日英同盟 同盟の選択と国家の盛衰 (角川ソフィア文庫)

著者 :
  • KADOKAWA/角川学芸出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784044092238

作品紹介・あらすじ

明治維新後の日本が列強入りをした日英同盟、破滅に追まれたドイツとの連盟。軍事外交史研究の泰斗が、日本の命運を決めた歴史的な選択を再検証。同盟国選定の要件と政策の意義から、近代外交の要諦を探る。

感想・レビュー・書評

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  • あんまり日英同盟について書いた本を読んだことがなくて、それなりに面白かったが、現代の文脈での反中嫌韓に繋げるのはよくわからない。

  • 【目次】(「BOOK」データベースより)
    日朝清三国同盟から日英同盟/日英同盟とイギリスの真意/日英同盟と日露戦争/イギリスの援助/日露戦争後の日英同盟/日本海軍の対英支援作戦/陸軍のヨーロッパ派兵要請と日本/アジア主義と日英中関係/離反する日英両国/ワシントン会議と日英米関係/第二次世界大戦と中国・ソ連要因/第二次世界大戦とドイツ要因/同盟の選択と国家の盛衰

  • 坦々と時系列に沿って事実を分析している者を期待していたのだが、ちょっと違った。時系列では無く、テーマ順に並べているので、述べられている出来事が時系列順ではないし、現在の日中関係について繋げているのはちょっと好みでは無かった。あと、イデオロギーが強いのが気になった。
    とはいえ、日英同盟成立の経緯・背景、日英同盟を日本がどう活かしたのか、日英同盟を英国がどう活かしたのか、そして、どうして同盟が解消されたのかについて総合的に述べられているのは良かった。
    条約というのは、『一方的に活かしすぎる』事は、よろしくないなとか、条約に魂を吹き込むのはお互いの言動と世論なんだなと。
    そして、日英同盟時に参戦要求を断るときの日本側の理由付けや言動、そして日本の世論の反対理由が戦後平和主義に基づく『一国平和主義』と全く同じでちょっとあきれた…あれは帝国憲法の時代から全く同じじゃねえかw

  • 主題であるはずの日英同盟の記述が十分とはいえない。途中からは、日英同盟に全く関係ない、右翼学者らしい著者独自の中国朝鮮批判が展開され、イライラさせられる本。

  • 日本は義和団の乱の活躍と厳正な規律により、ロンドンタイムズの報道でその事実が広く知れ渡り列強各国の信頼を得た。

    更に言うと、この時列強の要請に応じ戦力を派遣したことも信頼を得ることに繋がっている。(最初は日清戦争による疲弊とロシア情勢の緊迫化で渋っていた)



    日露戦争開戦前における日本とロシアの間の外交交渉の軌跡を見ると、「話し合いで解決」することがいかに難しいかを物語っている。

    一方が誠実に外交交渉しようとしても相手がそれに応じなければ一向に前に進まず交渉は不毛に終わってしまう。戦争とはこういったことがきっかけで勃発するのであろう。



    ポーツマス講和条約は確かに傍から見れば、樺太も無償割譲だし賠償金もないという不平等なものに見えるが日本としてはこれが破断し戦争を続けても既に戦力は疲弊しきっており、劣勢となることは目に見えていた。だからこその条約締結だったしアメリカやイギリスはこれを称賛したが、国内はそうではなかった。戦争を継続せよという世論が高まり日比谷騒動が起こってしまった。これによってアメリカの世論を完全に敵に回してしまった。いつの時代も勝手に怒って事態を悪化させるのは実情を正確に伝えないマスコミとそれを鵜呑みにする情弱だ。



    第一次世界大戦中の日本海軍の欧州やオーストラリアに対しての護衛は今でいえば正に「集団的自衛権」そのものである。

    日英同盟という双務的なものがあったからこそ、そこに信頼が生まれていたと言える。



    当時の派兵反対の世論を煽る新聞や学者、それを政争の具としていた国会を見ていると、現在の日本と基本的に何も変わっていないように感じる。

    そしてその圧力に屈し国際関係よりも国内政治を優先する政府もしかりだ。

    このような下らない話に踊らされ、後の国家情勢に大きなしこりを残しているというのは何とも皮肉な話である。



    当時イギリスの植民地だったインドの反英感情やアジアから来日した人たちが行った反キリスト教とイスラム教の布教などにより、どんどんと列強打倒、大アジア主義が日本に浸透していった。



