2035年 火星地球化計画     (角川ソフィア文庫 K 109-1)

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  • 角川学芸出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (267ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784044052041

作品紹介・あらすじ

「火星に水の痕跡。生命存在の可能性あり」。2004年、NASAによる世紀の発見は、宇宙史に輝かしい1ページを記した。それは同時に、人口爆発、環境汚染という切実な問題を抱えた人類にとって、火星への移住を実現する新たなステージの始まりだった!探査ローバー、レールガン、テラフォーミング-。宇宙探査の歴史から開拓までの最新テクノロジーを網羅し、火星に挑む人類のロマンを描いたサイエンス・ノンフィクション。

感想・レビュー・書評

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  • 今現在、地球以外で人類が長期に渡って住める可能性が最も高いとされているのが火星だ。しかし、今の状態では人は住むことができない。火星を住める星にするには、火星を地球に似た星にテラフォーミングする必要がある。課題はいくつかある。

    ①太陽光の照射量が不十分で、気温が低すぎること
    ②大気が薄く、必要な量の酸素や窒素がないこと
    ③生命維持のための水が得られないこと
    ④火星の土に栄養がなく、植物が育たないこと

    以上の問題を解決するために色々な案がある。火星に適応可能な植物やバクテリアを送り込んで長期間(数万年を要するそうだ)かけて火星環境を変えていくというもの。他には、巨大ミラーを使って火星への太陽光照射量を増やし、極地の氷を溶かすという案や、核爆薬を用いて地中のCO2など埋もれた大気を放出させる案、土星の衛星である氷の星ハイペリオンを火星と衝突させ(!)、火星を水で満たすという案まであるらしい。

    植物や微生物を用いて、地球と同じように年月をかけて環境を変えていく方法は、恐らく取られないのではないかと思う。数万年などという期間を、人類はとても待てないだろう。(それに、その間に技術開発も進んでいるだろう)

    恐らく先端技術を用いて、火星を半ば強引に住めるようにテラフォーミングするのが現実的に今後起こりうる天界だと思う。

    今現在火星への有人着陸は実現していないし、オバマ大統領は2035年を目標にと発言していた。個人的には、アポロ計画を成功させたアメリカにしては随分控えめな目標だと感じた。

    NASAの予算も縮小傾向にあるというし、今後は民間による宇宙開発が進んでいくのではないか。宇宙ビジネスには色々とアイデアがありそうだが、核になるのはやはり輸送ビジネスだと思う。

    現状、有人で火星まで行くのに半年以上はかかるという。月と比べて距離が遠いため、仕方ない面もあるが、これほど時間がかかるようでは、移住どころではない。
    せいぜい片道一ヶ月程度で行けるようにならないと、火星に関して本格的な実地調査や研究もできない。本格的な移住計画はそれからだろう。

    核融合については世界中で研究が進んでいるそうだが、民間でもアメリカのロッキード・マーチン社などが開発を進めているそうだ。核融合ロケットが実用化されたとしても、1台当たり巨額のコストがかかるのでは、やはり宇宙開発にはつながらない。やがてはそれを低コスト化していかなければならない。そうした動きはやはり国ではなく民間が中心になっていくだろう。今後も動向を見守っていきたい。

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著者プロフィール

たけうち・かおる サイエンス作家。1960年生まれ。東京大学教養学部教養学科、同大学理学部物理学科卒業。マギル大学大学院博士課程修了(高エネルギー物理学専攻、理学博士)。フリースクール「YES International School」校長も務める。著書に『99・9%は仮説』(光文社新書)、訳書に『WHAT IS LIFE? 生命とは何か』(ポール・ナース著、ダイヤモンド社)などがある。

「2021年 『人と数学のあいだ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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