所帯!怪異の謎に加えて、深町は人波を乗り切れるのか?!

    幽霊トンネル、口裂け女、かまいたち、サトリなどがテーマになる9巻。怪談の歴史を絡めたミステリは安定の面白さがある。その一方で、高槻は家族と再会、深町は耳の秘密がバレる?!という節目もあり、ここから先の展開が楽しみになる一冊。気になってたあの人もついに登場?!

    以下、各話の感想を。

    『第一章 トンネルの中には』
    深町は難波も含めた高槻ゼミの男子5人でグループ発表をすることになった。動画サイトで話題の「幽霊トンネル」を題材に選んで調査へ向かう。その場所は昨年6月に女性が刺殺された現場だった。昼間は異常なさそうだったが、帰り際に「どうして」という女の声を聞き──。

    よくあるトンネルの怪談がどんな歴史を潜り抜けてきたのか。高槻先生の講義内容が相変わらず面白い。今の形の怪談になった由来がそこだとは知らなかった。そして、メディアの役割も大きいよね。昔は心霊番組が多かったし、ホラー映画なども増えてきて、怪談に対する向き合い方が一変してしまったんだなと。そういう社会だからこそ、超えてはならない倫理という境界が必要なんだろうね。

    『第二章 黒髪の女』
    演劇サークル「エッグ」代表・堀田大智(ほっただいち)から、サークル内で起きた髪が切られる事件を相談された高槻。主演女優・月村まどかの髪が、強風によって切断されたという。さらに、高槻の父・智彰が誰もいないところで腹を刺されたという報せも入り──。

    口裂け女の解説から派生して、凶器として持つ鎌の呪具的な意味合い、かまいたちのことなども語られて興味深かった。かまいたちや風切鎌の話は『かまいたちの夜2』で出たところだ!ってウキウキしてた(2はかなり伝奇ホラー寄りのゲーム)。そこからの、まるでかまいたちが発生したかのような二つの不可解な事件。その謎もさることながら、高槻が家族と顔を合わせたシーンは、こちらの心臓も押し潰されそうな緊張感が伝わってきた。家が異界になってしまったとしても、深町や佐々倉との生活はまぎれもない日常なのだ。戻る場所はここにあると高槻が信じられるようになれたらいいな。

    『第三章 桜の鬼』
    深町の耳の秘密がバレてしまった?!その戸惑いを見抜いた高槻は、彼と佐々倉を誘って桜を見に行く計画を立てる。箱根まで桜を見に行く楽しい旅行だったはずが、旅館で山に人の心を読む鬼がいるという噂を聞いて雲行きが怪しくなり──。

    旅行へ行くと事件に巻き込まれる体質になりつつある高槻たち。人の心を読む鬼と自分を重ね合わせて、異界へと迷い込む深町にはハラハラした。嘘を聞き分ける能力については、さらなる揺さぶりが投げかけられる。だが、そんな深町を日常へと連れ戻してくれる人はすぐ傍にいるのだ。彼を窮地から助け出したやさしい嘘が素敵だった。自分が大切にしたいものを選ぶ勇気を彼は持っている。

    p.18
    怪異というのは、日常性からの逸脱だ。ゆえに、イレギュラーな行動によって引き起こされるものなのかもしれない。予定外の行動を取ったがために、留まるべき日常からはみ出していってしまうのだ。

    p.29
    「けれど、『境界』も『異界』も、固定されたものではありません。そのとき僕達が世界をどう見ているかで、たやすくそれは変化する。今この教室の中にいる僕達にとって、廊下に立つ人は『あちら側』の存在です。あの扉は『境界』ですね。でも、チャイムが鳴れば、僕達は皆、『あちら側』に出て行くんです。廊下に出てしまえば、誰もいなくなったこの教室は『異界』と化す。……だから結局は、立ち位置の問題でしかないのかもしれませんね。何を『異界』と見なし、どこを『境界』とするかというのは」

