西行 魂の旅路 ビギナーズ・クラシックス日本の古典 (角川ソフィア文庫 A 3-5 ビギナーズ・クラシックス 日本の古典)

制作 : 西澤 美仁 
  • 角川学芸出版
3.68
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本棚登録 : 171
感想 : 17
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  • Amazon.co.jp ・本 (290ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784044072124

作品紹介・あらすじ

平安時代末期、武士の道を捨て、家族を捨て、ただひたすらに和歌の道を究めるため、出家の道を選んだ西行。歌をどう詠むかではなく、歌になにを詠むかにこだわり続け、中世という新しい時代を切り開いた大歌人の生涯を、伝承歌を含め、項目で60首、全体で300余首の歌から丁寧に読み解く。桜をこよなく愛し、先人の跡を各地に訪ね、日本文化のさまざまな場面に足跡を残した西行という巨人の和歌をとことん楽しみ味わう1冊。

感想・レビュー・書評

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  • 西行和歌を一首ずつ、丁寧に解説してくれる。
    ずいぶん詳しい解説なので、読み終えるまで、日にちがかかってしまった。
    やはり、

    願はくは花のしたにて春死なむ
    その如月の望月のころ

    この本の歌の中でも、この歌が一番好き。

    ☆私は春、花の下で死にたい。願わくは、
    釈迦入滅の二月十五日のころに、満月の光を浴びた
    満開の桜が、私と私の死を照らし出さんことを。

    。。。西行は、文治六年(1190)ニ月十六日に、
    この歌の通りに死を迎えた。。。 

    好きな歌

    うなゐ子がすさみに鳴らす麦笛の
    声に驚く夏の昼ぶし

    ☆うない髪の幼い子が気まぐれに鳴らす麦笛の声に、はっと目が覚めた。私は夏の昼寝をしていたようだ。


    行方なく月に心の澄み澄みて
    果てはいかにかならんとすらん

    ☆月を見ていると、私の心は澄みに澄む。このまま
    どこまで澄んでいくのだろう。私は一体どうなってしまうのだろうか。


    籬に咲く花に睦れて飛ぶ蝶の
    羨ましくもはかなかりけり

    ☆籬垣に桜の花が咲き、花に睦れるように蝶が飛ぶ。羨ましい限りであるが、同時にむなしくも感じてしまう。

    • ほなこさん
      りまのさん、こんにちは!
      西行、いいですね〜この時代が好きなので「西行」のふたもじをみつけついついコメントしてしまいました、、!
      願はくは花...
      りまのさん、こんにちは!
      西行、いいですね〜この時代が好きなので「西行」のふたもじをみつけついついコメントしてしまいました、、!
      願はくは花の下にて春死なむ サクラみたいなはかない歌でジーンと来ちゃいますね。。コロナで外出もしにくいご時世ですが今年はお花見ができるといいな。
      いつか、この本、読んでみることにします。素敵な感想をありがとうございました!
      2022/03/16
    • りまのさん
      ほなこさん、こんばんは。
      コメントいただき、ありがとうございます♪
      私は実は、この時代に、詳しくなくて、あるレビュアーさんの影響から、この本...
      ほなこさん、こんばんは。
      コメントいただき、ありがとうございます♪
      私は実は、この時代に、詳しくなくて、あるレビュアーさんの影響から、この本を読みました。ずいぶん日にちがかかって、本が付箋だらけになりました。西行の歌にまつわる事柄について、とても詳しく書かれているので、この時代がお好きなら、おすすめします!よろしくどうぞ。(*^_^*)
      2022/03/16
  • 西行さん、どのような方かというと、ウィキペディアには、次のように書かれています。

    ---引用開始

    西行(さいぎょう、元永元年〈1118年〉 - 文治6年2月16日〈1190年3月23日〉)は、平安時代末期から鎌倉時代初期にかけての日本の武士であり、僧侶、歌人。西行法師と呼ばれ、俗名は佐藤 義清(さとう のりきよ)。憲清、則清、範清とも記される。西行は号であり僧名は円位。後に大本房、大宝房、大法房とも称す。

    ---引用終了

    私が好きな西行の和歌3首は、次のとおり。


    「願はくは花の下にて春死なん そのきさらぎの望月のころ」

    「なにごとも 変はりのみゆく世の中に おなじかげにてすめる月かな」

    「嘆けとて月やはものを思はする かこち顔なるわが涙かな」 

  • 本やさんで見かけて、そういえば西行についてほとんど知らないなと思って、手にとった本。一首ずつ解説しながら、歌ごとに独立でなく、西行の生涯の中での位置付けもわかりやすく書かれている。著者の、西行に惹かれつつ冷静に語ろうとする姿勢も面白い。参考文献と初句索引が付いていてべんり。

