誤算 (角川文庫)

著者 :
  • KADOKAWA
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  • Amazon.co.jp ・本 (336ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784043866014

作品紹介・あらすじ

前夫のために蓄えも職場も失った看護師、川村奈緒は、資産家の老人・鬼沢の住み込み看護師となる。財産を狙い鬼沢の死を望む一族を冷ややかに傍観する奈緒だったが、鬼沢との結婚話が持ちかけられ――

感想・レビュー・書評

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  • 松下麻理緒『誤算』角川文庫。

    第27回横溝正史ミステリ大賞・テレビ東京賞受賞作。東京女子大学心理学科を卒業した同期の女性2人が共同執筆した作品。

    テレビの2時間物のサスペンス・ドラマに有りがちな陳腐なストーリー。横溝正史ミステリ大賞の本賞ではなく、テレビ東京賞受賞というのも頷ける。年老いた資産家の遺産相続を巡る骨肉の争いと殺人事件を描いたミステリー小説である。すんなり読めるが、納得出来ない展開があったり、苦笑する程の歯切れの悪い結末とミステリー小説としてのレベルは低い。

    35歳の看護師・川村奈緒は一時の気の迷いで結婚した敏也が借金を作り、行方をくらましたことから、勤め先の病院を退職し、敏也の借金を清算、住んでいた部屋を引き払う。行き場が無くなり、働き先を探していた奈緒は資産家の鬼沢丈太郎という76歳の老人の家で住み込み看護師となる。

    鬼沢家は丈太郎が厳しく支配し、成人した娘や息子は丈太郎の遺産を当てにして暮らしていた。さらには丈太郎の妾の子供、西山恵太が奈緒に財産目当てで丈太郎との結婚をそそのかすなど、丈太郎の莫大な遺産を巡る一族の骨肉の争いが描かれる。

    本体価格640円(古本7冊で127円)
    ★★★

  • 扉の解説から結末はなんとなく予想できるのだが、それでも主人公の置かれた立場がのっぴきならない状況になるところは先が気になってあっという間に読んでしまった。

    それにしても、もし主人公の誤算がなかった場合の展開を想像すると、ちょっとしたホラーより恐ろしい事態になったわけで、わかりやすすぎるストーリーと精密に構成された設定が絶妙の組み合わせになっている。

    非現実的なトリックや無理のある動機で強引などんでん返しを仕掛けるミステリーよりよほど面白かった。

  • お金のを得るために人はこんなにも醜くなれるのか、と思った作品。現実にこんな家族はいてほしくないし、お金があれば幸せになれるものでもないとも感じた。全体的にはおもしろかった。

  • まあまあ、だった気がする。最後はボケてあ〜あ言っちゃった。という感じ。

  •  第27回横溝正史ミステリ大賞・テレビ東京賞を受賞した作品。
     男運もなく、前夫のためにほぼ全ての財産を失った看護師の再就職先は、一代で財を築いた資産家の住み込み看護だった。重い病気を患い、生きる希望も失いつつある資産家をしっかり看護してはいたが、それを取り巻く娘たちは遺産を狙い、早く死ぬことを願っている。
     そんな折、主人公にも遺産相続のチャンスが訪れ、相続争いに引き込まれていく。
     多額の遺産を巡って、欲望渦巻く人間模様が面白い。誰もが黒く思えてしまい、信用すべき人間が見えなくなってしまう展開に引き込まれてしまう。

  • 元夫のために全てを失った看護師の奈緒。大資産家の老人の家で住み込みで看護の仕事に就くことになり、遺産争いの渦中に巻き込まれていくことになる。場面もお屋敷の中での舞台のように流れていく。サスペンスだとしたら少し薄い感じがしたけれど、読みやすかったし面白かったです。

  • タイトルを意識しながら
    なにがどんな風に"誤算"なのか考えながら読んだ

    お金が絡むと人間嫌な部分が浮き彫りになる
    みんな怪しかったしみんな悪い人

  • 最初は遺産相続に絡む骨肉の争いがメインかと思いきや、奈緒が丈太郎から結婚を申し込まれてからストーリーは急展開を迎える。個人的には奈緒の苦労がもう少し報われても良かったのではとも思うが彼女にとってはまずまずのハッピーエンドなのかもしれない。
    松下氏の作品を読んだのは2作目だが、今回はストーリー展開もスムーズで色々な『誤算』があり題名の妙味を感じた。松下氏の作品をもう何冊か用意してあるので読んでみてこの作者を追いかけるか考えたいと思う

  • 01月-11。3.0点。
    夫に家出され金も持ち逃げされた看護師、ある富豪の住み込み看護師に。
    遺産を狙う娘たち、愛人の子、気の弱い富豪の長男やらに囲まれる。

