おぼれる人生相談 (角川文庫 ま 19-1)

著者 :
  • KADOKAWA
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  • Amazon.co.jp ・本 (308ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784043577019

作品紹介・あらすじ

偽りの自分という鐙を脱ぐことができない、友情も恋愛も自分も信じられない、勉強を強要する母親が嫌-。目に見えぬ不安と解決されない悩みに包まれる若き世代。その切実な思いがつづられた相談の手紙に、著者が正攻法で答える、今を純真かつ強靱に生き抜くための青春サバイバル術。苦しいのは自分だけじゃない。

感想・レビュー・書評

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  • わたしは人生相談をするたちではないが、他人のを読むのはおもしろい。TVでもラジオでも「へーェ、こんなことで悩んでの?」とか「ばかだね、考えればわかるじゃん」と思ったりする。つまり無責任な野次馬根性。

    ブログなんかも恥やあほさ加減をさらしている部分もある。もちろん共鳴してくれたり、情報を喜んでくれたりもするいい面もあるけれど。

    この松浦理英子の『おぼれる人生相談』も、最初もっとユニークな答えだったらいいのにと、期待はずれかなと思った。平凡な答えのように見えるその悩み解決法に、なんといいますか人生意気に感じる、人生におぼれるような気にさせてくれるものがかもされていて、参考になってしまったのである。

    ご自身は「あたりまえの回答よりも、」読んで一番面白かった「深沢七郎式に無茶苦茶にやれば」と思ったけれど、人生経験が深沢七郎ほどないので(お作品からはそうは思えないが)「正攻法でいくことにした。」と書いていらっしゃるが、どうしてどうしてわたしは読み進むうちにほのぼのといい気持ちになった。

    愛する人が有名なミュージシャンで手が届かない、思いを断ち切るにはという相談には、

    「個人的には会うことすらできないミュージシャンやアーティストに入れ揚げるのが不毛なことだとは、わたしは必ずしも思いません」「愛し続けて一生独身を通すのも、」身近な男性とつき合ったり結婚しても「やっぱりわたしが生涯で一番愛したのは、口もきいたことのないミュージシャンの彼だった」「と感じるのも、一つの人生」「ともかくも真剣に好きな人がいる今の状況を楽しもう」

    と悩んでいないで発想を変えるのはどうか。なんてのもわたしには応用が出来るし、

    「自分に出きることとできないこと、やりたくないことをはっきり見極めて、できることややりたくないことをしなかった時には反省するとしても、できないことややりたくないことをやるのに失敗した時には悩まない、後悔しない、と決めておいてもいいのではないでしょうか」

    ある回答のこれも平凡なようでいて、普遍真理。

    そうしてとどめは

    「友達とは季節に咲く花です」

    という深沢七郎の言葉を引用しているところ。おおいに参考になった本。

    ということはわたしも悩んでいたんだ、か。

  • 96〜97年頃月刊カドカワにて掲載。

  •  血が繋がっているというだけで自分とは別人格の人間を支配したり拘束したりする権利は誰にもありません。
    (P.68)

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著者プロフィール

1958年生まれ。78年「葬儀の日」で文學界新人賞を受賞しデビュー。著書に『親指Pの修業時代』(女流文学賞)、『犬身』(読売文学賞)、『奇貨』『最愛の子ども』(泉鏡花文学賞)など。

「2022年 『たけくらべ 現代語訳・樋口一葉』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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