この夏の星を見る

著者 :
  • KADOKAWA
4.24
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  • Amazon.co.jp ・本 (488ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041132166

作品紹介・あらすじ

亜紗は茨城県立砂浦第三高校の二年生。顧問の綿引先生のもと、天文部で活動している。コロナ禍で部活動が次々と制限され、楽しみにしていた合宿も中止になる中、望遠鏡で星を捉えるスピードを競う「スターキャッチコンテスト」も今年は開催できないだろうと悩んでいた。真宙(まひろ)は渋谷区立ひばり森中学の一年生。27人しかいない新入生のうち、唯一の男子であることにショックを受け、「長引け、コロナ」と日々念じている。円華(まどか)は長崎県五島列島の旅館の娘。高校三年生で、吹奏楽部。旅館に他県からのお客が泊っていることで親友から距離を置かれ、やりきれない思いを抱えている時に、クラスメイトに天文台に誘われる――。
コロナ禍による休校や緊急事態宣言、これまで誰も経験したことのない事態の中で大人たち以上に複雑な思いを抱える中高生たち。しかしコロナ禍ならではの出会いもあった。リモート会議を駆使して、全国で繋がっていく天文部の生徒たち。スターキャッチコンテストの次に彼らが狙うのは――。
哀しさ、優しさ、あたたかさ。人間の感情のすべてがここにある。

感想・レビュー・書評

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  • 2020年の高校と中学校の生徒たちが主人公。設定は、コロナ禍。現実として生活が制限され、イベントや大会等が中止や延期を余儀なくされた状況が記憶に新しい。あの頃は、未知のウィルスへの脅威を感じながら、先が見通せなく不安な状況を、多くの人々と共有していた。手探りの中、新しい情報を頼りに日々を過ごしていた。その頃の高校生や中学生は、何を感じていたのかな。それぞれの感じ方があったのだろうな。さらに、住んでいる場所によっても、その感じ方には違いがあっただろうな。

    登場人物の生徒たちは茨城、東京、長崎で過ごしているが、当たり前だった学校生活を送ることが難しい状況になっていた。現実でも、あの頃は制限が多くあり、見通しが立たない状況で、不安が膨らんでいたな。

    茨城県立砂浦第三高校の天文部員である2年生の亜沙と凛久。この学校には天文学に詳しい綿引先生がいた。ナスミス式望遠鏡を制作したい凛久。この凛久の願いの根底にあるものは物語の進行とともに明らかになっていく。そして、そのことと凛久の高校生活、そして、コロナ禍が複雑に絡まっていく。予期せぬ方向へと展開していく。そこに亜沙の思いも絡まる。亜沙と凛久、2人のつながりが強いだけに、胸にグッとくるものがある。それも、登場人物の背景や心情を丁寧に描かれているからこそなのだろう。そのような中、部長である3年生の春菜、新入部員である1年生、元吹奏楽部の深野、バレエを習ってきていた広瀬が、それぞれの個性を放ちながら部活動としての取組と個々の生活が明らかになっていく。先を読みたい衝動が続く。

    東京都渋谷区立ひばり森中学校では、1年生の真宙と天音が中心。天音が真宙を理科部へと勧誘する。この展開にも、真宙の背景があり、その展開に引き込まれ、想像の世界が広がっていった。真宙の興味があるキノコの話も伏線なっていて、後からキノコへの興味があること自体が物語としてつながっていく。ロボット好きの2年生の鎌田の個性も際立っていて、真宙と天音との絡みが面白い。顧問の森村先生は若い先生。そこが、綿引先生との違いを鮮明にし魅力的な個性を放つ。この物語のタイトルにつながる「スターキャッチコンテスト」は、この中学生たちが、コロナ禍においても何か活動したいという純粋な願いから動き始める。もともとそのコンテストを行っていた砂浦第三高校へのお尋ねメールから2校がつながっていく。コロナ禍だからこそのつながりにも感じた。何かをしたいというエネルギーは、中高生も大きかったのかもしれないな。その願望や行動力は、とても眩しく輝いて見えた。

