泣かない子供 (角川文庫)

著者 :
  • KADOKAWA
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  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784043480029

作品紹介・あらすじ

子供から少女へ、少女から女へ……時を飛び越えて浮かんでは留まる遠近の記憶、あやふやに揺れる季節の中でも変わらぬ周囲へのまなざし。こだわりの時間を柔らかに、せつなく描いたエッセイ集。

感想・レビュー・書評

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  • 小説と違って、江國さん本人の直接的な感じ方が文字化されてるのを読めるのが楽しかった。
    そうなのそうなの、と思うことをチャーミングに文字化してて、よけい江國さんが好きになった。

    あとがきの後にもそうなの!の感動が続いてて、今度は俵万智さんが気になった。

  • 多分今年(2023年)は江國さんの本をたくさん読んだと思う。特にエッセイ。

    いつも彼女が見せてくれる世界に見事にどっぷり浸かっていくたしですが、そんな世界を生み出す彼女が、私と同じくらいの年齢の時にどんなことを考えていたんだろう、と思って手に取った本。

    結果分かったことは、江國さんは、ずーーっと、昔から、江國さんだったってこと笑(とてもいい意味で)
    どの時代のエッセイ読んでも変わらない少女の姿がみえて、嬉しくなる。

    _φ(・_・

    132 夜の歩道橋で
    結婚するというのがどういうことかというと、いちばんなりたくない女に、いちばん好きな人の前でなってしまうということなのだ。いやになる。

    198
    ”眠る”
    あらゆる動詞の中で、いちばんうっとりする動詞。
    言葉の響きも佇まいも、とけそうでしずかで、まるでゆめのよう。まるくて地味な飴玉に似ている。私はいくらでも眠れるし、眠っている人をじっと見ているのも好きだ。

    180なぜ書くか(途中略)
    どういうつもりで物を書いたりしているのだ、と詰問されれば、どうしてもそこに自分で行ってみたくて、とこたえるしかない。
    どんなに短い話でも、私はそれを書いているあいだ、たった一人でそこにいる。いままで誰も来たことのないところ、誰も見たことのない風景。その果てしなく広いところにぽつんと立っていたくて、書いているのだと思う。
    人がどう見ているかはともかくとして、私はいつもリアルなものを書いていたいのだ。リアルじゃない小説はつまらないと思う。
    私にとって小説はファンタジーなのだ。ファンタジーというのは河合隼雄さんが言うところの「たましいの現実」であり、それがわたしにとってのリアリティだと思っている。したがって、それは「ありそうなこと」かどうか、あるいは「たくさんの人がさもありそうなんとうなずくこと」かどうか、とは何の関係もない。そういうのは錯覚だと思う。リアリティというのはもっと個人的なものなのだ。そういう個人的真実を信じられなくなったらおしまいだ。他に信じられるものなんて何もない、と、少なくとも私は信じている

    213日々の言葉
    最後に、好きな言葉のこと。
    またあしたね
    というのがそれで、夜ねるとき、私と妹が必ず交わした挨拶の言葉だ。
    おやすみなさい、のあとに、必ず言った。その言葉をきくと、私はたちまち幸福な気持ちになった。あしたもあそべるのだ。

  • 印象的だった箇所:

    「世の中の、善いもの、美しいもの」
    私はよく、絵がかけたらいいなと思う。絵は、ただそこにあるだけのものを、ただそこにあるだけの風に描ける。文章はそうはいかない。
     たとえば、一つの風景を描写するとき、はじの方に花が咲いているとして、それはほんとに目立たない小さな花で、たいていの人は見のがしてしまうくらいひっそりしているのだけれど、でも神々しいくらいまっ白で可憐な花だったとする。文章で描写すると、それを読んだ誰もがその花に気をとられてしまう。一瞬ではあるけれど、花にぴしりと焦点があってしまう。神々しいくらいまっ白で可憐な花、などと書いたらまるで何か特別な花のような感じになってしまうのだ。
     絵ならちがう。ささやかなものをささやかなままとじこめられる。そのことの清潔さに、私はときどきとてもこがれる。

  • 江國香織さんのエッセイ。
    ふんわりしていてとても好きでした。
    しっかり者の妹さんと仲がよくて微笑ましい。

  • タイトルの意味のエピソードが巻末に乗っていて納得、好きなアーティストから譲り受けた一冊なので丁寧に丁寧に日々いくつかずつ読んだ。キャンプの実況は森の匂いまで伝わってくるようで穏やかな気分になった

  • 大好きな上司に、あなたに読んでもらいたい言葉がいっぱい詰まってるからと、貸してもらって読んだ本。
    良すぎて、ずっと大事に読んでいきたいなと思ったので自分でも購入することにした。

    「人というのは一体何て複雑で奇妙でオリジナルで孤独なものだろう、と思う。ここまでオリジナルでなければ、これほど孤独にならずにすむのに、と思い、でもだからこそ「世界はときどき美しい」のだし、世界ぎときどき美しいからこそ、人は孤独でも生きていかれるのだ、と思う。」

    江國香織を形づくっている大切な要素が散りばめられているようで、私はとても好き。

  • エッセイ集的な本
    江國香織の実体験なのかな?
    すごくリアリティがあった
    途中の本の紹介とかはちゃんと読んでみたら面白い発見なのかもしれないけど、ちょっとそのページとかは退屈しちゃった
    ラルフへっていう題の話は不倫のことについて書いてあるんだけど、不倫を良いようにも悪いようにも書いてなくて、ただただ恋愛として書かれてて、こういう見方、考え方もあるなって感じた

  • 長編をどっぷり読むのが好きだなあと思いつつ、
    気持ちのよい、噛み締めたくなるエッセイだった
    どこを読んでもうっとりする、タイトルだけでもわくわくする
    江國さんが日常をどういうふうに見ているか、
    どんな雰囲気の中で生活しているのかをのぞけるのは幸せなことだ

    夜に緑道のベンチで読んだの気持ちよかったな
    なんだかさみしい夜、8月でも夜風は心地いい

  • 大人の切なさと愉しさ。江國さんのエッセイは疲れた時に身に染みるし甘美でほろ苦くて美味しい。風邪ひいた時のお粥、深夜の豚骨ラーメン、二日酔い明けのみかんゼリーのような、説明し難い安心感がある。

  • エッセイ集。
    読書の喜びは、物語の喜びとはまた違い「紙に閉じ込められた一つの空間を、自分で頁をめくり、読み進めることによって解き放つ、という能動的な作業のもつ愉快」と。
    表現の仕方に唸る。
    何度読んでも、その時々の気づきや共感があるのが面白い。

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著者プロフィール

1964年、東京都生まれ。1987年「草之丞の話」で毎日新聞主催「小さな童話」大賞を受賞。2002年『泳ぐのに、安全でも適切でもありません』で山本周五郎賞、2004年『号泣する準備はできていた』で直木賞、2010年「真昼なのに昏い部屋」で中央公論文芸賞、2012年「犬とハモニカ」で川端康成文学賞、2015年に「ヤモリ、カエル、シジミチョウ」で谷崎潤一郎賞を受賞。

「2023年 『去年の雪』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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