    2時間ドラマのよう。あっさり読める。
    いろんな「誤算」があり、最後は少しヒネっていた。

  • 2時間ドラマでありそうな内容。タイトル『誤算』から結末を予想しながら読んだけど、ありがちな登場人物に遺産をめぐる思惑…それでもあっという間に読了。

  • じいさん以外全て悪人

    看護師の奈緒はろくでもない男にひっかかり結婚したが全てを失って離婚することになる。住む場所も無く資産家のじいさんの看護を住み込みで看ることに。
    このじいさん体が弱く資産をかなり持っている為身内が遺産を巡って見苦しい争いをしている。
    奈緒は看護を親身になってしていると弱っていたじいさんが日に日に元気になっていく。早く死んでくれと思っている身内にとっては面白くない。
    親身に看護してくれる奈緒にじいさんはプロポーズをする。奈緒は身内から邪な事を吹き込まれていた為プロポーズを受けることに。
    庭の桜が咲いて久しぶりに親しい者を集めて花見をしようと提案。その場で爺さんは奈緒と結婚した事を発表しようとしたのだが発表する前に突然心臓発作で死んでしまう。死ぬ前に入籍していた事がみんなにバレたら遺産目当てだと言われてしまう。奈緒はそんな気ないのに、しかし、身内に預けて提出したと聞いていた婚姻届は出されていなかった。

    やはり金の力って想像以上に強い事がよくわかる。
    他人より身内の方が怖いね。
    タイトルの「誤算」は主人公奈緒に対しての主題なのかもしれないが登場人物全てに当てはまる。そしてじいさん以外全て悪人。

  • テレビの2時間推理ドラマ向けの話。女性の再婚に関する制限は問題ですね。

  • 途中から先が読めた。どんでん返しが弱い。結局、犯人もよー分からん人だったし。

  • よくある話で特に得るところもない。

    登場人物を間違って覚えても、支障はない

    川村奈緒は、もともと遺産を貰うつもりはなく、何が誤算だったのだろうか

  • 遺産相続をめぐって子供らと住み込みで働くことになったいいことのない看護婦との人間模様と策略。展開がころころ変化がありよい。誰が誰と組んでいるのか、看護婦の策はうまくいくのか。最後は看護婦は何も手に入れられないが、代わりに気持ちが晴れてすっきりした感じで終わるので読後感は悪くない

  • ○ 総合評価  ★★★☆☆  
    〇 サプライズ ★☆☆☆☆
    〇 熱中度   ★★★☆☆   
    〇 インパクト ★★☆☆☆
    〇 キャラクター★★★☆☆
    〇 読後感   ★★☆☆☆