    長崎県立泉水高校は長崎県五島列島にある。海に囲まれた自然と教会がある歴史のある島。高校3年生で吹奏楽部の円華、野球部の武藤、弓道部の小山が中心。円華の家は五島で旅館を営んでいた。このことが、コロナ禍における円華の心を揺さぶる。高校生活が、友人関係が、部活動が、大きく変化し、読みながら胸が痛む。その円華の心を支えるのは、武藤と小山。2人は離島ステイ留学制度で泉水高校に在籍していた。そして、もう一人、吹奏楽部顧問の浦川先生。円華に関わり続ける人たちがいることが、温かく心地よい。そのような中、武藤の誘いで五島天文台に円華は出かける。そこで、留学生であるけれど、コロナ禍を受けて東京に戻った同級生の輿が、円華、武藤、小山とオンラインでつながる。五島と東京、離れていてもつながる強さと切なさを感じる。そこに天文台の才津館長も加わる。遠く離れていてもつながる夜空。星の観測だからこそ、共有できるのかもな。星の観測に、そんな魅力も感じた。

    東京都立御崎台高校2年生の柳は物理部に所属。顧問は、国語科の市野先生。小学生の頃、柳は真宙と同じサッカーのチームに所属、真宙にとって憧れの先輩だった。その柳が物理部に所属し、生き生きと活動していた。その背景も徐々に明らかになっていく。また、市野先生の経歴や背景も明らかになっていき、声を出して驚くことになる。

    運動部も文化部も、それまで通りの活動はできない状況。目標としていた大会の中止、日々の活動の制限、読みながら苦しさが膨らむ。それでも前を向いて、できることを見つける強さと、それを共有する仲間がいた。そして、近くで応援する大人がいた。それは、先生であり、家族であった。そこに、作品全体がもつ温かさに包まれていく感覚を得る。

    「スターキャッチコンテスト」をきっかけに、つながる4校の生徒と先生、大人たち。オンラインと星空が、つながりの不思議と魅力を想像させる。そこに、手作りの望遠鏡である空気望遠鏡。その身近な物を使って制作する工夫と壮大な宇宙のつながりに、わくわくしながら、想像を膨らませ読み進めた。星の観測は私の身近にはないけれど、月やオリオン座、北斗七星をみつけると、心が弾み嬉しくなる。星には、それだけ惹かれるものがあるのだろうな。

    辻村さんによる登場人物の細かな描写や次々につながっていく人と人、そこにはこの時代に生きるからこそ、感じられるつながりもあり、胸にぐっとくるものがあった。細かく丁寧な人物描写により、自然とそれぞれの個性溢れる人物に寄り添っていくこととなっていた。人と人のつながりは運でもある。けれど、求めて動いたら巡り合う可能性はあるのかな。人とのつながりと天体観測のわくわくする魅力を感じさせる作品であった。前向きな思いを膨らませて読了し、辻村さんの心地よい作品世界を存分に味わえた。次に手にする辻村さんの作品も楽しみになった。

  • 振り返ると、たいした学生生活を過ごしていない自分ですらかけがえのない特別な時期だったと思う。
    コロナというのは、生命だけでなく、そんな時期も奪うわけで、様々な困難や制限を乗り越えて、やりたいことを勝ち取る学生達の姿に思わず胸が熱くなってしまった。困難はもちろん多くあれど、やっぱり学生だからこそ得られるものもきっとあるんだろうなと思った。
    叶えたいと心から願い、ひたすら努力しても、叶えらなかった悔しい思いをする人が多いのも事実。この小説を通じて、多くの学生さんが多感な時期を一生涯忘れないものになることを、改めて強く願った。