    第一次世界大戦時のイギリスの派兵要請を日本が断り続けたことなどについてイギリスは確かに不満を漏らしているが、基本的には日本の貢献は評価されていると著者は言う。

    イギリスも基本的には日英同盟の解消はオーストラリアなどのイギリス自治領の脅威であるという認識があり望んではいなかった。

    ただロシアという共通の敵がいなくなったことや上述の日本が派兵に消極的だったことも重なって、同盟を維持するメリットがイギリス側になくなりつつあったことは事実だろう。

    また、人種差別的な風潮からくるアメリカの反日感情と長期的な極めて巧妙な外交戦略により、日英同盟は解消せざるを得なくなってしまう。

    この当時の日本の外交戦略について外務大臣だった幣原の評価は国内では好評であるが結局のところ日本人の真っ正直で裏のない外交が列強のしたたかな戦略の前に屈し、日英同盟の解消という悲劇へつながったと言える。



    アメリカは中国のナショナリズムに迎合し中国が国際法や条約を無視することを容認した。中国は殊更に日本の脅威論を振りかざしていたが、当時の中国は国としての体をなしておらず日本の介入がなければ崩壊状態に陥っていただろう。

    また資源のない日本が中国の資源を求めていたのも列強が植民地支配をしていたことと同様のことであり、おかしなことではない。

    歴史的に見ればワシントン条約解消の直接的な原因は満州事変などの日本軍の中国侵略であることは疑いようのない事実だが、その遠因を作ったのは国際ルールを無視してナショナリズムを叫び続けた中国であり、またそれを煽ったアメリカなのであると著者は語っている。



    日本陸軍は左傾化しており国民感情を反英米へと煽った。

    満州事変の遠因は張学良の満州鉄道敷設と日本人や朝鮮人に対しての差別的扱い(ただこれについては朝鮮人の扱いが特にひどかった)によるもの。

    中国は日本占領時代の満州を「偽満州国」と批判しているが、当時はアメリカもソ連も認めており、また国際的にも連盟加入国の3分の1以上の国家が満州を国家として認めていた。

    当時の中国国民政府も認めていた。(蒋介石が率いた中国共産党と対立する政府)



    満州事変は日本の侵略であることは疑いようのない事実だが、前述の張学良の反日感情や当時満州が日本の経済にとって非常に重要な意味を持つ場所だったことを考えると、当然の帰結だとも言える。

    今日において満州事変が非難されるのは結果的に日本が敗戦国となったからであり、立場や状況が変われば後の評価もまた然りなのではないだろうか。

    「勝てば官軍、負ければ賊軍」とはよく言ったものである。



    第二次世界大戦前には中国のナショナリズムと排日運動が過激化しており中国で様々な対日事件が起こっていた。

    日米開戦の正史は日本の侵略戦争であるが、修正史観として当時のアメリカのルーズベルト大統領が共産主義を誤解しており隠れ共産主義者を政権に入れたことが原因であるとするものもある。

    アメリカの責任もあったのではないかと著者は語る。



    大陸国家は領土への執着が強く、それを守らんとするが為に戦争が起こる。

    大陸国家は自国に優越感を持っている場合が多いが、特に中国は侵略戦争であっても自己を正当化し他国を蔑視している傾向が強い。

    このような正義感から中国の外交は他国とのバランスを取るというよりも、他国を自国の支配下に置いて有利に進めようとする思想が強い。



    また大陸国家は常に国境を巡る侵略の危険性がある為、軍を国境繊維配備しておく必要があることから政治体制は中央集権的になりやすい。



    アメリカやイギリスに代表される海洋国家は海に守られていることから他国の侵略が少なく、他国との自由な貿易により国家が繁栄する為、比較的戦争が少なく政治体制も自由主義的な傾向が強い。



    日本は見た目は海洋国家であるが中国大陸にほど近く、政治体制も自由主義と社会主義の間のような中途半端な位置にあり悪く言えば「島国根性」が根強い国である。



    同盟関係は表面上の意義としては、相互に助け合い共存していくためなどと言われるが本来の目的は国益にかなうのかという点のみである。

    戦後日本の平和が保たれたのは平和憲法があったからではなく、日米安保と在日米軍の武力であったということは疑いようのない事実である。

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著者プロフィール

元・防衛大学校教授。NHK「坂の上の雲」海軍歴史考証・海軍指導担当。

「2010年 『日露戦争を世界はどう報じたか』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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