- Amazon.co.jp ・本 (488ページ)
- / ISBN・EAN: 9784041132166
作品紹介・あらすじ
亜紗は茨城県立砂浦第三高校の二年生。顧問の綿引先生のもと、天文部で活動している。コロナ禍で部活動が次々と制限され、楽しみにしていた合宿も中止になる中、望遠鏡で星を捉えるスピードを競う「スターキャッチコンテスト」も今年は開催できないだろうと悩んでいた。真宙(まひろ)は渋谷区立ひばり森中学の一年生。27人しかいない新入生のうち、唯一の男子であることにショックを受け、「長引け、コロナ」と日々念じている。円華(まどか)は長崎県五島列島の旅館の娘。高校三年生で、吹奏楽部。旅館に他県からのお客が泊っていることで親友から距離を置かれ、やりきれない思いを抱えている時に、クラスメイトに天文台に誘われる――。
コロナ禍による休校や緊急事態宣言、これまで誰も経験したことのない事態の中で大人たち以上に複雑な思いを抱える中高生たち。しかしコロナ禍ならではの出会いもあった。リモート会議を駆使して、全国で繋がっていく天文部の生徒たち。スターキャッチコンテストの次に彼らが狙うのは――。
哀しさ、優しさ、あたたかさ。人間の感情のすべてがここにある。
感想・レビュー・書評
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2020年の高校と中学校の生徒たちが主人公。設定は、コロナ禍。現実として生活が制限され、イベントや大会等が中止や延期を余儀なくされた状況が記憶に新しい。あの頃は、未知のウィルスへの脅威を感じながら、先が見通せなく不安な状況を、多くの人々と共有していた。手探りの中、新しい情報を頼りに日々を過ごしていた。その頃の高校生や中学生は、何を感じていたのかな。それぞれの感じ方があったのだろうな。さらに、住んでいる場所によっても、その感じ方には違いがあっただろうな。
登場人物の生徒たちは茨城、東京、長崎で過ごしているが、当たり前だった学校生活を送ることが難しい状況になっていた。現実でも、あの頃は制限が多くあり、見通しが立たない状況で、不安が膨らんでいたな。
茨城県立砂浦第三高校の天文部員である2年生の亜沙と凛久。この学校には天文学に詳しい綿引先生がいた。ナスミス式望遠鏡を制作したい凛久。この凛久の願いの根底にあるものは物語の進行とともに明らかになっていく。そして、そのことと凛久の高校生活、そして、コロナ禍が複雑に絡まっていく。予期せぬ方向へと展開していく。そこに亜沙の思いも絡まる。亜沙と凛久、2人のつながりが強いだけに、胸にグッとくるものがある。それも、登場人物の背景や心情を丁寧に描かれているからこそなのだろう。そのような中、部長である3年生の春菜、新入部員である1年生、元吹奏楽部の深野、バレエを習ってきていた広瀬が、それぞれの個性を放ちながら部活動としての取組と個々の生活が明らかになっていく。先を読みたい衝動が続く。
東京都渋谷区立ひばり森中学校では、1年生の真宙と天音が中心。天音が真宙を理科部へと勧誘する。この展開にも、真宙の背景があり、その展開に引き込まれ、想像の世界が広がっていった。真宙の興味があるキノコの話も伏線なっていて、後からキノコへの興味があること自体が物語としてつながっていく。ロボット好きの2年生の鎌田の個性も際立っていて、真宙と天音との絡みが面白い。顧問の森村先生は若い先生。そこが、綿引先生との違いを鮮明にし魅力的な個性を放つ。この物語のタイトルにつながる「スターキャッチコンテスト」は、この中学生たちが、コロナ禍においても何か活動したいという純粋な願いから動き始める。もともとそのコンテストを行っていた砂浦第三高校へのお尋ねメールから2校がつながっていく。コロナ禍だからこそのつながりにも感じた。何かをしたいというエネルギーは、中高生も大きかったのかもしれないな。その願望や行動力は、とても眩しく輝いて見えた。
長崎県立泉水高校は長崎県五島列島にある。海に囲まれた自然と教会がある歴史のある島。高校3年生で吹奏楽部の円華、野球部の武藤、弓道部の小山が中心。円華の家は五島で旅館を営んでいた。このことが、コロナ禍における円華の心を揺さぶる。高校生活が、友人関係が、部活動が、大きく変化し、読みながら胸が痛む。その円華の心を支えるのは、武藤と小山。2人は離島ステイ留学制度で泉水高校に在籍していた。そして、もう一人、吹奏楽部顧問の浦川先生。円華に関わり続ける人たちがいることが、温かく心地よい。そのような中、武藤の誘いで五島天文台に円華は出かける。そこで、留学生であるけれど、コロナ禍を受けて東京に戻った同級生の輿が、円華、武藤、小山とオンラインでつながる。五島と東京、離れていてもつながる強さと切なさを感じる。そこに天文台の才津館長も加わる。遠く離れていてもつながる夜空。星の観測だからこそ、共有できるのかもな。星の観測に、そんな魅力も感じた。
東京都立御崎台高校2年生の柳は物理部に所属。顧問は、国語科の市野先生。小学生の頃、柳は真宙と同じサッカーのチームに所属、真宙にとって憧れの先輩だった。その柳が物理部に所属し、生き生きと活動していた。その背景も徐々に明らかになっていく。また、市野先生の経歴や背景も明らかになっていき、声を出して驚くことになる。
運動部も文化部も、それまで通りの活動はできない状況。目標としていた大会の中止、日々の活動の制限、読みながら苦しさが膨らむ。それでも前を向いて、できることを見つける強さと、それを共有する仲間がいた。そして、近くで応援する大人がいた。それは、先生であり、家族であった。そこに、作品全体がもつ温かさに包まれていく感覚を得る。