  • 尚哉は3年になり、高槻ゼミへ。難波君も倍率勝ち抜いて同じゼミへ。グループ発表などの必要から数少ない男子学生が集まって幽霊トンネルに現地取材しに行ったらなんと殺された女性らしき声が聞こえて…。
    二章は学内演劇サークルの代表が、高槻の授業でかまいたちの話を聞き、ゼミ室に相談に来る。主演女性の髪が突然何かに切られたと…。同時に高槻の父も何かに襲われる。いったい何が起こっているのか?
    最後はGWに箱根へ高槻、佐々倉と三人で旅行に行き、異界に近づいてしまい、異捜とも近づいてしまい、難波にもついに気付かれる…。おまけで高槻の大学時代のエピソード。
    うん、今回も大変面白かったです。異界と民俗学と現実の話のバランスがとても良い。続きが楽しみです。

  • 作中の時間軸と同じ、ちょうど桜の咲く時期に読めてよかった。
    深町くんもついに大学3年生。
    無事に高槻先生のゼミに入れた模様。
    自分は理系出身で、こういったゼミを経験していないので、具体的なゼミの内容まで踏み込んだ大学生活を見せてくれるリアリティさもありがたかった。
    先生の講義風景も変わらず入れてくれてたし。
    毎回先生の講義が楽しみで楽しみで。

    それでいて、異捜の人たちの登場頻度も上がっているから、現実との乖離もまたあるのだけれども。
    まさか異捜の「あの方」まで登場するとは思わなかった。
    (+あの先生も)

    今回はトンネルの幽霊に口裂け女やかまいたち、髪切り、そして鬼とサトリのお話。
    ちゃっかりいつもの3人で旅行もしているのだけれども、やっぱり怪異に巻き込まれるという。
    本物の遭遇率が本当に上がってますなあ。
    あちこちからスカウトのかかる深町くんの進路も気になるところです。

    番外編は高槻先生とある食堂とのご縁の話。
    これが本編で明かされた内容とも相俟って泣けました。
    高槻先生にとって、実家は「実家」ではないから。
    今回、先生が家族に会う山場シーンもあったので、それの救済の物語としても受け止めました。
    食堂の二人がまたいい人なのですよ。
    これからも、高槻先生の心の実家であり続けてほしいと思います。

  • 3年になり、高槻のゼミに入った深町。
    研究としての怪異という今までのスタンスを保ちつつ、別作品とのリンクも深まりオカルトファンタジー要素が強まる。
    深町異捜にスカウトされていたけど、彼の立場でフリーランス契約は保険や年金が損するのでは、と別の要素でやめたほうがいいと思ってしまった。
    そして難波はやっぱりいいやつ。一生の友達は付き合いの長さだけじゃないんだよ。

  • 自分の存在に揺らぐ二人に近づく、不穏と危険さ孕む新たな人物にハラハラしつつも、温かく包む優しい心にじわりと涙誘われた第9弾。
    とにもかくにもやっぱり難波くんの太陽のような眩しく弾ける明るさと、木漏れ日にも似た柔らかな心が癒し。ラストはほっこりじわじわ。
    少しづつ動きはあるけれど、まだまだ真相は謎のまま。この先待ち受ける危機がどうなるんだろうと思いつつも、最後には心からの笑顔であってほしいと願います。
    各事件に関しては第二章のお話が好き。ああいう危険で妖しさある魅力いっぱいのキャラ好きだなぁ。怖いので遠くで見るだけにしたいけど(笑)。

  • 面白かったー。
    あっという間に読み終えてしまった。
    難波くん最高。良いやつだ。
    あの人が怖すぎる。あんなふうに来られたら怖くて動けなくなってしまう。
    ほんとに難波くんいいやつ!

  • 久々に読んだから、忘れてた部分を思い出しながら楽しんだ。神奈川県が沢山出てくる。逗子のお化けトンネルが懐かしい。

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著者プロフィール

神奈川県横浜市出身、在住。2016年に『憧れの作家は人間じゃありませんでした』で第2回角川文庫キャラクター小説大賞《大賞》を満場一致で受賞し、デビュー。同作はシリーズ化され1~3巻を数える。21年夏、「准教授・高槻彰良の推察」シリーズが実写ドラマ化され話題に。キャラクター文芸界再注目の作家。

「2023年 『憧れの作家は人間じゃありませんでした4』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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