桃太郎の誕生 (角川ソフィア文庫)

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著者 : 柳田国男
  • 角川学芸出版 (2013年8月24日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (510ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784044083182

作品紹介

「おじいさんは山へ木をきりに、おばあさんは川へ洗濯に…」。誰もが一度は聞いた桃太郎の話。そこには日本固有の信仰が秘められていた! 昔話の構造や分布などを科学的に分析し、その謎を解き明かす。

桃太郎の誕生 (角川ソフィア文庫)の感想・レビュー・書評

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  • 柳田國男。
    気にはなっていたのに、なかなか読むチャンスがなかった。
    なんだかすてきな装丁の文庫で出ていたのでうっかり購入。

    昔話を題材に、文化の伝播について論じられている。
    例えばシンデレラなどのような「継子譚」や人間とそれ以外のものが婚姻する「異類求婚譚」など、世界中の民話(神話)と日本に伝わる昔話にはいくつもの共通点がある。そういった話が日本にはたくさん残っており、その話の採集に柳田國男は力を入れていたという。
    このあたりの民俗学的な話は、現在の研究とどれだけ違いがあるか分からない。しかし柳田國男のこの作品を含めた研究が、当時の日本で「昔話」「童話」の研究に一石を投じたのだろうとは思う。
    ただ個人的には、発表当時のこの作品の学術的な価値には正直あまり興味がない。

    「瓜子姫」の昔話を読んだ人は多いと思う。
    わたしも甥っ子や姪っ子に昔話を強請られたので、わたしの小さなときに父に読んでもらった「昔話百話」のような本を持ってきて読んであげた。話をよく覚えてなかったので瓜子姫を選んでしまったのだろうが、終わり方がとても残酷だった。そういえば「かちかち山」を読んであげたときも、あれ、と思ったのだ。単純な疑問として「なぜこんなに残酷なのだろう」と思った。
    書店でこの本を手に取ったときに、「瓜子姫」の章があったので気になって購入した。
    瓜子姫と桃太郎。じつはこの二つの話には共通点がある。
    どちらも川から流れてきた果実から生まれている。昔の日本人は、「川から流れているもの」は子供を授かることを想像させるものであったらしい。また、瓜子姫も桃太郎も成長がとても早いのだ。まるで男女対の話のように。
    昔話の特性、とも思えて今のわたしには「当たり前」のようなことが、柳田國男の手に掛かると「なぜ」の対象となることが面白い。瓜子姫の章ではさらにいくつかの地域に残る瓜子姫の話を比較し、共通点を探すことでこの話の「核」はなにか?と探っていく。物語の原型を探すのだ。

    簡単に聞いても面白い。難しく考えても面白い。「古典」とはそういうものなんだろうな。昔話を「古典」とするのに抵抗がある人もいるかも知れないが、研究対象としてこんなに面白いものがあったのか、と驚きをもって、この本を読んでいる。
    昔は今よりずっと、その土地土地の昔話があふれていたんだろうな。童話化された昔話しか知らないわたしは、この本でその奥深さに触れたような気がする。

  • いわゆる「小さいおっさん」(※流行りのゆるキャラではなく、都市伝説的に語られるアレのほうです)というものの存在について、たまに真面目に考えるのですが(え?)、まあ西洋にも小人の妖精さんのお話はたくさんありますけど、ああいうのは大抵もうちょっと可愛らしいビジュアルだったりするのに、なぜ日本人が見るのはいつも「小さいおっさん」なのか、なぜキュートな女子や幼児でも、あるいは百歩譲って「小さいおばはん」でもなく、「おっさん」でなくてはならないのか、幻覚というにはあまりにも共通点も謎も多すぎて、いつか誰か科学的に解明してくれないかと常々思ってるんですけども。村上春樹の「1Q84」に登場する「リトルピープル」というものは、この「小さいおっさん」に関する村上春樹からの回答ではないのか・・・と真面目に思ったりもしましたし(笑)。極論すれば「古事記」にスクナビコナが登場した昔から、つまり「小さいおっさん」は実在する!!だからみんなが目撃している!!という考え方もできなくはないんじゃないかと。

    ・・・閑話休題。柳田が分析する桃太郎は、小さいおっさんではなく小さい童にまつわる説話や伝説です。現代のわれわれが知っている、ある程度定番の脚色をされたストーリーとは別に、日本中のあちらこちらで語り継がれたさまざまなバリエーションを収集してゆくと、別々だと思っていたいくつもの昔話の源流がもとはひとつのものであったのではないかと推測されるのが面白い。

    そしてそういう物語の原型みたいなものは、別の創作物の中にも脈々と受け継がれていて、ふと思うと「八犬伝」なんかそういった伝説の集大成みたいなところもありますよね。余談な上にこんなところでネタバレするのもなんですが、最近読んだわりと軽めの作品なんかでも「陽だまりの彼女」なんて、いわゆる鶴の恩返しに代表される、報恩型の異類婚姻譚の現代版ですし。余談ばかりでごめんなさい。とにかくどの解釈も奥深くて面白かったです。

    ※収録作品
    「桃太郎の誕生」「海神少童」「瓜子織姫」「田螺の長者」「隣の寝太郎」「絵姿女房」「狼と鍛冶屋の姥」「和泉式部の足袋」「米倉法師」

  • これまで読んだ柳田國男の本の中でもトップクラスの面白さだった。
    「昔話」をめぐって、有名なさまざまなストーリーの交錯や混交を指摘してゆく過程がスリリング。最初の「桃太郎の誕生」あたりでは、意外にもグリム童話などの海外の「昔話」との比較民俗学的、人類学的な考察へと接近する。柳田が海外の民俗学についても知識をもっていたことを窺わせるが、やはり柳田のやりたかったのはあくまで日本国内の民俗学であった。
    そして、どうやら昔話の内容的起源を神話に求めているようだ。庶民の民俗文化に宗教的傾向が流入してくるのは極めて自然なことであろう。
    たくさんの典型的昔話とそのバリエーションを並べて比較していくスタイルは、レヴィ=ストロースの『神話論理』を思わせるが、もちろん柳田の手法はちがう。まさにそこに、「柳田民俗学」の手腕を垣間見ることができる。それを辿るのは知的な興奮を誘う体験であった。

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