「スターキャッチコンテスト」をきっかけに、つながる4校の生徒と先生、大人たち。オンラインと星空が、つながりの不思議と魅力を想像させる。そこに、手作りの望遠鏡である空気望遠鏡。その身近な物を使って制作する工夫と壮大な宇宙のつながりに、わくわくしながら、想像を膨らませ読み進めた。星の観測は私の身近にはないけれど、月やオリオン座、北斗七星をみつけると、心が弾み嬉しくなる。星には、それだけ惹かれるものがあるのだろうな。
辻村さんによる登場人物の細かな描写や次々につながっていく人と人、そこにはこの時代に生きるからこそ、感じられるつながりもあり、胸にぐっとくるものがあった。細かく丁寧な人物描写により、自然とそれぞれの個性溢れる人物に寄り添っていくこととなっていた。人と人のつながりは運でもある。けれど、求めて動いたら巡り合う可能性はあるのかな。人とのつながりと天体観測のわくわくする魅力を感じさせる作品であった。前向きな思いを膨らませて読了し、辻村さんの心地よい作品世界を存分に味わえた。次に手にする辻村さんの作品も楽しみになった。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
『学校に行きたい、なんて気持ちが自分の中にあるなんて夢にも思わなかった』
2020年3月2日からはじまったまさかの出来事、それが小中高を対象とした『全国一斉休校』でした。翌月には『緊急事態宣言』も出されるなど私たちはかつて経験したことのない緊迫した状況の中に置かれました。
早く週末が来ないかな、早く夏休みになってほしい、そんな思いに溢れていた私たちの日常が一変!外出もままならず友だちと会うことさえ『自粛』を求められた日々。そんな中には自身の中に『学校に行きたい』というまさかの感情がふつふつと浮かび上がった、そんな中高生の皆さんもたくさんいらっしゃったと思います。
しかし、そんな状況下に真逆の思いを抱く生徒さんもいます。
『学校なんて、永遠に始まらなければいいのに』
それぞれにそれぞれの事情がある。『今は我慢だね』、『今は仕方ない』。そんな言葉が口癖になっていたコロナ禍。そんなコロナ禍には、それぞれが胸に抱いていた真の感情がふっと浮かび上がる、そんな状況もあったのだと思います。
さてここに、『三月からはもうずっと、私たちは決められたことに従うしかなくて、考える自由なんてなかった』というコロナ禍の中に中学、高校の青春を生きる生徒たちを描いた物語があります。『後の世に”コロナ世代”って呼ばれるのかも』と影響をさまざまに受けた中高生を描くこの作品。そんな彼らが『手作りの望遠鏡を使って、視界に星をつかまえるコンテスト』に挑む様を描くこの作品。そしてそれは、『コロナになってから、こんなふうにこれまでは考えてもみなかった』というコロナ禍がもたらしたプラスとマイナスの事ごとを中高生の日常に見る物語です。
『中止だって、コンクール』と『電話の向こうで、美琴』が言うのを聞いて『え、そうなの?』と『反射的に尋ね返』したのは溪本亜紗(たにもと あさ)。『新型コロナウイルス感染症』の流行に伴い『感染予防のため小中高の学校は全国一斉休校の措置が取られ』、亜沙が通う『茨城県立砂浦第三高校』も『五月になっても、まだ限られた登校日にしか学校に行』けない日が続いています。そんな中、中止になった合唱コンクール。『なんで、うちの代なんだろう』と言う美琴は『天文部はどうなの?学校再開したら、活動ありそう?』と続けます。『綿引先生とも新学期はまだ一度も会えてないし。夏の合宿までにコロナが収まっててくれるといいけど』と返す亜紗は、『今のこの日々は、いつかは、絶対、”いつも通り”に戻る』、『学校に行きたい』と思います。
場面は変わり、『ねえ、ひょっとして、あなた、真宙くん?』と『女子の一団』、『一目見て、上級生』に話しかけられたのは『東京都、渋谷区立ひばり森中学校』一年の安藤真宙(あんどう まひろ)。『立夏の部活の先輩なんだ。陸上部の』と続ける面々は『噂通り、かわいい顔してる』、『ほんとにかわいいね』と口々に言われて真宙は『立夏コロす、と毒づ』きます。『大丈夫ー?今年の一年生、男子、ひとりだもんね』とも言われた真宙。一クラスしかない今年の新入生の中で男子は真宙ただ一人という現実を思い何も言えない真宙。小学校時代サッカーをやっていたもののそれも叶わなくなった真宙は『先生も男子だから、一年一組は、男は先生と安藤の二人だな』と担任に励まされます。『コロナ、長引け。学校、ずっと休みのままになれ』と思う真宙。
再び場面は変わり、『何、してんの?』と、『野球部の中心的存在である武藤柊に話しかけられ、ポケットからマスクを『あわてて取り出し、口元につけ』るのは『長崎県、五島列島』の『長崎県立泉水高校』に通う佐々野円華(ささの まどか)。『ランニング中』という武藤は、『離島ステイという留学制度』によって福岡からこの島の寮に移り住んで学校に通っています。そして、そんな島は『一度ウイルスが持ち込まれたら本当に大変なことになると今ではみんなが危機感を募らせ』る中にありました。『ひょっとして、泣いてました?』と訊く武藤は同じく寮に暮らす小山に『つばき旅館、島の外から来た客を泊めてるみたいだけど、近くに住んでて大丈夫かって』話をしていたと続けます。コロナ禍の今も『東京や大阪から泊まりに来る人』を受けていることもあって、『円華の家がやっているつばき旅館』に対する目が厳しくなっているのを感じる円華は友人の小春に『一緒に帰れない』と言われたことを思います。『家族や、周りの目が気になる』というその理由に『差別じゃないかー』と思う円華。
『政府が日本全国に出した緊急事態宣言』の下、『新しい生活様式は下手するとあと二、三年は続く』と言われる2020年。『マスクなしで生活することも、もう、高校に通う間は無理なのか』と突如この国を襲ったコロナ禍に、中学、高校の青春を過ごす茨城、東京、そして長崎の生徒たちが星空の下に繋がっていく物語が始まりました。
