遠き落日(上) (角川文庫)

著者 :
  • KADOKAWA
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  • Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041307144

作品紹介・あらすじ

猪苗代湖畔の貧農の家に生まれ、苦難の中上京、医学の階段を登りアメリカへ。異境での超人的な研究と活躍、野口英世の劇的な生涯と医学と人間性を鋭く描破した、吉川英治賞受賞。

感想・レビュー・書評

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  • 野口英世の伝記。
    「細菌」の天才であり、「借金」の天才でもある。
    決して優れた人格とは言えないが、極貧からの大医学者への成り上がりは、このエゴイストで強引な性格なしではなし得なかったであろう。
    借金しても豪遊して全部使い切り、また借金、豪遊の無限ループ。

    改名の件は、本書では、地元の別の野口姓の赤ちゃんに清作と名付けさせたとあるが、ウィキペディアでは、清作という名の人を野口姓の家に養子に行かせたとある。
    どちらでも構わないが、改名するためにそこまでするかと思っていたが、英世の性格ならどんな手を使ってでも改名するんだろうなと、本書を読んで改めて思った。

  • 千円札の肖像になっている野口英世の生涯を描いた本。野口英世は優れた研究者であった反面、非常に人間臭い一面も持っていたことを伺わせる。一読すれば、完璧ではない自分に対して、少し優しい気持ちになれるかもしれない。
    (一般理数科 M先生)

    *本校で所蔵しているのは1979年9月発行の単行本版です。上下巻あるうちの上巻のみ登録しています。

    ▽配架場所・貸出状況はこちら(旭川工業高等専門学校蔵書検索)
    https://libopac3-c.nagaokaut.ac.jp/opac/opac_details/?kscode=004&amode=11&bibid=1010108806

  • 思い描いていた野口英世像が無残に崩れ落ちていく。
    しかも、ものすごい勢いで。

    友人、恩師など、母を除くすべての知人から金を借りまくって、返す気は一向にない。
    それどころか、「自分は偉いから金をもらうのは当然だ」とすら思っている。
    育ちの悪さのせいだと周囲の人に思われても仕方がないくらい、とことん借りまくる。

    婚約者の家族から、渡米のための支度金として二百円を頂戴するが、送別会を開いて一晩のうちにそのほとんどを使ってしまう。
    このままでは婚約詐欺になる。
    英世、絶体絶命のピンチ!
    しかし、ここまで滅茶苦茶だとむしろ笑えたりもするのである。

    幼少時の貧しさ、母シカの根性、会津の風土、そういったものがすべて影響して、偉大な学者・野口英世が生まれたのであろう。

  • 野口英世の伝記。
    知らないことが多すぎた。
    私の知っている野口英世は貧乏な家に生まれ、幼い頃に左手に大火傷を負ったがそのハンデをものともせずに偉人となった人。
    だけど、そうなる間の話では遊び人で金遣いが荒く、方々に借金をしていたとか…
    野口英世は本人の努力も大きかったが、周りの人たちの理解と大きな援助がなければ世に出なかったと言えるだろう。

    2016.2.1

  • 「生物と無生物のあいだ」にも出てきた野口英世。実際にこの本を読んで感じたのは、この著名人が人格破綻者であり、努力の天才だったんだということ。とにかく金遣いと虚栄心、負けん気が凄まじい。波瀾万丈の人生?成り上がり?とはこの人のことをいうんだろうな。初めて渡辺淳一さんの作品を読んだけど、性格や人間関係が事細かに調べられ、より身近に感じることで話に引き込まれてしまった。さすが人気作家。下巻が楽しみ。^ ^

  • 野口英世のあまりにもだらしない性格にがっかり。勉強に没頭する姿にも感心するが、性格が悪すぎでしょ。

  • 渡辺淳一氏追悼読書。レビューは最終巻で。

  • 野口英世の伝記。農村育ちで左手をやけどし、勉学に専念。左手を利用しつつ、いろいろな人から資金を集め、アメリカへ。寝る間も惜しんだ研究で世界医学界の頂点に迫るが、その中のものは後世において誤りだったと証明される。
    自ら発表した内容が誤りだと薄々感じつつ、証明もできず、きつい。

  • 福島の片田舎でうまれた 野口清作(のち 英世に改名)は、
    野口シカという 母親のまずしくあっても懸命な生活によって
    支えられた。
    祖父、父親は、ほとんど家庭を顧みず・・・・
    酒に明け暮れる生活をしていた。

    清作は4歳のときにやけどをして・・
    左手をぼろ布に隠して、ただひたすらに
    勉強に励む少年だった。
    そこで、頭角を現していく・・・

    人を頼って生きていく という世渡りの上手な野口清作がいる。
    三城潟の八子弥寿平
    猪苗代高等小学校の 小林栄
    会津若松で、医者を目指して 渡部鼎医師の下で、勉強
    ドイツ語 フランス語 英語を学ぶ・・・。
    東京で 血脇守之助に 救いを求める。

    順天堂 北里研究所 ・・・・
    北里研究所を訪問した フレキスナー教授。

    すごろくのような 出世の仕方である。
    アメリカに着いたのは 明治33(1900)年12月29日。

    清作の持つ特徴は、
    集中力は、人並みはずれている。
    文章力があり、美辞麗句を並べることがうまい。
    語学力に長けている。物怖じせずに話しかける。
    借金をする能力・・・人を見抜く能力に長けている。
    金銭感覚がなく、
    金が入ったり、酒を飲んだりすると見境がない。
    計画性というものがないが、
    上を目指すことだけははっきりしている。

    『遠き落日』 を半分読んで 
    野口清作のひとなみはずれた 強靭な集中力と
    破天荒な生活には 目を瞠らざるを得ない・・。
    驚きました。
    『一芸は、身をたすける。』

    日本にいたら 野口英世にはなれなかった。
    夏目漱石の屈折した イギリス生活とは
    なぜこうも違うのだろうか?

    渡辺淳一がこういう種類の本を書くとは・・・
    そのことも驚きました。

  • 野口英世の伝記は作家により都合よく書き直されている。回りの人に借金をかさね男芸者と言われた裏の面まで書いたことにより深みが出ている

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著者プロフィール

1933年北海道生まれ。札幌医科大学卒。1970年『光と影』で直木賞。80年『遠き落日』『長崎ロシア遊女館』で吉川英治文学賞受賞。2003年には菊池寛賞を受賞。著書は『失楽園』『鈍感力』など多数。2014年没。

「2021年 『いのちを守る 医療時代小説傑作選』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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