  • 武士であったのに出家したこと、容姿端麗であったことに加えて、
    「願はくは花のしたにて春死なん その如月の望月のころ」
    「花に染む心のいかで残りけん 捨て果ててきと思ふ我が身に」
    など、花と月を多く歌に詠んでいるところから、西行には繊細でナイーブなイメージを持っていました。
    でもこの本を読むと、意外と「陽」な感覚の人であったようです。「花に染む」の他にも、出家して世を捨てたはずなのに花に心奪われたり寒い時期に寒がったりする自分を詠んだ歌も結構たくさんあるのですが、そんな自分を「ダメだなあ」と恥じるのではなく、客観的に興味深いと思って見ていたり。
    花や月を詠んだ美しい歌の他にも、言葉遊びが楽しい歌や戦ばかりの世の中を冷めた目で詠んだ歌などもあって、クスッとなったり驚いたりウットリしたりしながら読みました。

  • (2012.11.25読了)(2012.11.12借入)
    【平清盛関連】
    ビギナーズ・クラシックスシリーズの『方丈記』を読んだとき、同じシリーズで『西行』が出版されていることを知りました。『西行』について書かれた本をすでに三冊読んでいます。
    「西行」高橋英夫著、岩波新書、1993.04.20
    「西行」白洲正子著、新潮文庫、1996.06.01
    「白道」瀬戸内寂聴著、講談社文庫、1998.09.15
    それぞれの本で、西行の作品を紹介していますが、西行の作品にまとめて接したことはなかったので、図書館から借りてきました。
    西行の作品であると伝承されている作品を含めて60首の和歌を解説してくれています。
    和歌に直接触れただけでは、読み込んである意味内容を読み取ることは、なかなか難しいのですが、懇切丁寧に読み解いてくれているので、助かります。
    西行以前の人が詠んだどのような歌と関連しているか、後世にどれだけの影響を与えているのか、和歌の言葉の言外で補うべきこと、等、多くの薀蓄を披歴してくれています。
    『西行物語絵巻』などまで描かれて、多くの人に西行が親しまれていることの一端が、西行が詠んだと伝承されている和歌が多数あるという事からうかがわれます。
    いつか『西行物語絵巻』を読んでみたいものと思います。

    【目次】
    はじめに
    西行への旅
    ◆出家
    ◆吉野
    ◆山家
    ◆高野
    ◆伊勢
    ◆熊野
    ◆四国
    ◆天皇
    ◆仏教
    ◆幼少
    ◆戦争
    ◆恋と月
    ◆神仏
    ◆数奇
    ◆終焉
    ◆伝承
    付録
     参考文献
     発句索引

    ●桜を植えたのは(130頁)
    岩戸開けし天つ尊のそのかみに 桜を誰か植ゑはじめけん
    (天照大神が天の岩戸を開けた時、桜は既にあったという。そんな昔にいったい誰が最初に桜を植えたのだろう。)
    ●老化(191頁)
    竹馬を杖にも今日は頼むかな 童遊びを思ひ出でつつ
    (「竹馬」の竹を今日の私は杖に頼るなんて、随分年を取ったものだ。子供のころにこれに乗って走り回ったことをそのたびに思い出すよ。)
    ●秋(213頁)
    心なき身にもあはれは知られけり 鴫立沢の秋の夕暮
    (世捨て人である私が感じとったこの感動を、和歌の言葉で伝えたい。鴫の群れが飛び立った羽音の轟く沢辺に、秋の夕暮が寂しく訪れる。)
    ●春の花(234頁)
    春ごとに花の盛りはありなめど あひ見むことは命なりけり
    (春の来るたびに花は盛りを迎えるのであろうが、その花に逢えたのはまさしく私の命次第だったのである。)
    ●富士の煙(236頁)
    風になびく富士の煙の空に消えて 行方も知らぬ我が思ひかな
    (風に吹かれてなびく富士の噴煙が空に消えて行方もわからない、そのように、私の思いもこれから先どこにたどり着くのか自分でもわからない。)
    ●桜の花を手向けて(253頁)
    仏には桜の花を奉れ 我が後の世を人とぶらはば
    (仏前には桜の花を供えてください。私が死んで仏になったとき、供養をしてくださるのなら。)
    ●はねくそ(270頁)
    萩踏んで膝を屈めて用を足し 萩野はねくそこれが初めて
    (萩の枝を踏んで、膝を萩の枝のようにしなやかに屈めて用を足したところ、踏んだ足をはずしたら糞が跳ね返った。こんなことは初めてだ。)

    ☆関連図書(既読)
    「平清盛福原の夢」高橋昌明著、講談社選書メチエ、2007.11.10
    「平家の群像-物語から史実へ-」高橋昌明著、岩波新書、2009.10.20
    「平清盛-「武家の世」を切り開いた政治家-」上杉和彦著、山川出版社、2011.05.20
    「平清盛 1」藤本有紀原作・青木邦子著、NHK出版、2011.11.25
    「平清盛 2」藤本有紀原作・青木邦子著、NHK出版、2012.03.30
    「平清盛 3」藤本有紀原作・青木邦子著、NHK出版、2012.07.30
    「清盛」三田誠広著、集英社、2000.12.20
    「平家物語(上)」吉村昭著、講談社、1992.06.15
    「平家物語(下)」吉村昭著、講談社、1992.07.20
    「海国記(上)」服部真澄著、新潮文庫、2008.01.01
    「海国記(下)」服部真澄著、新潮文庫、2008.01.01
    「西行」高橋英夫著、岩波新書、1993.04.20
    「西行」白洲正子著、新潮文庫、1996.06.01
    「白道」瀬戸内寂聴著、講談社文庫、1998.09.15
    「方丈記」鴨長明著・武田友宏編、角川ソフィア文庫、2007.06.25
    「鴨長明『方丈記』」小林一彦著、NHK出版、2012.10.01
    (2012年11月25日・記)