“コロナ禍による休校や緊急事態宣言、これまで誰も経験したことのない事態の中で大人たち以上に複雑な思いを抱える中高生たち。しかしコロナ禍ならではの出会いもあった。リモート会議を駆使して、全国で繋がっていく天文部の生徒たち。スターキャッチコンテストの次に彼らが狙うのは ー”と内容紹介にうたわれるこの作品。2020年に突如世界を震撼させ、私たちの日常をめちゃくちゃにしたコロナ禍。永遠に続くかと思ったそんなコロナ禍も2023年5月7日に感染症法上5類へと分類が変更されたことでようやく一つの区切りをむかえました。この作品が刊行されたのはその翌月2023年6月です。単行本488ページという圧倒的な物量の物語は、そんなコロナ禍で大きなダメージを受けた中高生のリアルな学校生活を描いていきます。
私が読書&レビューの日々をスタートしたのは2019年12月のことです。それまで読書経験が全くなかった私ですが、それからの4年半で800冊を超える小説を読んでブクログにレビューを書いています。結果論ではありますがそれはコロナ禍があったからこそだと思っています。旅行に行くことも出来ず、いっ時は買い物に行くことさえ最小限にすべしという中に散々に恐怖心を植え付けられたあの悪夢のような日々。巣篭もりする他ない日々にあって、私が読書&レビューという楽しみを知れたことは不幸中の幸いでもありました。コロナ禍には誰もがそれぞれに思いを持っていらっしゃると思いますが、その同じ時代を物書きを仕事にされる小説家の皆さんがコロナ禍を真正面から見据えようとされるのは当然のこととも言えます。そして、私の読書&レビューの日々の中にはコロナ禍を描いた作品を数多目にすることになりました。この辻村さんの作品もそうですが、せっかくですのでそれぞれの作家さんがどのようにコロナ禍を描いた作品を書かれてきたのか、ここにまとめておきたいと思います。
● コロナ禍を扱った女性作家さんの作品リスト(刊行日順) 〜 永久保存版(笑) 〜
・島本理生さん「2020年の恋人たち」(2020年11月20日刊): かなり早い時期に刊行された作品。” こんな2020年のオリンピックイヤーを誰が予想していただろう”という視点でコロナ禍を描きます。
・彩瀬まるさん「新しい星」(2021年11月24日刊): 新型ウイルスの感染拡大の影響で、結果的に、”東京に戻りたくない”という妻の杏奈や子供たちと別居生活を送るという夫婦を描きます。
・長月天音さん「ただいま、お酒は出せません!」(2022年4月21日刊): “緊急事態宣言なるものが出されて一週間が経つ…私は仕事がなくなった”という飲食店のパート従業員を描きます。
・窪美澄さん「夜に星を放つ」(2022年5月24日刊): ”婚活アプリで恋人を探し始めて半年…”、やっとやりとりが始まったという中にコロナの自粛期間が訪れたという先の物語を描きます。
・綿矢りささん「嫌いなら呼ぶなよ」(2022年7月26日刊): “もしかしたらコロナ禍という特殊な状況が色んな人の頭の磁場を狂わせているのかもしれない”という中に綿矢さんの毒が炸裂します。
・辻村深月さん「嘘つきジェンガ」(2022年8月25日刊): “四月になっても大学は始まらなかった”という2020年4月に山形から東京に出てきた主人公が”割のいいバイト”に手を染めていきます。
・金原ひとみさん「デクリネゾン」(2022年8月26日刊): “苦しんでいる人のことを思いやれ、人の気持ちを考えろと綺麗事と忖度を押し付けられ…”と、あのコロナ禍を冷静な目で描いていきます。
・寺地はるなさん「川のほとりに立つ者は」(2022年10月20日刊): コロナの噂がで始めた時期から第二波収束の時期まで、夏のマスクの違和感等コロナ禍初期の状況を描いていきます。
・井戸川射子さん「この世の喜びよ」(2022年11月10日刊): “コロナ禍で緊急事態宣言が出た時は”、”少女はマスクを引き上げる”と、さりげなくコロナ禍を背景に描写します。
・標野凪さん「こんな日は喫茶ドードーで雨宿り」(2023年3月15日刊): “紙類に付着したウイルスは二、三日は生存する”、”ワクチンに関しては様々な意見がある”等細かい描写が登場します。
・近藤史恵さん「それでも旅に出るカフェ」(2023年4月19日刊): 店主の円があちこち旅した先のスイーツを提供するカフェ・ルイーズが休業に追い込まれた中から再開していく様を描きます。
・柚木麻子さん「オール・ノット」(2023年4月19日刊): 一生に一度しかない大学時代、それをまさかのコロナ禍にみまわれ、貧困にあえぐ生活を送る主人公が描かれていきます。
・瀬尾まいこさん「私たちの世代は」(2023年7月24日刊): “今でもふと思う。あの数年はなんだったのだろうかと”というまさかの未来世界2035年からコロナ禍を振り返る斬新な物語です。
・金原ひとみさん「ハジケテマザレ」(2023年10月5日): 『外国人を見るとなんとなくウイルス保有者のような気がして道端や電車内でさりげなく距離を取っていた』と偏見溢れる世を描きます。
・井戸川射子さん「共に明るい」(2023年11月9日): コロナ禍のため、何度にもわたる日の延びの末に二年生の五月と決まった三日間の修学旅行の様子が描かれる短編など5編からなる短編集です。
・一穂ミチさん「ツミデミック」(2023年11月22日刊): “マスクを求める人々が薬局の前に列をなし、転売が横行…今となっては「馬鹿馬鹿しい」のひと言”という時代の犠牲者を描きます。
・柚木麻子さん「あいにくあんたのためじゃない」(2024年3月21日刊): 『妊婦にウイルスを運んではならないからと、訪ねてくる人は皆無だった』というコロナ禍の人の有り様を描きます。