    • mei2catさん
      こんばんは。読了しました。良かった!
      私、長崎出身なのに五島に行ったことなく。星を観に行こうと誓いました!
      こんばんは。読了しました。良かった!
      私、長崎出身なのに五島に行ったことなく。星を観に行こうと誓いました!
      2023/09/15
    • チャオさん
      mei2catさん
      コメントありがとうございます。
      自分も地方出身ですが、意外と行かないところ多いですよね。
      五島は自分も行ってみたくなりま...
      mei2catさん
      コメントありがとうございます。
      自分も地方出身ですが、意外と行かないところ多いですよね。
      五島は自分も行ってみたくなりました。
      天体観測もしたくなりましたし、人を突き動かすパワーを持った素敵な小説でしたね。
      2023/09/15
    • mei2catさん
      ユースケさん
      こんばんは。
      はい、まさに突き動かすパワーを感じた作品でした。
      コメントのお返事ありがとうございました!
      ユースケさん
      こんばんは。
      はい、まさに突き動かすパワーを感じた作品でした。
      コメントのお返事ありがとうございました!
      2023/09/17
  • 茨木県の高校の天文部。渋谷区の中学、長崎の高校、東京の高校の理科部の相互交流をして「夏のスターキャッチコンテスト」を開催する前後の話です。

    コロナ禍に青春を送る中高生の青春群像劇ですが登場人物が多すぎて、どこの学校の人物だったかよくわからなくなったり、青春は私にはあまりにも遠すぎて最後の告白シーンなんて読んでいられないと思いました(笑)。

    この作品のストーリーを紹介するのは私にはちょっと難しいので、この作品とは関係ありませんが、出てくる人物たちと同年代の自分の身内のことを書きます。
    ご興味がない方はスルーしてください。







    私には三人の姪が横浜にいるのですが、今年の夏4年ぶりに三人で家に遊びに来ることになっていました。

    4年間コロナで来られなかったのですが、今年は三人で来る予定でした。(弟と奥さんも最初は来たいといっていましたが、もう下の子たちも大きくなり、5人で来られると泊まる布団が足りないから無理と断りました)。

    一番上の姪は、コロナの年に看護学校に入学しました。そしてついこの間付属の大学病院の看護師として、来年から就職の内定をもらいました。
    入学時はリモートでの授業等で大変だったようです。
    弟の自慢話によると「もう、血液検査だってできるし、注射も打てる、介護だってやってくれるんだ」という話で(当たり前ですが)、私もこのコロナの時代に看護師への夢を諦めなかった姪を誇りに思います。
    家にきたらどういうふうにほめたたえようか思案中でした。

    真ん中の姪は、コロナの年に中学入学でした。真ん中の姪とはちょくちょくLINEをしているのですが、中学では吹奏楽部に入りました。
    この作品にも、コロナの時代に吹奏楽部は非常に難しい部活だと書いてありましたが「トロンボーンを吹いている」というので楽器を借りて吹くのは感染が心配でしたが、そんなことは姪には言えず「コンクールがんばってね」と励ましのLINEを送りつづけました。中二の時、無事に修学旅行にも行くことができ、今は無事卒業して高校生です。

    一番下の姪は、今、小学六年生です。
    一番の趣味は読書という姪です。
    小学四年生の時に弟に「家にあるハリーポッターの全巻セット送ってくれ」と言われ、私の本を段ボールに詰めて二箱送ったところ、わずか1カ月程で全巻読破したという強者です。
    家に来たら、他にはどんな本が好きか聞いて読めそうな本があったらまた送ってあげたいと思っています。

    コロナ禍でも、うちの姪たちは元気そうで何よりでした。

    あと10日したら4年ぶりの再会と思っていたのですが、4、5日前から母の体調が悪くなり、3日前に今回は見送りということになってしまいました。
    秋の連休には来られるといいなと思っています。
    姪たちには是非こちらの星を見て帰ってほしいです。

    • まことさん
      アールグレイさん♪

      ありがとうございます。
      採血の上手な、優秀な看護師さんになるように、私も期待しています。夜勤で、体調崩さないか心配もし...
      アールグレイさん♪

      ありがとうございます。
      採血の上手な、優秀な看護師さんになるように、私も期待しています。夜勤で、体調崩さないか心配もしています。
      2023/08/03
    • アールグレイさん
      暑いよ~!溶けちゃう!

