ブランドはなぜ墜ちたか: 雪印、そごう、三菱自動車事件の深層 (角川文庫 さ 37-2)

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  • Amazon.co.jp ・本 (347ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784043548026

感想・レビュー・書評

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  • ここ1、2年で企業の不祥事が相次いでいる。しかし、もっと前から会社の存続が問われる程の問題は、様々な業種で起こっていた。何故発生し、どうして学べないのか。本著は、雪印とそごう、三菱自動車のケースを扱う。共通しているのは、「社内の誰かは、その問題に気付いている」という事だ。社長は、知らされていない事例もあったが、問題に手を染めている張本人も含めて、この事は事実だ。

    では、この気付いた人間が問題改革をできるか。サラリーマンは、自分自身の損得勘定で動くのだから、改革の声を上げる人間をどう扱うか、詰まる所は、そうした人事制度に行き着くのではないだろうか。人事評価を曖昧にしたり、波風立てずを良しとする減点主義を採用する大企業は多い。そんな制度では声は上がらない。そして、問題を起こした企業が人事制度にまで手を付ける事は、残念ながら少ないのだ。何故なら、人事部自体が、波風立てず、幹部の意向をスマートに咀嚼しながらお手盛りの成果を上げる総本山だからだ。根深い。

  • 雪印乳業の集団食中毒事件、百貨店・そごうの破たん、三菱自動車の
    クレーム・リコール隠しの3つの事件から、企業の危機管理能力と責任
    意識の欠如、「ブランド」によりかかったおごりをあぶり出す。

    個人的に印象に残っているのは雪印乳業の集団食中毒事件と、それに
    続いた雪印食品の牛肉偽装工作だ。

    名門・岩倉組から選手を引き継いた雪印アイスホッケー部は一連の
    不祥事の余波を受け、長い歴史に幕を下ろした。日本のアイスホッケー
    が衰退する一因でもあったのだろう。

    ユニフォームには雪印ブランドのマークでもある、あの雪の結晶が
    輝いていた。当時は悔しくて仕方がなかったな…。

    本書でも触れられているが、雪印はそれ以前にも食中毒事件を起こして
    いる。昭和30年の「八雲事件」である。

    当時の社長であり「雪印中興の祖」と言われる佐藤貢は即座に製品の
    回収・販売停止を指示し、新聞各紙に謝罪広告を掲載。食中毒の発生元
    となった工場に自ら出向き、原因究明に当たった。

    謝罪記者会見の際、記者に突っ込まれて「私は寝てないんだ」と言って
    のけた社長は、初代社長の思いを忘れていたのだろうか。

    「いかなる近代設備も優秀なる技術と細心の注意なくしては、一文の
    価値もあらわさないばかりでなく、却って不幸を招く大なる負担である。
    機械はこれを使う人によって良い品を生産し、あるいは不良品を生産する。
    そして人間の精神と技術とをそのまま製品に反映する。機械はこれを使う
    人間に代わって仕事をするものであり進んだ器械ほど敏感にその結果を
    製品にあらわすのである。今回発生した問題は当社の将来に対して幾多の
    尊い教訓をわれわれに与えている。」

    佐藤貢が八雲事件の際に「全社員に告ぐ」として記した訓示の一部である。

    今も企業不祥事が止まらない。過去の教訓は生かされているのだろうか。

  • 会社の課題図書でした。
    社員が危機感を持つことって大切ですね。とくに、役員は。

  • ブランドの慢心ほど怖いものはない, 2004/7/30


    雪印、そごう、三菱自動車など名門企業が不祥事でそのブランドを大きく傷つけている。なぜ、不祥事が起こり、なぜ不祥事に充分な対応ができなかったのか?この本が教えてくれる。強力なブランドは時として社員に心の慢心をもたらす毒素のようなものがあるのではないか、読んでいてそう感じました。何十年と築き上げたブランドも一瞬で失われる怖さも同時に感じました。
    この本がでてからも企業不祥事は次から次へとでてきます。また、本書にでている三菱自動車も、その後、更なる不祥事の続発で経営そのものが揺らいでいる。やはり、企業は自社ブランドをもう一度見直す必要があると思えた

  • 雪印の集団食中毒事件

  • 雪印が起こした食中毒事件に関して調べるために読みましたが、「雪印」ブランドがいかに崩壊していったかが詳細に述べられています。「信用を獲得するには長い年月を要し、これを失墜するのは一瞬である。」という言葉は特に印象的でした。

  • 久々に小説ではなくドキュメント物だったのですが、やはり新聞記事を基にしたものであるだけ、大変読みやすくまとめられていました。事実の記載も年表付きではっきりしている上に、関係者のコメントなどが軽い読み物的に読み手の興味を惹きつける書き方をしているのが、専門系の本と違い
    良いと思います。
    <BR><BR>
    題名からわかるとおり、内容は大変重い、ここ数年起こった大企業の不祥事についての事実関係、そして
    各社の変遷−戦前、戦後、バブル期…と歩んできた時代と共に、かくあったのかが語られています。<BR>
    雪印、そごう、三菱自動車…と聞くと、やはり大企業、大手、一流というイメージがあると思います。<BR>
    現に、私もブランド志向ではありませんが、これら企業の名のついた商品に対する安心間はありました。<BR>
    いえ、今でもそのイメージは消えていないかもしれません。<BR>
    そのイメージは偽物では決して無かったと思いますし、そのイメージ・企業自信には確たる裏打ちがあったことは明らかです。各社史に現れる、創業者、中興の祖と言われる企業人たちにはカリスマ性が兼ね備わ
    っていたことは、行動や業績、他社から見る人物像からも伺えます。その意志が引き継がれなかったこと、またはその『偉大』な人々が、過去に胡坐をかき続けたこと、そして、時代が変化したことがここ一連の
    不祥事、そしてバブル崩壊後の浮上できない日本の象徴と言えるかもしれません。
    <BR><BR><B>
    戦後の復興を支え、日本を経済大国に押し上げたのが企業の活力であったのはいうまでもない。<B>
    日本企業はモラル(倫理)もモラール(士気)も、世界のどの国にもひけをとらなかった。</B>
    <BR><BR>
    バブルが崩壊して10年。失われた10年と言われた90年代を経て、未だ明るい兆しの見えない日本社会の
    混迷において、これら企業に起きた出来事が、再生のきっかけになるのか、これはまだ始まりでしかない
    のか…企業人・消費者すべての人の肩にかかっている事態なのかもしれません。
    <BR><BR>
    (2002年11月21日)

  • 見ての通りの内容。
    企業としての倫理って何なんだろうと考えさせられる。
    ただ、不祥事から得られたものもあるはず。ある意味、不祥事ってドロドロした問題が顕在化する、唯一のタイミングなのかもしれませんね。
    色んな読み方ができると思います。
    元は新聞のコラム(?)なんですが、名著じゃないでしょうか。

  • 企業ブランドが高いばかりに、逆に信用が失墜してしまった企業のケース。雪印、そごう、三菱自動車等々・・。危機管理のあり方、TOPの姿勢など様々な観点から、何が失敗だったのかを分析。大手企業ならではのフットワークのまずさが浮き彫りになる・・。

  • 企業としての倫理はどこへ消えた?危機管理能力はないのか?投資先として心配ないのか。

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