コロナ禍を扱った17作品を並べてみましたが刊行時期によって取り上げる内容、視点もバラバラです。コロナ禍黎明期からアフターコロナ、さらには未来からコロナ禍を振り返る作品まで。こうやってみると島本さんの素早い”コロナ禍対応”には改めて驚きます。いずれにしてもそれぞれの作家さんがそれぞれの目の付け所の違いを見せてくださいます。しかし、こうやってみてコロナ禍で散々にニュースでも取り上げられたにも関わらず抜け落ちているものがあることに気づきます。それこそがコロナ禍を生き抜いた子供たちの姿です。2020年3月2日から小中高が『全国一斉休校』になるという衝撃は未だもって忘れることは出来ません。一体私たちの暮らしはどうなるのか、コロナ禍の衝撃はここから始まったといっても過言ではありません。そして、その先にも一体学校はいつになったら正常化するのか、これは大きな関心事でもありました。今回レビューする辻村さんの「この夏の星を見る」という作品はそんな時代を生きた中学生、高校生の日常に光を当てていきます。では、この作品のコロナ禍を取り上げた描写を見ていきましょう。
『感染予防のための休校で、亜紗たちの学校は「三月」と「四月」がごそっと消えた。いつの間にやら一年生が終わり、亜紗たちは茨城県立砂浦第三高校の二年生に進級したらしい』。
この表現は高校生たちが見たあの時代を見事に表していると思います。そうです。学年の切れ目に当たる二つの月が『ごそっと消えた』。今から考えてもよくそれで歴史が続いているのだと思えるくらいに衝撃的な出来事でした。
『なんかうちら、後の世に”コロナ世代”って呼ばれるのかもって、テレビで言ってたよ』。
『コロナ世代』という言い方は、瀬尾まいこさん「私たちの世代は」でも指摘されている言葉ですが、”○○世代”という言い方で語られる世代感。果たしてそのように言われる日はくるのでしょうか?
『相手も自分も感染していないかもしれないのに、それなのに互いを避け合ってるって、なんかシュールでおかしくない?』
はい、今から振り返れば間違いなくシュールな時代だったと思います。『それくらいしか、自分たちが今できることはないらしい』と、現代の医療技術がまだまだ発展途上であることを実感させられもした時代でしたが、この感覚を十代の青春に味わうことになった世代は本当に辛い時代だったと思います。ただただそう思います。
『コロナが奪ったのは、収入だけじゃない。日々、当たり前にしてきたはずの生活、日々の営みの価値や尊さがどんなものか』
この作品はコロナ禍を扱った数々の作品の中でもその取り扱い方は物語とが完全に一体化、コロナ禍を取り去ると物語が成り立たないくらいに一体不可分なものとなっています。物語の主人公たちは中高生ですが、そんな彼らには家族とも一体不可分です。物語では、長崎県、五島列島で旅館を営む円華の実家が東京や大阪からの宿泊客を受け入れていることで、円華までもが『差別』を受ける現実も描かれます。”マスク警察”や他県ナンバーの車への悪戯、旅行者への誹謗中傷はじめ、コロナ禍は人間の嫌な側面を露わにしました。なんの罪もない子供たちまでさまざまな被害に遭ってしまっていたことを描き出すこの作品の視点。コロナ禍が過去のものとなった今、先の大戦同様に、この過ちを二度と繰り返さぬよう、情報に振り回されて右往左往した恥ずべき時代を私たちそれぞれがきちんと振り返るべき時が来ているのだと改めて思いました。
さて、次はこの作品の前向きな側面を見ていきましょう。この作品の一番の魅力は書名にある「この夏の星を見る」という言葉で想起される通り、夜空の星々を見上げる中高生たちの姿が、まさしく”青春物語”として描かれていくところです。上記で触れた作品の冒頭に描かれる通りこの作品の舞台は三つの都県にまたがります。そして、後述する『スターキャッチコンテスト』を競っていきます。では、そんなチームをご紹介しましょう。
・茨城チーム: 溪本亜紗(高2)、飯塚凛久(高2)、山崎晴菜(高3)、深野木乃美(高1)、広瀬彩佳(高1)
※ 茨城県立砂浦第三高校: 五年前まで女子校だったため男子は全校でも12人しかいない
※ 天文や地学の世界ではかなり有名な綿引邦弘先生が率いる天文部によるチーム
・渋谷・ひばり森チーム: 安藤真宙(中1)、中井天音(中1)、鎌田潤貴(中2)
※ 渋谷区立ひばり森中学校: 中学受験の影響により生徒数が激減し、真宙は学年で唯一の男子
※ 理科担当の森村尚哉先生が顧問を務める理科部によるチーム
・渋谷・御崎台チーム: 柳数生(高2)、(輿凌士(高3))
※ 東京都立御崎台高校: 人工衛星を作ったり、宇宙線の研究もしている
※ 国語教諭の市野はるか先生が顧問を務める物理部によるチーム
・五島チーム: 佐々野円華(高3)、小山友悟(高3)、武藤柊(高3)
※ 長崎県立泉水高校: 離島ステイという留学制度があり県外から学生を受け入れている
※ 五島天文台の才津勇作館長が取りまとめる天文台チーム
整理すると上記のような感じでしょうか?物語に登場する中高生たちは『この夏』までは全く繋がりをもたなかった中に『茨城県立砂浦第三高校』の天文部が毎年行ってきたもののコロナ禍で実施できなかった『スターキャッチコンテスト』を変形実施する中に繋がりをもっていきます。では、『スターキャッチコンテスト』とはどんなものでしょうか?簡単にご紹介しましょう。
● 『スターキャッチコンテスト』について
・『自作の天体望遠鏡で星を見る活動』
・『制限時間内により多くの星を見つけられた、得点の高いチームが優勝』
・『導入する天体は難易度別に五段階』
※ 難易度1-月、難易度2-1等星・金星・火星・木星・土星、難易度3-2〜4等星・明るい星雲・星団…
・『ジャッジ(審判)をつけて、天体を見つけられたかどうかの判定はジャッジが行う』
いかがでしょうか?おおよそのルールはお分かりいただけたかと思います。『自作の天体望遠鏡』で夜空のさまざまな天体に目を向けていくというのはなかなかに面白そうです。では、そんな『コンテスト』に至るまで、望遠鏡を夜空に向けて初めて自分の目で直接目にした天体を見る箇所を抜き出してみましょう。