      そうですね>^_^<夜勤だけが心配ですね。
      避けて通れない道だと思うので、ここはタフで居られればと思います。
      きっ...
      暑いよ~!溶けちゃう!

      そうですね>^_^<夜勤だけが心配ですね。
      避けて通れない道だと思うので、ここはタフで居られればと思います。
      きっと、大丈夫!
      2023/08/03
    • まことさん
      アールグレイさん♪

      本当に暑いですね。
      水分補給して、エアコンも適度に使って、熱中症にならないように、気をつけてください。

      夜勤は心配で...
      アールグレイさん♪

      本当に暑いですね。
      水分補給して、エアコンも適度に使って、熱中症にならないように、気をつけてください。

      夜勤は心配ですが、私の血はあまりひいてなさそうなので、大丈夫かと思っています。
      (私だったら、絶対無理(^^ゞ)
      2023/08/03
  • 文句なしの★5!
    本の分厚さに一瞬躊躇したけれども、これだけの登場人物の背景、揺れ動く気持ちを読者に届けようとしたらこうなるのも当然です。
    コロナ禍、部活動や友だちとの関係の歯車が狂っていく。全てコロナのせい!コロナのせいで色々奪われた!と嘆く中高生たち。
    しかしそこから、今だからこそリモートで遠く離れた本来ならば出会わなかったであろう人たちと天体観測で繋がろう!と奮闘していく姿がとても清々しい。
    そして、この物語に出てくる学生たちは、そもそも天文部だったり理科部だったり文化系の人なのです。
    登場人物の1人は自分が入りたかったサッカー部がないので、しぶしぶ文化系の部活に入り、それを恥ずかしく思っているわけです。世の中、同じ感覚の人のなんと多いことか!(どうだろう?この頃は変わってきているのかな?)
    でも、この作品では「みんながこれをやるから、とかじゃなくて、自分がこれをやりたいっていうのを持ってる」人たちがたくさん出てくるのです。
    だけど、そのやりたいことが将来に繋がらないことでもいいんだよ、と教えてくれます。
    さらに、自分を分かってくれない人はもちろんいる、だけど、見ていてくれる人もきちんといるんだ、ということも。
    あー!全国の中高生に読んでもらいたい!
    教科書に載せるのは大変そうなので、課題図書でぜひ(о´∀`о)

    • アールグレイさん
      こっとんさん★こんにちは

      この話、凄く読後感が良く、ホロッとするところもある最高の白辻村でした。
      この本を読んでから、天体に少し興味を持つ...
      こっとんさん★こんにちは

      この話、凄く読後感が良く、ホロッとするところもある最高の白辻村でした。
      この本を読んでから、天体に少し興味を持つようにもなりました。
      昨日早朝は、ウルフムーンという今年最初の満月だったとのこと。
      ,゜.:。+゜(-_☆),゜.:。+



