- Amazon.co.jp ・本 (242ページ)
- / ISBN・EAN: 9784041835050
作品紹介・あらすじ
理加子は29歳になっても髪をのばすことも、気ままに電話することも両親から禁止されている。そんな彼女の前に江木という男が現れ、強引に接近してくる……。「毒親育ち」を扱った先駆けの小説。
感想・レビュー・書評
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私も父親に性を封じられ生きてきたので、よく分かる。そのせいで内なる健やかな性が私の中でねじれているのも気付いていた。
きみだけには夢を語ろう、今まで何人もの女に見せてきたのだろう、技巧として見せるわけではなく、彼の内の健やかな性の神経は無意識に女に媚態を示し得るのだ。
だが、見せかけて、さりげなくにおわせる行為にたまらない不潔さを、リカコは感じた。
女になりたい。
すねたりむくれたりウィンドーに飾られた赤いハイヒールが欲しいと言ったりしてみたかった。頭脳ではなく肉体で考えるひとときが欲しかった。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
子どもとして、女としてのあるべき姿を親の圧力を意識して、自分を押し殺してきた女性(理加子)の物語。
私は上記2つのあるべき姿に共感したので、その理由を書きます。
下記ドールハウスのレビューというよりも、私の暗い過去の告白になっています。
■子どもとして
主人公の理加子は一人っ子ですが、私は3人姉妹の末っ子です。
わが家は様々な理由により、両親と長女がうつ病です。
長女と次女は5年ほど前から一人暮らしをしているため、私は一人っ子状態です。
姉たちとは歳が離れているため、私からするとふたりは自由に生きていたように感じてしまいます。
そのため、私は小さい時から両親に「お前は親の言うことを聞くよな?」と言われ続けてきました。【ここが理加子と共通する部分です】
じゃあ反発すればいいじゃない、と思うかもしれませんが、うつ病の人に反発するとすごいことになりますよ?
エピソードはたくさんありますが、一番トラウマになっているものを書きます。
小学校6年生のある日の夜、家には私と母しかいませんでした。
当時父がしでかしたあることが原因で、私は母の逆鱗に触れることをポロっと言ってしまいました。
すると頭がおかしくなった母は灯油をリビングにまき散らし、ライターで火をつけようとしました。
私は泣きながら必死に止め、初めて「110番」に電話し、助けを求めました。
この経験から私は自由を求めたり、反発するのではなく、親を怒らせないように家が平和であれるように努めようと決めました。
長女は小さい時から父に暴力を振るわれていました。骨折をしたこともあります。
当時の私は本当にバカで、長女はそうやって育てられるものなのだと思っていました。
今はなぜ助けてあげなかったんだろうと悔やまれるばかりで、申し訳ない気持ちです。
そんな長女からはときどき「自分だけ幸せになれると思うなよ」と電話がかかってきます。
次女は頭がおかしい両親と姉をずっと見ていると自分まで頭がおかしくなりそうだと思っていたそうです。
だから、あまり家に寄りつかず、家で事件があるときは決まって彼女はうまいこと外出していました。
しかし、それは彼女が見つけた自分を守る方法であり、私は正しいと感じています。
そんな次女からはときどき「お父さんとお母さんのこと任せっきりにしてごめんね」と電話がかかってきます。
私はいったいどうすればいいんだろう…と思いつつも、事件が無い時の家の状態に私は甘えていたのでしょう。
しかし、ドールハウスを読んで、自分が大人にならなければと決心しました。
一人暮らしをすることを両親に宣言すると、母に首を絞められましたが、その後正気に戻った母からメールが来ました。
内容は、自分の心の葛藤と私の背中を押してくれるものでした。
理加子の両親も正気の沙汰ではないように思います。私も悲しいことに父、母、長女の本当?の姿を見たのは幼稚園で止まっているように思います。(おかしくなったのは私が小学校1年生のときなので)
本当にうつ病って憎いです。
■女として
作者はキリスト教概念により女としてあるべき姿の軸を持っています。
私は小さいころのある思い込みから、作者のこの軸に共感できました。
小学校2年生のある日
私は近所の男の子Aと一緒に、男の子Bの家の庭に忍び込みました。
Bはリビングのテレビであるものを見ていました。AVでした。
当時の私はなにかもわからないし、特に何とも思いませんでしたが、なんとなくあまり良い印象は受けませんでした。
同じく小学校2年生の夏
「神様もう少しだけ」というHIVに感染した女子高生の恋物語を描いたドラマが流行りました。
私は小さいころからドラマが好きなので見ていました。
その時に持った感想は、「SEXは不良がするもので、しちゃいけないことなんだな。」でした。
小学校6年生の保健体育の授業
赤ちゃんは男性の精子と女性の卵子がくっついて受精卵になることでできるということを学びました。
この授業では性行為については触れませんでした。
当時の私は、よくわからないけれど仲の良い夫婦はいつも近くにいるから空気中をただようかなんかして受精するのかなと思っていました。
中学校1年生の保健体育の授業
性行為によって受精が行われるということを初めて知って、衝撃を受けショックでした。
不純な行為だと思っていたもので新しい命ができるなんて…
じゃあなんで援助交際とか、AVに出るまた、快楽のたえにそれを見るとか、軽々しくそんなことする人がいるの?!と悲しくなりました。
以上の経験から、理加子が避妊を強く求めて江木に引かれたりとか、に納得がいったのでした。
長々と徒然なるままに書いてしましましたが、ドールハウスは暗いけれど、私の背中を押してくれる作品になりました。
私は最後号泣しました。
23歳のこのときに読んだからこそなのかな。紹介してくださった方、ありがとうございます。 -
読んでいてもどかしく、苦しくも、最後の主人公の痛快な笑いによって、読後は救われる小説。題名の通り、まさに現代の『人形の家』か。
あとがきにあったように、未熟を掬う(救うではない)物語である。的確に描写する=掬うほど、救いになることはない。その順番を間違えてはいけない。 -
毒親に支配され縛り付けられた29歳の女性が主人公の物語。
一人の男性と出会ったことで良い方向に変わって行くと思ったが…。
今後に幸あらんことを、と願ってしまいました。 -
この人の本は毎度毎度世界観がすごい。なんとも言えない感じなんだけど、視点というか何というか。普通という目線を、普通じゃない視点から描くっていうすごい技法。
なんか自分が普通なのか普通じゃないのかわからなくなるほどに、何が普通か基準がズレてくる。
どこの視点が普通で違うのかわからなくなる。
どんな風に展開するのか、ラストまで結構ハラハラします。なんとも言えない、アルミホイルを噛み続けるようなイヤーな、ずーっとイヤーな感じのままオチまで続く。
すごく嫌なんじゃなくて、なんか?ん?嫌だなぁ嫌だなぁて、ラストまで思わせ続ける、そんな別種な一冊です!!! -
家族という呪縛から逃れていく過程を描いた作品は何度か読んだが、この「ドールハウス」は地味ながらもリアルな感じがする。主人公が自分の常識が世間とは違うということに気づくシーンとか、友達とのコミュニケーションに自身をなくすところとか。子供の頃、親にドリフの番組を見させてもらえなかった子がクラスで話題についていけなかったりする的な、小さなことだけど子供にとってはカルチャーショックだったりする。そんな各家庭という文化差がまるで異国の文化のように感じたりしたなあ。そういう意味で恋愛というものは、すごい破壊力のあるライフイベント。主人公に遅れた反抗期がくるきっかけとなったのだから。