『白銀に光る視界の中に、月のクレーターが見えた。テレビや本の中でしか見たことのない、本物の月面。肉眼で見るのと違う、温度や質感まで伝わってくるようにくっきりと見える。「すごい、本物、初めて見ました」』
あなたは、『天体望遠鏡』で夜空の星々を見たことがあるでしょうか?私も過去に経験がそれなりにありますが、何度体験してもその興奮は変わらなかった記憶があります。月面はまさしくこの表現の先にあるものです。安価な機材でもハッキリ、クッキリ見える分、月面は初めて見る天体としては最善だと思います。もう一つ。
『土星の輪が、ちゃんと見えた。カッシーニが三百年前に見た視界と同じ、土星。星と輪の間に確かに隙間があるのが確認できる。その時の痺れるような嬉しさはちょっと言葉にならなかった』。
『言葉にならなかった』、まさしくそうだと思います。土星を直接眺める時の神秘的な面持ち、これこそ何度見ても変わらなかった印象がとても強いです。物語では、そんな風に天体を眺めるだけでなく、『コンテスト』の概要にある通り『自作の天体望遠鏡』というなんともマニアックな領域に踏み込んでいきます。これは面白いです。間違いなく面白い。『天体望遠鏡』を作るということに夢中になる中高生たちの姿にそれを読む読者も間違いなく興奮が抑えられなくなると思います。星好きな方には超おすすめなこの作品、そうでない方をも星好きな世界へと引き摺り込む、そんな魅力が間違いなくあると思いました。
そして、そんな物語は数多登場する中高生たちがコロナ禍の日常を乗り越えていく姿が描かれていきます。登場人物は多めですが、主人公は茨城の亜紗と五島の円華という女子高生二人と、渋谷の真宙という男子中学生の三人です。作品は〈プロローグ〉と〈エピローグ〉に挟まれた〈”いつも”が消える〉、〈答えを知りたい〉、〈夏を迎え撃つ〉、〈星をつかまえる〉、〈近くて遠い〉、〈あなたに届け〉の六つの章から構成されていますが、その各章の中で三人の主人公視点に随時切り替わりながら展開していきます。そしてその中にコロナ禍で学校が『全国一斉休校』となったことへのそれぞれの主人公たちの思いが垣間見えてきます。
・亜紗: 『学校に行きたい、なんて気持ちが自分の中にあるなんて夢にも思わなかった』
・真宙: 『学校なんて、永遠に始まらなければいいのに』
・円華: 『机を前に向けたまま、誰とも話さずに黙々とお弁当を食べる…とても味気ない時間だけれど、今の円華には、それが心底ありがたかった』
友だちと会えない日々の中に孤独に対する不安を強める亜紗のまさかの感情、一方、学年でただ一人の男子という状況下に困惑する真宙の感情は学校というものにまだ目が向いています。それに対して、絶望感を強める円華の思いは読んでいて非常に辛いものがあります。円華にはなんの落ち度もない中にコロナ禍による偏見と差別によって追い込まれていく姿を描く物語は大人たちが大いに反省すべきコロナ禍最大の負の側面です。物語は、全てが初めての出来事というコロナ禍の中に戸惑いながらもそれぞれの日常を生きていく主人公たちの姿が描かれていきます。そんな中に明るい兆しが少しずつ見えはじめます。それこそが、友だちや先生との繋がりです。人はコミュニティの中で生きる生き物であり、一人で生きていくことなどできはしません。特に子どもたちは、そんな繋がりの先に自我が芽生え、大人への階段を上がっていく必要があります。そこに繋がった『スターキャッチコンテスト』への道が描かれていくのはこの作品の何よりもの魅力です。また、そんな中にコロナ禍が生んだプラスの側面が顔を出します。
『話が難しくて、全然わからなかったけど、でも、楽しかった。オンライン会議っていいね』。
そうです。今や当たり前になった『オンライン会議』がこの作品の描写に新鮮な感覚を導入します。この作品のように等位の複数の主人公視点で展開する物語は数多あります。主人公たちは何かしら直接出会う場面で共通の舞台に立つことはありますが、基本的にはそれぞれの居場所があるはずです。それが、この作品では『オンライン会議』という存在によって、離れた場所にいるにも関わらず、会話が成立し、一つの事ごとを同時に進めていくということができてしまうのです。これは、『オンライン会議』という場所を超えることのできる飛び道具があってこそです。マイナスの側面ばかりが目立つコロナ禍にもプラスの側面がある。この最大のものが『オンライン会議』が世の中の当たり前になったことだと改めて思いました。
そんな物語は、『スターキャッチコンテスト』によって変わっていく三人の主人公の日常、感情を絶妙に描きながら展開していきます。『コロナだから仕方がない』、そんなマイナス感情の一方で、人と人とが触れ合う中に生まれてくる感情。
『わかってくれる人ばかりじゃないけど ー それでも、私をわかってくれる人が確かにいる』
そんな思いを感じる主人公たち。物語は後半に入ってさらに大きく動き出します。そして、そこに見ることになるのは辻村さんならではの伏線回収の鮮やかさです。物語前半にさまざまに触れられていたことが全て繋がっていく瞬間の到来。そこには、”辻村印”に保証された絶対的安心感に満ち溢れた”青春物語”が展開していきます。そんな中で辻村さんは大切な視点を登場人物の言葉に託して語られます。
『実際に失われたものはあったろうし、奪われたものもある。それはわかる。だけど、彼らの時間がまるごと何もなかったかのように言われるのは心外です。子どもだって大人だって、この一年は一度しかない。きちんと、そこに時間も経験もありました』。