      2024/01/27
    • こっとんさん
      アールグレイさん、こんにちは♪
      ウルフムーン( °_° )
      気になってちょっと調べてみたら、毎月色々な○○ムーンがあるのですね!
      日本でも○...
      アールグレイさん、こんにちは♪
      ウルフムーン( °_° )
      気になってちょっと調べてみたら、毎月色々な○○ムーンがあるのですね!
      日本でも○○月って様々な呼び方があるし、国が違っても時代が違っても月や星って人の心を惹き付けるのですねー゚+.゚(´▽`人)゚+.゚
      2024/01/27
  • コロナ禍でソーシャルディスタンスを強いられた中高生たちはマスク姿のまま3年間すごし同級生の素顔さえ知らずに卒業してしまった子もいるとか、卒業アルバムの顔写真はどんな思いで眺めるのでしょうね。
    さて、物語はオンラインで希薄になった心を夜空がつなぐ青春ものです。舞台は2020年人類を襲ったウイルスに緊急事態宣言とか自粛ムードに活動が制限されるなかの茨城に東京、長崎の3か所を結びます。中高生たちの夢はそんな中にあっても望みをつないで素敵でした。亜紗は茨城の高2、真宙(まひろ)は渋谷区立の中1で27人しかいない新入生で唯一の男子とか、高3の円華(まどか)は五島列島の旅館の娘。その他大勢と登場人物多すぎて把握しきれませんでした。
    自作の望遠鏡で制限時間内により多くの星を捕捉する「スターキャッチコンテスト」の開催を企画していきます。
    反射式望遠鏡の一種であるナスミス式とか、表現力豊かな深月さんの文章力をもってしても私にはいまいちピンとこなかったのですが、ググってフォトみたら秒で判りました。接眼部分(覗き穴)が回転軸(支点)にあり固定されてて見やすいってことなんですね。普通の反射式では高い位置にある星を覗く場合は脚立を使ったりして観測しなければいけないところ車いすの人でも容易に観測できるメリットがあるわけです。
    凹面鏡に届く光は何光年も離れた過去の微かな光たち、それらを集めて観測するって無茶ロマンを感じました。
    競技に使われるのはこれと違う方式の望遠鏡で同じ仕様のものを組立てて使うようですが細長い筒状の一般的な望遠鏡のようでした。
    東京の夜空と五島列島ではハンデがありそう。
    好きなことが直接仕事に結ぶことは稀だと思うのですが、人生を豊かにするのは、役に立たないところにある興味や好奇心だって子供のように目を輝やかせて言える綿引先生の言葉が魅力的でした。

    • かなさん
      つくねさん、青春ですよねっ!!
      コロナ禍であっても、子供たちは
      その中でどうやって過ごせばいいのか、
      色んな事を考えて、成長していくも...
      つくねさん、青春ですよねっ!!
      コロナ禍であっても、子供たちは
      その中でどうやって過ごせばいいのか、
      色んな事を考えて、成長していくものなんですよね(*'▽')
      先日、下の子の卒業アルバムをみて
      やっぱりマスク姿のが多くってね…がっかりしたんですけど、
      でもその時期にだっていい思い出もできているはずって思いました。
      2024/03/18
    • つくねさん
      かなさん、こんばんわ♪

      色んなこと考えて成長していきますね。
      下のお子さんの卒業アルバムマスク姿多かったんですね
      コロナ禍でも逞し...
      かなさん、こんばんわ♪

      色んなこと考えて成長していきますね。
      下のお子さんの卒業アルバムマスク姿多かったんですね
      コロナ禍でも逞しくいい思い出もできてますよね。
      2024/03/18
  •  物語は、2020年春、コロナ禍で全国の学校が緊急事態宣言を受けて休校、授業や行事・部活動が制限されていた時期から始まります。
     茨城・東京渋谷・長崎(五島列島)の中高生たちが物語の中心です。

     前半は、上記3箇所の中高生の非日常的な「日常」が、視点を切り替えながら綴られます。
     未知の感染症故の不安や葛藤が、気持ちの行き違いを生み、大人以上の複雑な思いを抱えていたはずで、この辺が巧みに描写に織り込まれています。
     他校の部活はどうしているのかと、自校から外へ目を向けた時から点と点が「繋がり」始め、自作の天体望遠鏡製作とスターキャッチコンテストへと展開していきます。

     後半、オンライン会議を繰り返す中で、製作や天文についての質疑に止まらず、中高の校種の垣根を超えた少年少女が、対話を通して相手の立場・状況を聴いて想像・理解し、アイディアを出し合っていく場面‥とてもよかったです。
     学校ってある意味閉鎖空間なので、学校外の多様な人と関わる経験を積んで、広い視野をもつことは大事だし、人の成長には欠かせませんね。

     物語は、一時的な繋がりと思えた関係が、更に収束せずに拡大していきます。この展開うまいです。
     この子たちの未来は明るい! 大人にとっても明日への活力をもらえるような良質な物語で、素直に爽やかに感動できる〝白〟辻村深月さんでした。

  • コロナ禍の青春ストーリー。
    苦しい、辛い、誰が悪いわけでも無い。学生という多感な時期に様々な物を取り上げられ、いつ明けるかすらもわからない状況は自身の子供を見ていても本当に辛かった。だからこそ、入り込めて痛いほど気持ちがわかる。そんな本。

  • はぁーーーーーー!!!
    青春!!!!!