  • 平安朝末期の大歌人西行。花―わけても桜―と月を愛し、和歌の道を究めんとした漂泊の歌人の生涯に(伝承歌含め)項目60首、全体で300首以上から迫ったもの。

    歌をどう詠むかでなく、歌に何を詠むかに心を砕き続けた西行。彼が何を詠み、何を感じ考えたかということを丹念に読み解こうとはしている。が、著者の解説や解釈がやや小難しいというか衒学的というか、「歴史背景などをそこまで知らないと味わえないものか」と、かえってとっつき難いものに感じられてしまう面もなきにしもあらず。

    序文で著者のいう「西行研究書」という趣で、シリーズ名の「ビギナーズ・クラシック」の割には、読者に要求するレベルは高い気がする。むろん自分にはかなり難しく、西行の和歌そのものを味わいきれなかった。

    項目となった和歌が目次になっているので、最初から順に読むよりも、知っている歌や気になった歌の項目から読む方が楽かもしれない。

  •  取り敢えずこれ読めば西行の人物像は大体摑めるかなという感じ。

     テーマ毎に六十首取り上げて解説。縁のある歌も適宜紹介。

  • 選ばれていることばの重さ、深さを感じずにはいられない。
    大河ドラマでちょうど清盛が高野山の塔再建をやっていたから、よりリアルなイメージが持てたのかもしれないが。
    貴族と武士の拮抗、源平の時代を時代の傍観者として見ていたこと。現世利益を捨てて仏道という崇高な世界を目指しながら、現世の花を愛でることを捨てられなかった西行。鴨長明と同時代なんだよね…。
    読み疲れたなぁ。

  • ビギナーズ仕様なのに、結構読みごたえがある。
    出家から死ぬまでの西行の心の軌跡、和歌に対する姿勢が何となくわかる。
    ちと難しくて眠くなるところも・・ゲフゲフン

  • 先日、吉野山に桜を見に行き、奥千本の「西行庵」まで足を運んだ。帰宅後すぐに本棚から取り出して読んだのが本書だ。
    二十三歳ですべてを捨てて出家した西行。唯一捨てきれなかったのは和歌だった。
    出家の理由は同僚の突然死で無常観を感じたとも、悲恋ともいわれるが、ここでは草庵生活への憧れ説をとっている。
    出家後は陸奥、高野山、四国、伊勢などを転々とし、庵を結んだ。吉野の奥の院には、俳人・松尾芭蕉も訪れている。

    西行の最も有名な歌に

    願はくは花のしたにて春死なむ
    そのきさらぎの望月のころ

    がある。きさらぎの望月のころは、釈迦が入滅した二月十五日を指している。西行は、翌二月十六日に亡くなった。
    歌のとおりに亡くなっていれば、それこそ予告通りの完璧な往生だったかもしれない。だがあまりにも美しい花とあまりにも美しい月を最期に味わいたくて、西行はその日一日現世に留まったのではないか。
    その解釈が素晴らしいと思った。

    花に睦るる鶯の声

    p203
    弓張の月に外れて見し影の やさしかりしはいつか忘れん
    (半月のかすかな光であなたを見た。その優雅な美しさはいつまでも忘れないだろう)

    この「弓張の」の歌には趣向が多く、「外れて」は弓の縁語であり、「やさしかりし」「いつか」にも弓の縁語「矢」「射」が掛かる。

    p215
    寂しさに宿を立ち出ててながむれば いづくも同じ秋の夕暮(後拾遺・秋上)
    (あんまり寂しくて旅に出てみたが、どこに行っても同じだった。秋の夕暮が寂しいのは、すると秋の夕暮そのものの寂しさだったということなのか。)は「眺む」ということばの両義性(物思いに耽る・見渡す)を有効に使って、「秋の夕暮」れそのものに由来する「寂しさ」を発見した名歌である。以来、「秋の夕暮」は「寂しさ」を象徴する歌枕(歌語)になった。

    p234
    年々歳々花相似タリ 歳々年々人同ジカラズ(和漢朗詠集・無常・宗之問)
    (毎年花は同じように咲くが、人はそうではない。去年元気だった人が亡くなっていたりする。)

    p255
    雲にまがふ花のしたにてながむれば おぼろに月は見ゆるなりけり(山家集・九〇)
    (雲と見間違うような花の下からすかして見ると、月はおぼろに霞んで見える。)

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