そう、コロナ禍の日々にだって私たちの人生はあり、その日々の積み重ねの先に今の私たちが生きているのです。あの日々には二度と戻りたくはない。しかし、そんな日々にも何かしら得るものがあり決して無駄な時間なんかではなかったことを具に見るこの作品。コロナ禍どっぷりに描かれたこの作品には、そんな時代の中でお互いに手を差し伸べあう、中高生たちの優しさに満ち溢れた姿が描かれていました。
『「濃厚接触者の濃厚接触者」という言い方にも眩暈がする。いったいどこまで範囲を広げて、私たちは相手を怖がらなきゃならないんだろう』。
2020年に突如世界を襲ったコロナ禍。この作品ではそんなコロナ禍の世に中学、高校時代を過ごした生徒たちの瑞々しい青春の日々が描かれていました。中高生たちがコロナ禍がどう見ていたかを感じるこの作品。そんな中高生たちが夜空の星々に目を向けていく情熱に心熱くさせられるこの作品。
コロナ禍の日々を背景に、人と人との繋がりの大切さを改めて感じさせる素晴らしい作品でした。 -
振り返ると、たいした学生生活を過ごしていない自分ですらかけがえのない特別な時期だったと思う。
コロナというのは、生命だけでなく、そんな時期も奪うわけで、様々な困難や制限を乗り越えて、やりたいことを勝ち取る学生達の姿に思わず胸が熱くなってしまった。困難はもちろん多くあれど、やっぱり学生だからこそ得られるものもきっとあるんだろうなと思った。
叶えたいと心から願い、ひたすら努力しても、叶えらなかった悔しい思いをする人が多いのも事実。この小説を通じて、多くの学生さんが多感な時期を一生涯忘れないものになることを、改めて強く願った。 ★4.0-
こんばんは。読了しました。良かった!
私、長崎出身なのに五島に行ったことなく。星を観に行こうと誓いました!こんばんは。読了しました。良かった!
私、長崎出身なのに五島に行ったことなく。星を観に行こうと誓いました!2023/09/15 -
mei2catさん
コメントありがとうございます。
自分も地方出身ですが、意外と行かないところ多いですよね。
五島は自分も行ってみたくなりま...mei2catさん
コメントありがとうございます。
自分も地方出身ですが、意外と行かないところ多いですよね。
五島は自分も行ってみたくなりました。
天体観測もしたくなりましたし、人を突き動かすパワーを持った素敵な小説でしたね。2023/09/15 -
ユースケさん
こんばんは。
はい、まさに突き動かすパワーを感じた作品でした。
コメントのお返事ありがとうございました!ユースケさん
こんばんは。
はい、まさに突き動かすパワーを感じた作品でした。
コメントのお返事ありがとうございました!2023/09/17
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茨木県の高校の天文部。渋谷区の中学、長崎の高校、東京の高校の理科部の相互交流をして「夏のスターキャッチコンテスト」を開催する前後の話です。
コロナ禍に青春を送る中高生の青春群像劇ですが登場人物が多すぎて、どこの学校の人物だったかよくわからなくなったり、青春は私にはあまりにも遠すぎて最後の告白シーンなんて読んでいられないと思いました(笑)。
この作品のストーリーを紹介するのは私にはちょっと難しいので、この作品とは関係ありませんが、出てくる人物たちと同年代の自分の身内のことを書きます。
ご興味がない方はスルーしてください。
私には三人の姪が横浜にいるのですが、今年の夏4年ぶりに三人で家に遊びに来ることになっていました。
4年間コロナで来られなかったのですが、今年は三人で来る予定でした。(弟と奥さんも最初は来たいといっていましたが、もう下の子たちも大きくなり、5人で来られると泊まる布団が足りないから無理と断りました)。
一番上の姪は、コロナの年に看護学校に入学しました。そしてついこの間付属の大学病院の看護師として、来年から就職の内定をもらいました。
入学時はリモートでの授業等で大変だったようです。
弟の自慢話によると「もう、血液検査だってできるし、注射も打てる、介護だってやってくれるんだ」という話で(当たり前ですが)、私もこのコロナの時代に看護師への夢を諦めなかった姪を誇りに思います。
家にきたらどういうふうにほめたたえようか思案中でした。
真ん中の姪は、コロナの年に中学入学でした。真ん中の姪とはちょくちょくLINEをしているのですが、中学では吹奏楽部に入りました。
この作品にも、コロナの時代に吹奏楽部は非常に難しい部活だと書いてありましたが「トロンボーンを吹いている」というので楽器を借りて吹くのは感染が心配でしたが、そんなことは姪には言えず「コンクールがんばってね」と励ましのLINEを送りつづけました。中二の時、無事に修学旅行にも行くことができ、今は無事卒業して高校生です。
一番下の姪は、今、小学六年生です。
一番の趣味は読書という姪です。
小学四年生の時に弟に「家にあるハリーポッターの全巻セット送ってくれ」と言われ、私の本を段ボールに詰めて二箱送ったところ、わずか1カ月程で全巻読破したという強者です。
家に来たら、他にはどんな本が好きか聞いて読めそうな本があったらまた送ってあげたいと思っています。
コロナ禍でも、うちの姪たちは元気そうで何よりでした。
あと10日したら4年ぶりの再会と思っていたのですが、4、5日前から母の体調が悪くなり、3日前に今回は見送りということになってしまいました。
秋の連休には来られるといいなと思っています。
姪たちには是非こちらの星を見て帰ってほしいです。-
アールグレイさん♪
ありがとうございます。
採血の上手な、優秀な看護師さんになるように、私も期待しています。夜勤で、体調崩さないか心配もし...アールグレイさん♪
ありがとうございます。
採血の上手な、優秀な看護師さんになるように、私も期待しています。夜勤で、体調崩さないか心配もしています。2023/08/03 -
暑いよ~!溶けちゃう!