    スピンオフ作品を読んだ時から
    楽しみにしていた一冊。


    あっという間に読み終わりました(^^)


    誰も経験したことのないコロナ禍で
    人が疑心暗鬼になってて
    『誰も悪くない』、『今だけ』、『落ち着くまで』
    そう言いながら
    いろんな人が傷ついたり、傷つけたりしていた時期
    コロナの始まりの頃を思い出したりしました。


    いろんな状況の子たちがいて
    混乱するところもあるんですが、
    心情を丁寧に書かれていて
    あーそうだよな、そうだったよなって。
    自分のことのように共感できました。
    辻村さん、本当に中高生の心情を描くのが
    うまいですよね


    本当に誰も悪くない。
    悪いのはコロナ

    人にはいろんな考え方があって
    みんな自分を守らなきゃいけなくて
    大切な人を守らなきゃいけなくて。
    未知のものが怖くて。
    とにかく制限して、様子を見てたあの時期。


    今完全に落ち着いたわけではないけど
    やっぱり本当におかしな時期だったなと
    改めて思います。



    そんな中でもそれぞれがみんなが色々考えたり
    葛藤したり成長していく様子が
    胸熱でした!!!笑
    いろんなセリフが胸にささりました!


    先生同士のやりとりもよかったなー
    綿引先生好きです!
    あんな先生に出会いたかったけど
    大人になって、あんな風に子どもを信じて
    任せる難しさがよくわかります。
    あんな風に子どもたちと接していけるだろうか。


    ちょっと甘酸っぱい恋の話も私は好きです!!笑


    あーいい話だったなぁー
    とてもいい読了感でした(^^)

  • 「違う場所にいても、空はひとつだから」

    なんか、分かります?映画の予告編とかでよくあるひとつのセリフきっかけで、音楽が鳴り始めて急に色々始まるパターンのやつ
    急に世界が動き出す感じの、急にスピード感が上がる感じの
    あれです

    なんかゾワゾワしました
    動き始めた!って気持ちがしました
    辻村深月さんうまいわ!って思いました

    うーん、読んでほしいなー

    はい、コロナですよ
    コロナテーマ小説、あんま好きじゃないんだけど、これは面白かった
    面白かったけど色々考えました

    今ちょっと落ち着いてきて「コロナだったから経験出来たこともあるんやで」って大人たちが子どもたちに押し付けているのがとっても嫌でたまらなかったんだけど、この作品はそこに対するアンチテーゼがちゃんと示されていてちょっと気持ち良かったんよね

    さすが辻村深月さんだ!

    そしてそして「学習」と「科学」論争ですよ
    知らない人は置いていきますが、わいら世代はこの論争は凄い盛り上がるんですよね
    ちなみにわいは断然「科学」でした
    「学習」なんか、ちょっと読み物があるくらいやん、おもんな!
    「科学」の付録のクオリティの高さを見よ!とか思ってました
    男は「科学」よなーってなんだかよくわかんないこと思ってました

    ちなみにどっちも買ってもらってたよ!っていういいとこの子は論争の参加資格なしですw

    • ひまわりめろんさん
      クマさん

      わいは「りぼん」「マーガレット」「花とゆめ」は姉が、「ジャンプ」「マガジン」「サンデー」は兄が買ってたので
      全兵力を横溝正史とク...
      クマさん

      わいは「りぼん」「マーガレット」「花とゆめ」は姉が、「ジャンプ」「マガジン」「サンデー」は兄が買ってたので
      全兵力を横溝正史とクリスティとクイーンとカーとクロフツとチェスタートンと星新一先生と北杜夫先生と井上靖さんに振り向けてました
      2023/07/14
    • みきっちさん
      読んでみたいです!
      そして科学推しです!
      読んでみたいです!
      そして科学推しです!
      2023/07/27
    • ひまわりめろんさん
      読んでください!
      やっぱ科学ですよね~
      科学読んで宇宙飛行士目指さなきゃですよね~
      読んでください!
      やっぱ科学ですよね~
      科学読んで宇宙飛行士目指さなきゃですよね~
      2023/07/27
  •  ずいぶん前に図書館で予約し、このほどやっと読めましたっ!「この夏の星を見る」なのに、季節はもう冬、年末になっちゃいましたね(汗)。

