- Amazon.co.jp ・本 (368ページ)
- / ISBN・EAN: 9784041310069
作品紹介・あらすじ
戦中派の矢口は激しい生命の燃焼を求めてサラリーマンを廃業、安売りの薬局を始めた。メーカーは安売りをやめさせようと執拗に圧力を加えるが……大手スーパー創業者をモデルに話題を呼んだ傑作長編。
感想・レビュー・書評
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「この経済小説がおもしろい!」に紹介されていた本。
城山三郎さんは企業小説の分野では著名な作家さんですが、
著書の本を読むのはこれがやっとこさ2冊目。
しかし、期待以上の面白さにぐいぐい引き込まれてしまいました。
ストーリーはダイエー創業者の中内功さんをモデルとした
スーパーマーケットの企業物語。
「安い商品を買う」という行為は
ごく当たり前のことだと思っていましたが、
昔は物の値段は統制されていたんですね。。
そんな基本的なことから知らなかった自分でも、
主人公がどうやって創造的価格破壊をもたらしたのかが、
ストーリー形式でよく理解できました。
主人公の熱意というか執念が伝わってきます。
この小説を読んで、ウィキペディアで中内さんのことを調べてみました。
小説内で出てきた家電メーカーとの争いは、
ダイエーv.s.松下電器の戦いのことだったのかとか、
色々知ることができて勉強になりました。
経営の神様といわれていた松下幸之助も
家電製品の価格を守るために中内さんと対立していたのか。。
(もちろんどちらが正しいかというのは、
松下側の言い分も確認する必要がありますが。)
スーパーマーケットの歴史を疑似体験できるという意味で、
本当によい小説だと思います。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
流通業界のカリスマ中内功さんをモデルにした小説です。メーカーとのし烈な闘いは読む人をは引き込みます。私も流通業界で働く事を夢みてダ⚪エーの入社試験を受けましたか見事にご縁がありませんでした(笑)
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流通の仕組みと闇、価格の裏側を解りやすく描きながらも、説明調に終始しない確かな筆力。
また主人公の戦争体験についての描写も強烈に鮮明で、彼の切迫感がひしひしと伝わり、城山三郎氏ならではの作品だと感じた。
主人公矢口はダイエーの創業者をモデルにされているらしいが、彼の人生を追うのではなく、あくまでも物語の中心を貫くのは「価格破壊」の灯火について。
価格破壊=たたき売り、ではない。
価格を破壊できる体制を整え、勝負する。
矢口の行動を見るにつれ、発想の転換、忍耐力の重要さをより認識する。
教科書的な本にもなるが、彼とは対極に位置するメーカーに在籍する身にとっては苦々しい気持ちにもなった。 -
城山三郎著『価格破壊』角川文庫(1975)
当時の流通機構、再販価格に執拗に挑戦し、流通革命を目指す男の一生を描いている。この小説のスーパーマーケットにおける流通革命の実態はダイエーが元になっているようだが、当時の経済の側面を的確に捉えた内容であり、傑作。主人公の信念、情熱が心に焼きつく。 -
いや凄かった
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城山三郎『価格破壊』角川文庫 読了。日本の流通機構に革命をもたらしたダイエー創業者 中内功がモデルの経済小説。大衆に寄り添う徹底した企業理念のもと、再販制度にまみれた暗黒大陸に明かりを灯す。あくなき創造的価格破壊によって大手に立ち向かう姿は痛快。凋落を描く幻の続編を想像してみたい。
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戦後のエコノミックアニマルを活写した、ある意味ロビンソンクルーソーのような行動小説。商売繁盛の為の徹底したハングリー精神の出発点は戦場での臨死体験にあるというのがいかにも戦後というべきか。死にそうな思いをした人は強い。
主人公は信念に突き進んで行く行動の塊で、葛藤らしい葛藤も無いのに対比して、妻や部下など彼を取り巻く人物の揺れ動く内面描写は、丁寧に描かれている。この辺りがさすがというものか。 -
流通革命、小売産業などに興味ある人はかなり楽しめて読めると思う。胸が熱くなるシーンが多かった。全てのものは出した瞬間に腐り出している。
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一度死んだ男は強い。”戦中派”という言葉がすでに死後になりつつある現在、こういう男たちが日本の戦後を支えたのだと、感じさせられる。