そうですね>^_^<夜勤だけが心配ですね。
避けて通れない道だと思うので、ここはタフで居られればと思います。
きっ...暑いよ~!溶けちゃう!
そうですね>^_^<夜勤だけが心配ですね。
避けて通れない道だと思うので、ここはタフで居られればと思います。
きっと、大丈夫!2023/08/03 -
アールグレイさん♪
本当に暑いですね。
水分補給して、エアコンも適度に使って、熱中症にならないように、気をつけてください。
夜勤は心配で...アールグレイさん♪
本当に暑いですね。
水分補給して、エアコンも適度に使って、熱中症にならないように、気をつけてください。
夜勤は心配ですが、私の血はあまりひいてなさそうなので、大丈夫かと思っています。
(私だったら、絶対無理(^^ゞ)2023/08/03
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文句なしの★5!
本の分厚さに一瞬躊躇したけれども、これだけの登場人物の背景、揺れ動く気持ちを読者に届けようとしたらこうなるのも当然です。
コロナ禍、部活動や友だちとの関係の歯車が狂っていく。全てコロナのせい!コロナのせいで色々奪われた!と嘆く中高生たち。
しかしそこから、今だからこそリモートで遠く離れた本来ならば出会わなかったであろう人たちと天体観測で繋がろう!と奮闘していく姿がとても清々しい。
そして、この物語に出てくる学生たちは、そもそも天文部だったり理科部だったり文化系の人なのです。
登場人物の1人は自分が入りたかったサッカー部がないので、しぶしぶ文化系の部活に入り、それを恥ずかしく思っているわけです。世の中、同じ感覚の人のなんと多いことか!(どうだろう?この頃は変わってきているのかな?)
でも、この作品では「みんながこれをやるから、とかじゃなくて、自分がこれをやりたいっていうのを持ってる」人たちがたくさん出てくるのです。
だけど、そのやりたいことが将来に繋がらないことでもいいんだよ、と教えてくれます。
さらに、自分を分かってくれない人はもちろんいる、だけど、見ていてくれる人もきちんといるんだ、ということも。
あー!全国の中高生に読んでもらいたい!
教科書に載せるのは大変そうなので、課題図書でぜひ(о´∀`о)
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こっとんさん★こんにちは
この話、凄く読後感が良く、ホロッとするところもある最高の白辻村でした。
この本を読んでから、天体に少し興味を持つ...こっとんさん★こんにちは
この話、凄く読後感が良く、ホロッとするところもある最高の白辻村でした。
この本を読んでから、天体に少し興味を持つようにもなりました。
昨日早朝は、ウルフムーンという今年最初の満月だったとのこと。
,゜.:。+゜(-_☆),゜.:。+
2024/01/27 -
アールグレイさん、こんにちは♪
ウルフムーン( °_° )
気になってちょっと調べてみたら、毎月色々な○○ムーンがあるのですね!
日本でも○...アールグレイさん、こんにちは♪
ウルフムーン( °_° )
気になってちょっと調べてみたら、毎月色々な○○ムーンがあるのですね!
日本でも○○月って様々な呼び方があるし、国が違っても時代が違っても月や星って人の心を惹き付けるのですねー゚+.゚(´▽`人)゚+.゚
2024/01/27
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コロナ禍でソーシャルディスタンスを強いられた中高生たちはマスク姿のまま3年間すごし同級生の素顔さえ知らずに卒業してしまった子もいるとか、卒業アルバムの顔写真はどんな思いで眺めるのでしょうね。
さて、物語はオンラインで希薄になった心を夜空がつなぐ青春ものです。舞台は2020年人類を襲ったウイルスに緊急事態宣言とか自粛ムードに活動が制限されるなかの茨城に東京、長崎の3か所を結びます。中高生たちの夢はそんな中にあっても望みをつないで素敵でした。亜紗は茨城の高2、真宙(まひろ)は渋谷区立の中1で27人しかいない新入生で唯一の男子とか、高3の円華(まどか)は五島列島の旅館の娘。その他大勢と登場人物多すぎて把握しきれませんでした。
自作の望遠鏡で制限時間内により多くの星を捕捉する「スターキャッチコンテスト」の開催を企画していきます。
反射式望遠鏡の一種であるナスミス式とか、表現力豊かな深月さんの文章力をもってしても私にはいまいちピンとこなかったのですが、ググってフォトみたら秒で判りました。接眼部分(覗き穴)が回転軸(支点)にあり固定されてて見やすいってことなんですね。普通の反射式では高い位置にある星を覗く場合は脚立を使ったりして観測しなければいけないところ車いすの人でも容易に観測できるメリットがあるわけです。
凹面鏡に届く光は何光年も離れた過去の微かな光たち、それらを集めて観測するって無茶ロマンを感じました。
競技に使われるのはこれと違う方式の望遠鏡で同じ仕様のものを組立てて使うようですが細長い筒状の一般的な望遠鏡のようでした。
東京の夜空と五島列島ではハンデがありそう。
好きなことが直接仕事に結ぶことは稀だと思うのですが、人生を豊かにするのは、役に立たないところにある興味や好奇心だって子供のように目を輝やかせて言える綿引先生の言葉が魅力的でした。-
つくねさん、青春ですよねっ!!
コロナ禍であっても、子供たちは
その中でどうやって過ごせばいいのか、
色んな事を考えて、成長していくも...つくねさん、青春ですよねっ!!
