百鬼園事件帖

著者 :
  • KADOKAWA
3.32
  • (10)
  • (36)
  • (57)
  • (16)
  • (1)
本棚登録 : 513
感想 : 52
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041131862

作品紹介・あらすじ

舞台は昭和初頭の神楽坂。影の薄さに悩む大学生・甘木は、行きつけのカフェーで偏屈教授の内田榮造先生と親しくなる。何事にも妙なこだわりを持ち、屁理屈と借金の大名人である先生は、内田百間という作家でもあり、夏目漱石や芥川龍之介とも交流があったらしい。先生と行動をともにするうち、甘木は徐々に常識では説明のつかない怪現象に巻き込まれるようになる。持ち前の観察眼で颯爽と事件を解決していく先生だが、それには何か切実な目的があるようで……。偏屈作家と平凡学生のコンビが、怪異と謎を解き明かす。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 昭和初期の神楽坂が舞台。存在感の無さに悩む大学生、甘木くんと、偏屈な大学教授、内田先生は、行きつけのカフェーで同席したのを機に親しくなる。先生の背広を間違えて着てしまった甘木くんは、何故か怪異に遭遇するようになり、内田先生とともにその謎に迫っていく。

    短編集ではあるけど、順番に読んでかないとダメなやつ。最初はまあまあ怖いかな、という感じなのが、読み進むうちにどんどん怖さが増してきて…。ドッペルゲンガーの話でヒェ〜となり、若くして亡くなった伊成くんの話では悲しみも加わって、胸が締め付けられる。

    私は内田百閒を名前くらいしか知らなくて、読み終わってから調べてみた。偏屈で借金大王で、鉄オタで…夏目漱石に師事し、芥川龍之介とも交流があったという。物語の中でもそういう事には触れているので、彼のひととなりを知ってから読むとより面白いのではないだろうか。

    甘木くんは、そんな内田先生と良いコンビだ。途中、ある理由から疎遠になってしまうけど、また元鞘に納まってから話は終わる。続きがあったら、ぜひ読みたい。

    ノスタルジーを感じるブックデザインも良き。

  • 連作短編集。
     頃は関東大震災後の8年後。大学生の甘木は喫茶「千鳥」で、ドイツ語教授内田榮三と出会う。本来人の印象に残らない甘木だが、内田は彼のことを覚えていた。
     しかし、内田の周りでは不思議なことが度々起こる。動く背広(内田の師、夏目漱石の形見)、喫茶の女中の狐憑き、ドッペルゲンガーの出現など。ドッペルゲンガーについては、内田とは長い因縁があるようだ。

    《感想》
    ミステリーというよりかは怖くないホラー?内田百閒と甘木が日常で出くわす怪異に対応する、という話。内田のキャラクターが何かしら魅力があって、安心できる。こだわりが強くて、美味しい食べ物が好きで、飄々としていて、観察眼がある。その割には自分の文才の方向が定まっていない時期。甘木に言われて列車の話や食べ物の話を書き始めるところは、実際の作品とつながった感じで印象に残った。

  • 大学教授時代の内田百閒と彼の授業をとっている主人公甘木が中心に起こるオカルト的な事件の数々。
    当時の文豪のエピソードやそれを基にした事件のあれこれで楽しめましたがドッペルゲンガーの話は怖かったです。

  • 目がグルグル…がコワイ。

  • 市ヶ谷の私立大学生・甘木は、極端に印象が薄く、他人の記憶に残らないのが悩み。
    しかし、カフェー〈千鳥〉で出会った、ドイツ語教授・内田先生は、彼の名前を憶えていて……。

    昭和初期における教授と学生という、節度ある距離感。
    それでいて、相手を思い、きちんと向き合う、独特の関係性がよかった。

    ドッペルゲンガーが現れたり、教授の周りには死が多かったり。
    ホラーチックなストーリーですが、おどろおどろしくなりすぎない。

    教授と甘木の絆が感じられ、バッドエンドにならない、と信じられるからかも。

    内田百閒をよく知ってると、よりおもしろかったのかも。

  • なかなか、読み進まなかったのだけど、内容は面白かった。内田百間さんって、こんな感じだったのだろう。
    鉄ちゃんだったことに反応

  • すこし不思議な、独特の雰囲気。
    内田百閒先生の作品のような。
    目のところが渦を巻いている人間、って想像するとかなり怖い。

    ---
    ・「きれいに並んでいるものは記憶に残るものだ」49

    ・はっきり名指すことのできない、予兆めいた奇妙な繋がりがずっと続いている。129

  • 面白かった。内田百閒が大学でドイツ語を教えていた時代に、学生と怪奇に巻き込まれるという内容の連作短編で、背筋が少しゾッとするような話たちだけれど、とても面白かった。今よりも建物の内も外も暗く(暗がりの多い)、自然が身近だった時代―昭和初期―の雰囲気も話に非常に合っていて、良かった。
    私は内田百閒は随筆しか読んだことがないのだけれど、ゆったりおおらかで愛嬌があって味のある…というイメージそのままの百閒先生で登場するのも、面白かった。
    昔、宮部みゆきさんがよく超能力者(異能力者)が登場するお話を書いていた時、あまりに描写がリアルに感じられて、宮部さんの近くに超能力者(異能力者)が実在するのではと思っていた(今も思っている)。なので、百閒先生は霊能力が強くて実際に色々不思議な体験をしたからそれを基に怪奇ものを書いたのでは、という発想からこういう話が生まれたのかなと思うと、すごく納得がいく。
    著者の三上さんはビブリア古書堂の著者でもあると読み終わって気付いた。私は当作の方が好きかもしれない。

  • 少しホラー、怪奇譚。でも怨念や怨嗟といった類ではない。大正から昭和初期の世俗や街並みも丁寧に記述されてとても楽しく読めた。途中まで読んでやっと内田百閒先生って人実在していたような・・・?ってぐらい何も知らずに読んだけれど内田先生の著書がどういうものなのか興味がわいた。

  • 誤表記・誤字があった。
    校正をしっかりしてほしい。

    P. 142 3行目「甘木の言葉」→「青池の言葉」
    P. 167 5行目「カンカン棒」→「カンカン帽」

全52件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

『ビブリア古書堂の事件手帖』シリーズが累計700万部を超えるベストセラーとなる。同シリーズで、文庫作品初の『本屋大賞』候補、『本の雑誌』が選ぶ「この40年の書籍 第1位」に選ばれるなど、幅広い層からの支持を集める。

「2022年 『ビブリア古書堂の事件手帖III ~扉子と虚ろな夢~』 で使われていた紹介文から引用しています。」

三上延の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
伊坂 幸太郎
小川 哲
凪良 ゆう
恩田 陸
米澤 穂信
米澤 穂信
塩田 武士
古内 一絵
京極 夏彦
岡崎 琢磨
夕木 春央
有効な右矢印 無効な右矢印
  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×