     敏也という男に騙され,貯金と職場を失った看護師,川村奈緒は鬼沢家に住み込みの看護師として働くことになる。鬼沢家は長男の淳一とその妻,美恵子。二人の子どもの宏と家政婦のよし子。鬼沢の娘の京子と洋子。京子は歯科医の妻。洋子は売れない画家。鬼沢の主治医は,幼馴染の山崎医師。ほかに異母兄弟の西山恵太
     川村奈緒は,ベテランの看護師として力を発揮し,鬼沢の体調は少しずつ回復していく。しかし,ホスト狂いで夫に話せない借金がある京子と,売れない画家の洋子は,鬼沢が早く死ぬことを望んでいる。
     洋子は鬼沢の顧問弁護士である遠山と不倫をしている。鬼沢は反発しながらも川村奈緒の働きぶりに感心し,遺産のうち500万円を相続させるという遺言を残すと言う。家政婦のよし子も同額の遺産を相続すると言う。
     鬼沢が使うスリッパに石鹸が付いていて,鬼沢が滑って階段から落ちるという事件があった。誰かが鬼沢を殺害しようとしている…?
     西山恵太は,川村奈緒に,鬼沢は奈緒を気に入っているので結婚し,遺産の半分を手に入れてはどうかという。西山はそのことに協力する代わりに,成功した場合は奈緒が相続する遺産の半分を要求する。奈緒は,元夫がほかの女性と結婚するのを阻止するために,正式に離婚していないことを恵太に伝える。奈緒は正式に敏也と離婚する。奈緒が鬼沢と結婚するには,再婚禁止期間(当時は6か月)を過ごす必要がある。
     京子や洋子は鬼沢からお金をもらえなくなり,困り出す。京子が用意したバラから蜂が出てくるという騒ぎも起こる。鬼沢はかつて蜂に刺されたことがあり,アナフィラキシーショックを起こすおそれがあった。恵太と鬼沢が散歩しているときに使った杖が割れる事件も起こる(杖には折れるような工作がされていた。)。このころ,奈緒は鬼沢からプロポーズを受ける。恵太と奈緒は,婚姻届を出したふりをして再婚禁止期間が過ぎる4月までを過ごすことにする。
     鬼沢の計画で,4月12日に花見をすることになる。鬼沢は花見の席で奈緒との結婚を報告すると言う。しかし,鬼沢は花見の席で急死する。家政婦のよし子は騒ぎの中,救急車とパトカーを呼んでしまう。奈緒は,他殺だとすると婚姻したばかりで多額の遺産を相続する自分が疑われるのではないかと不安を感じる。鬼沢は行政解剖にまわされるという。鬼沢の死因はソバアレルギーによるアナフィラキシーショック。鬼沢を殺害した犯人として宏が逮捕される。その頃,鬼沢の遺言書の検認が終わる。遺言には「妻,奈緒に全財産を相続させる。」とあるが,奈緒と鬼沢は婚姻していなかった。よって,奈緒に関する部分は無効になるという。みじめな生活に別れを告げて莫大な財産を受け取るという夢は崩れさる。そして,美恵子が鬼沢の殺害を自首する。美恵子の夫淳一は余命わずかだという。 
     恵太によると奈緒は敏也と結婚していたという。敏也が勝手に婚姻届を出していた。したがって奈緒と鬼沢の結婚はできなかった。恵太は遺産が7分の2になるはずが7分の1に。奈緒は500万円すら相続できず。いずれも「誤算」だった。しかし,奈緒はそのおかげで殺人事件の容疑者にならずにすんだ。
     宏の後見人になろうと企む恵太。遺産相続の争いが続く中,美恵子は心神耗弱と認定され執行猶予判決が出る。奈緒は恵太と話すなか,実は山崎医師こそが黒幕で美恵子と手を組み鬼沢を殺害したのではないかと疑う。山崎医師は認知症が進み,自分が鬼沢を殺害したと言っているという…・
     ジャンル分けが難しいミステリ。サスペンスというほどでもないし,コンゲームというほどでもない。法律要素が少し入った犯罪小説という位置付けか。殺人事件としては,鬼沢丈太郎が殺害される。容疑者の位置に当たる看護師,川村奈緒の視点で描かれている。犯人は主治医の山崎医師と長男の妻,美恵子の共犯。山崎医師が計画をし,美恵子が実行犯という位置付け。トリックなどはないが,主治医として山崎医師が証言することで心神耗弱として執行猶予判決を得るという計画。山崎医師と美恵子の共犯とは思わなかった。しかし,そこまで驚きはなかった。サプライズをウリにした小説ではないとはいえ,特段の伏線もミスディレクションもない。登場人物の誰が犯人でも「ふーん」という程度でさほど驚きはなかったと思う。この作品の魅力は,リーダビリティ。話の作り方が上手く,先が気になってしまう。一体何が「誤算」なのか。結局「誤算」とは川村奈緒と恵太の誤算ということなのだろう。
     トータルで見ると,しっかりと読ませる作品に仕上がっている。しかし,サプライズはそれほどでもなく,裏をかくようなどんでん返しもない。法律的な要素が面白みとして加わっている程度。傑作というほどではないがよくできた作品ではある。★3かな。

  • 資産家一家のお家騒動。

    さらっと読了。

    改めてお金があることが幸せではないのだなぁと感じる。お金持ちは孤独なのかも。

  • 悪い男に騙され、全てを失い人生のやり直しを目指すベテラン看護師の川村 奈緒。

    探し当てた仕事は、大富豪で重い病気を患う老人・鬼沢 丈太郎の住み込み看護の仕事。

    頑固でわがままな老人の健康管理は、想像以上に大変なところに加え、家族は、ブランド好きな浪費家の長女や、売れない画家の次女、気弱で軟弱な長男と根暗なその妻、そして引きこもりの孫...などなど

    しかし、老人が急死したことから、家族の遺産争いが勃発。本来家族でもない奈緒にも、遺産相続の話が...
    そこには、大きな悪事の計画が...

    確かに、何十億といった遺産になれば、人が変わるのも、むべなるかな?

    二転三転するストーリーに、ハラハラドキドキの連続で、最後まで、真相は読めませんでした。

    しかし、計画は失敗したものの、落ち着いた生活に戻った奈緒の姿から、世の中、お金だけではないとの考え方は、案外本当かも知れません(...と思いたいですね)。

  • 速く読んでもいい内容。

  • 夫に振り回された看護師の奈緒。人生をやりなおすため、資産家の家の住み込み看護師となる。奈緒にも遺産相続のチャンスが?というお話。資産家の家というのが、韓国ドラマに出てきそうな資産家で面白かった。

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著者プロフィール

東京女子大学心理学科同期卒の二人による共同執筆。『誤算』で第27回横溝正史ミステリ大賞テレビ東京賞を受賞。

「2020年 『偽画』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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