三大陸周遊記 (角川文庫 リバイバル・コレクション K 58)

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  • Amazon.co.jp ・本 (344ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784043017010

感想・レビュー・書評

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  • 教科書で名前だけは知っているけどどんな本かは知らない、という本を読んでみよう、が最近のプチマイブームなので手に取ってみた。

    抄訳。原書はこの3倍くらいあるらしい。
    四半世紀に渡る大旅行が、淡々とした筆致で口述筆記されている。本人が立派な神学者だったからだろうが、(いくつかの例外は除き)どこに行っても歓待されているのは、意外だった。昔から世界はそこそこ国際的でかつ寛容だったようだ。

    道中色んな人がどんどん死んでいくのだが、作者は何度熱病に罹ろうが、黒死病の中を通過しようが、生き延びている、という点、偉業を達成するにはまず体力なんだなあと思った。


    P59
    メッカの市民は、行いの正しいこと、親切なこと、不幸な人々に対し物惜しみをしないこと、異国の者を大切にすることなどの点でとくにすぐれている。

  • 訳:前嶋信次、原書名:Tūhfat Annathar Fi Ghara'ib Al-Amsar Wa Aga'ib Al-Asfar(Abū Abd allāh Muhammad ibn Abd allāh ibn Muhammad al-Rawātī al-Tanjī)

  • イブン・バットゥータ『三大陸周遊記』角川文庫、1961年

     アブー・アブダルラー・ムハンマド・イブン・バットゥータ(1304年〜1377年)の28年にわたる旅行(1325年〜53年)を記した書物で、正式名称は『都市の珍奇さと旅路の異聞に興味をもつ人々への贈物』であり、1355年から口述し、モロッコに君臨したマリーン朝のアブー・イナーン王の命でイブン・ジュザイが書き記した。アラブ世界でも忘れ去られていたのを、ロシアのゼーツェンが紹介(1808年)し、本格的な紹介はフランスがアルジェリアの征服してからの1859年である。
     旅程は、まずメッカへの旅だが、故郷タンジャを旅立ち、アルジェ・チュニス・トリポリ・アレクサンドリアをへて、カイロからナイル川に沿って北上し、紅海をわたってアラビヤ半島にわたるつもりだったが果たせず、カイロに戻って、シリアへいき、ダマスカス・メジナ・メッカへいく。さらにペルシャへいき、イスファーハーン・シーラーズなどを旅して、バグダードへいき、チグリス河を北上、またメッカに戻って、足かけ三年滞在して学ぶ。つぎに海にでてアフリカに旅立ち、ソマリアをへてザンジバルへいき、キルワまで達してアラビア半島の先端をめぐり、ホルムズをへてアラビア半島にもどる。つづいて、トルコをめぐり、アナトリアを南からS字上に旅して、黒海をわたり、キプチャク・ハン国の大平原へいき、東ヨーロッパをへてコンスタチノープルにいく。さらに中央アジアへいき、ブハーラ、サマルカンドなどを旅して、インドヘつく。インドではムハンマド・イブン・トゥグラックにデリーの法官にされたが、6年間をすごしたが、王の不興を買い、修行僧になる。1342年、インド王から中国への使節を命ぜられ、デリーを出発するが、カリカットで遭難、マルティーヴ諸島で法官となるが、当地の実力者と不和になり、セイロンにいき、もう一度マルディーヴにもどり、ベンガル・アッサム・スマトラをへて1345年、福建の泉州(ザイトゥーン)につき、広東・杭州をへて北京にいたる。南海を経由し、インドを去り、ホルムズ・バグダード・アレッポをへて、メッカへ。1350年、カイロよりフェズにつき、モロッコ王に会い、故郷タンジャにかえる。翌年、スペインにいき、さらにアフリカ西海岸にいき、サハラの奥地マールーリにつく。1354年フェズ(モロッコ)に住み、以降、フェズに住んだ。
     イブン・バットゥータは基本的にイスラム社会を旅したのだが、ムスリムのいるところであれば、土地の実力者が必ず滞在費や旅費を出してくれるので、生活にはあまり困らなかった。ヒンドゥー教徒に襲われたときに、飢えて死にかけるが、イスラム世界では(中国であっても)必ず誰かが助けてくれるのである。記述はいたって冷静で、土地の産物、料理、建築などを冷静にみている。旅をつづけるうちに金持ちになり、インドについたときには財産や奴隷などを多く抱えていた。異教徒に襲われて一旦、着物以外はすべて失っているが、それでも有名な旅行家ということで各地で鄭重に扱われて、財産を回復している。女奴隷や旅先で結婚した妻との間には、何人も子が生まれている。
     オリーブ油の石鹸・メッカやコンスタンティノープル、ホルムズの塩細工、杭州や北京の記述などは大変おもしろい。

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著者プロフィール

アラビアの旅行家。北部モロッコに生まれ、22歳の時に聖地メッカの巡礼を志して故郷を離れ、以後29年間にわたり、文字通り三大陸を旅行。この間、滞在地で法官に任ぜられるなど高い教養の持ち主でもあった。

「2023年 『三大陸周遊記』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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