     コロナ禍での緊急事態宣言下の2020年…この年は忘れられないですよね…未知のウィルスに対して治療法も、感染予防対策も確立していなければワクチンもない…ちょうど、同年代の子供がいる私にとって、この作品を読めたことは、あの頃の子どもたちの思いを知るいいきっかけになりました。一斉休校になって友達と逢うこともできず、学校行事もことごとく中止になりましたよね…。大事な大事な時期をコロナに振り回されましたよね…。でも、この時期をきっかけにオンラインが急速に普及し、子どもたちがオンラインに慣れるのも早かったですよねぇ…必要に迫られてのことだけど、ホントびっくりするくらい早くて…私は唖然としてましたねぇ…。

     この作品は、茨城・長崎・東京の中学高校をオンラインでつないで、望遠鏡で星を捉えるスピードを競う「スターキャッチコンテスト」を開催することになった。望遠鏡を作るために必要なことや、事前打ち合わせをオンラインで進める中、新たなつながりができそれが楽しみになっていく…。そして、それぞれの地域の中学や高校でも、共通の目的を持ってつながった仲間たちが、今置かれている家庭環境やその後の進路、友人関係、恋愛などに悩み葛藤を抱えながらも、自分の進むべき道を模索していくストーリー。

     コロナ禍ならではということもあったけれど、青春だなぁ…!!この年代ならではの甘酸っぱい思い…もう、辻村深月さん、ホント上手いなぁ…。その後のメンバーが、どんな形で、どんな風な大人になっていくのか…。でも、子どもたちって、大人が思っている以上に色んな事を考えていてそれに立ち向かう力を持っているんだから、だから、この先も大丈夫って思わせてもらいました。

    • つくねさん
      かなさーーん、こんにちはww

      この作品読まれたんですね( *´艸`)
      最近、ツジムラ―になってるものでww
      私も予約してるんですが...
      かなさーーん、こんにちはww

      この作品読まれたんですね( *´艸`)
      最近、ツジムラ―になってるものでww
      私も予約してるんですが当分回ってきそうにありません
      はやく読んでみたいって思ってるんですがもう冬ですもんね。
      でも、いいなぁww
      2023/12/12
    • かなさん
      しじみさん、こんばんは(*^^*)
      ずいぶん前に、図書館予約して
      やぁ~っと読めたのが今です!
      でもこの作品もすごくよかったですよ♪
      ...
      しじみさん、こんばんは(*^^*)
      ずいぶん前に、図書館予約して
      やぁ~っと読めたのが今です!
      でもこの作品もすごくよかったですよ♪
      しじみさんも早く読めるといいですね。

      ホント、辻村深月さんの作品ってハマりますよねぇ~
      私も読みたい辻村深月さんの作品たくさんあります(*'▽')
      2023/12/12
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著者プロフィール

1980年山梨県生まれ。2004年『冷たい校舎の時は止まる』で第31回メフィスト賞を受賞しデビュー。11年『ツナグ』で第32回吉川英治文学新人賞、12年『鍵のない夢を見る』で第147回直木三十五賞、18年『かがみの孤城』で第15回本屋大賞を受賞。『ふちなしのかがみ』『きのうの影ふみ』『ゼロ、ハチ、ゼロ、ナナ。』『本日は大安なり』『オーダーメイド殺人クラブ』『噛みあわない会話と、ある過去について』『傲慢と善良』『琥珀の夏』『闇祓』『レジェンドアニメ!』など著書多数。

「2023年 『この夏の星を見る』 で使われていた紹介文から引用しています。」

辻村深月の作品

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