被ばく列島放射線医療と原子炉 (oneテーマ21)

  • KADOKAWA/角川学芸出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (208ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784046534262

感想・レビュー・書評

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  • 脱原発のカリスマ小出氏と、放射線治療の専門家である西尾氏の対談形式による本。西尾氏による、内部被ばくに関する説明は理を得ていると感じた。

    西尾氏は、内部被ばくも含めた全ての被ばくを全身で均質的に被ばくする前提で議論する事に対して、実際の放射線治療で放射線源が局所的に露出される患部だけに作用されることを例に出して反論する。すなわち、原発事故由来の放射性物質が実際に体内に摂取される場合には、その物質が直接的に接する箇所が局所的に被ばくするのであって全身均一的にモデル化するのは間違いだ、としている。

    放射性廃棄物の処理方法方法については、両著者は未解決との主張をとる。また、西尾氏は全国150ヶ所の医療機関に配備されている小型加速器「サイクロトロン」が、いずれ耐用年数を過ぎたら放射性廃棄物となることについても問題提起している。

    本書が言及する内容の多くは国内イシューであり、新興国で多くの原発建設が予定されていることや、特に、中国の石炭火力発電を原子力発電に転換することで大気汚染が軽減されるメリットがある点などには言及されていないことは物足りない。

著者プロフィール

元京都大学原子炉実験所助教。工学修士。
第2次世界大戦が終わった4年後の1949(昭和24)年8月、東京の下町・台東区上野で生まれる。中学生のとき地質学に興味をもち、高校3年までの6年間、ひたすら山や野原で岩石採集に没頭する。68年、未来のエネルギーを担うと信じた原子力の平和利用を夢見て東北大学工学部原子核工学科に入学。しかし原子力について専門的に学べば学ぶほど、原子力発電に潜む破滅的危険性こそが人間にとっての脅威であることに気づき、70年に考え方を180度転換。それから40年以上にわたり、原発をなくすための研究と運動を続ける。2015年3月に京都大学を定年退職。現在は長野県松本市に暮らす。著書に『隠される原子力・核の真実─原子力の専門家が原発に反対するわけ』(2011年11月/創史社)、『原発のウソ』(2012年12月/扶桑社新書)、『100年後の人々へ』(2014年2月/集英社新書)ほか多数。

「2019年 『フクシマ事故と東京オリンピック【7ヵ国語対応】 The disaster in Fukushima and the 2020 Tokyo Olympics』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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