コロナ禍であっても、子供たちは
その中でどうやって過ごせばいいのか、
色んな事を考えて、成長していくものなんですよね(*'▽')
先日、下の子の卒業アルバムをみて
やっぱりマスク姿のが多くってね…がっかりしたんですけど、
でもその時期にだっていい思い出もできているはずって思いました。2024/03/18 -
かなさん、こんばんわ♪
色んなこと考えて成長していきますね。
下のお子さんの卒業アルバムマスク姿多かったんですね
コロナ禍でも逞し...かなさん、こんばんわ♪
色んなこと考えて成長していきますね。
下のお子さんの卒業アルバムマスク姿多かったんですね
コロナ禍でも逞しくいい思い出もできてますよね。
2024/03/18
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物語は、2020年春、コロナ禍で全国の学校が緊急事態宣言を受けて休校、授業や行事・部活動が制限されていた時期から始まります。
茨城・東京渋谷・長崎(五島列島)の中高生たちが物語の中心です。
前半は、上記3箇所の中高生の非日常的な「日常」が、視点を切り替えながら綴られます。
未知の感染症故の不安や葛藤が、気持ちの行き違いを生み、大人以上の複雑な思いを抱えていたはずで、この辺が巧みに描写に織り込まれています。
他校の部活はどうしているのかと、自校から外へ目を向けた時から点と点が「繋がり」始め、自作の天体望遠鏡製作とスターキャッチコンテストへと展開していきます。
後半、オンライン会議を繰り返す中で、製作や天文についての質疑に止まらず、中高の校種の垣根を超えた少年少女が、対話を通して相手の立場・状況を聴いて想像・理解し、アイディアを出し合っていく場面‥とてもよかったです。
学校ってある意味閉鎖空間なので、学校外の多様な人と関わる経験を積んで、広い視野をもつことは大事だし、人の成長には欠かせませんね。
物語は、一時的な繋がりと思えた関係が、更に収束せずに拡大していきます。この展開うまいです。
この子たちの未来は明るい! 大人にとっても明日への活力をもらえるような良質な物語で、素直に爽やかに感動できる〝白〟辻村深月さんでした。 -
コロナ禍の青春ストーリー。
苦しい、辛い、誰が悪いわけでも無い。学生という多感な時期に様々な物を取り上げられ、いつ明けるかすらもわからない状況は自身の子供を見ていても本当に辛かった。だからこそ、入り込めて痛いほど気持ちがわかる。そんな本。 -
「違う場所にいても、空はひとつだから」
なんか、分かります?映画の予告編とかでよくあるひとつのセリフきっかけで、音楽が鳴り始めて急に色々始まるパターンのやつ
急に世界が動き出す感じの、急にスピード感が上がる感じの
あれです
なんかゾワゾワしました
動き始めた!って気持ちがしました
辻村深月さんうまいわ!って思いました
うーん、読んでほしいなー
はい、コロナですよ
コロナテーマ小説、あんま好きじゃないんだけど、これは面白かった
面白かったけど色々考えました
今ちょっと落ち着いてきて「コロナだったから経験出来たこともあるんやで」って大人たちが子どもたちに押し付けているのがとっても嫌でたまらなかったんだけど、この作品はそこに対するアンチテーゼがちゃんと示されていてちょっと気持ち良かったんよね
さすが辻村深月さんだ!
そしてそして「学習」と「科学」論争ですよ
知らない人は置いていきますが、わいら世代はこの論争は凄い盛り上がるんですよね
ちなみにわいは断然「科学」でした
「学習」なんか、ちょっと読み物があるくらいやん、おもんな!
「科学」の付録のクオリティの高さを見よ!とか思ってました
男は「科学」よなーってなんだかよくわかんないこと思ってました
ちなみにどっちも買ってもらってたよ!っていういいとこの子は論争の参加資格なしですw-
クマさん
わいは「りぼん」「マーガレット」「花とゆめ」は姉が、「ジャンプ」「マガジン」「サンデー」は兄が買ってたので
全兵力を横溝正史とク...クマさん
わいは「りぼん」「マーガレット」「花とゆめ」は姉が、「ジャンプ」「マガジン」「サンデー」は兄が買ってたので
全兵力を横溝正史とクリスティとクイーンとカーとクロフツとチェスタートンと星新一先生と北杜夫先生と井上靖さんに振り向けてました2023/07/14 -
2023/07/27
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2023/07/27
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はぁーーーーーー!!!
青春!!!!!
スピンオフ作品を読んだ時から
楽しみにしていた一冊。
あっという間に読み終わりました(^^)
誰も経験したことのないコロナ禍で
人が疑心暗鬼になってて
『誰も悪くない』、『今だけ』、『落ち着くまで』
そう言いながら
いろんな人が傷ついたり、傷つけたりしていた時期
コロナの始まりの頃を思い出したりしました。
いろんな状況の子たちがいて
混乱するところもあるんですが、
心情を丁寧に書かれていて
あーそうだよな、そうだったよなって。
自分のことのように共感できました。
辻村さん、本当に中高生の心情を描くのが
うまいですよね
本当に誰も悪くない。
悪いのはコロナ
人にはいろんな考え方があって
みんな自分を守らなきゃいけなくて
大切な人を守らなきゃいけなくて。
未知のものが怖くて。
とにかく制限して、様子を見てたあの時期。
今完全に落ち着いたわけではないけど
やっぱり本当におかしな時期だったなと
改めて思います。
そんな中でもそれぞれがみんなが色々考えたり
葛藤したり成長していく様子が
胸熱でした!!!笑
いろんなセリフが胸にささりました!
先生同士のやりとりもよかったなー
綿引先生好きです!
あんな先生に出会いたかったけど
大人になって、あんな風に子どもを信じて
任せる難しさがよくわかります。
あんな風に子どもたちと接していけるだろうか。
ちょっと甘酸っぱい恋の話も私は好きです!!笑
あーいい話だったなぁー
とてもいい読了感でした(^^)