戦後日本が失ったもの 風景・人間・国家 (角川oneテーマ21 A 121)

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  • 角川書店(角川グループパブリッシング)
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  • Amazon.co.jp ・本 (258ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784047102507

作品紹介・あらすじ

平和の代償に日本人は何をなくしたのか?新しい日本の国家ビジョンそのヒントは「江戸」にある。日本が見失った大切なものを回復する試み。

感想・レビュー・書評

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  • 幼い頃の記憶を辿ると、家の近所は田んぼや畑に囲まれ、広大な林から流れてくる風の音が、時に轟音の様に真っ暗闇を駆け抜けたり、枯れ葉を舞わせながら吹き抜けていく様な風景が身近にあった。学校帰りに裸足で田んぼのヌルヌルした土に足を踏み入れては、得体の知れない虫を踏んづけたり、畑を駆け回れば、枯れ草に足を取られて派手に転げ回っていた事もよく覚えている。今そんな風景はどこで見られるのだろうか。少なくとも実家に久々に帰れば、一体自分が小学校に通った通学路が何処だったのか、待ち合わせ集合場所のあの、よく噛み付く犬がいた家は何処だったのか全くわからない。砂利道はアスファルトに変わり、曲がりくねった生垣はまるで定規で引いたように真っ直ぐな道に変わった。こんなにつまらない風景だったかな。当時からそこに暮らす近所の怖いおじさんも母親の様に優しいおばちゃんもみんないなくなった。父母は未だ未だ健在で元気に暮らしているが、全く別物に変わっていく街並みをどの様な気持ちで見続けてきただろう。
    本書はタイトルには戦後日本が失ったものとあるものの(確かに戦後には違いないが)、古き良き日本の風景が作られた殺風景なものに変わっていく悲しさ、虚しさの様なものを伝えている。確かに太平洋戦争末期、日本の主要都市の多くは空襲を受けて焼け野原と化した。何もない炭の中からの復興はアメリカのGHQが一緒に作ってきたと言っても過言ではない。その中で水道ガスは地下に埋まったが、電気は電線を伝って各家庭に届けられた。だから私の記憶する街の風景は幼い頃も今でも町中電柱が溢れている。筆者はそれらを地下に埋めて代わりに木を植える案を提唱するが、それも緑に溢れた昔の日本の風景に近づく一歩だろう。
    風景だけでなく人の心も時代の流れと共に移り変わっていく。今を生きる人々の価値観も大きく変わった。長く生きると、過去のそれらと嫌でも比べてしまうのだが、こと、風景に関しては前述の様に私も昭和時代が好きだ。野山を駆け回り土を足の裏に感じたあの時代が懐かしい。
    これからの日本の都市がどう変わり、何が人々にとって幸せの基準となるかはわからない。先進国中日本の国民幸福度は最低レベルにあるそうだが、少しでも幸せを感じられる国になってほしい。本書を読みながらそうした幸せとは何かについて考える良い機会になった。

  • 佐藤優と東郷和彦との関係、
    確かに電信柱は無くしたい。
    国体とは?

  • 了。

  • 景観は公共のものとして考える欧州に対し、家は自分のものであるのでどのような概観でもかまわないと考える日本。
    そのような話から、教育、文化へと発展させ、日本人としての軸を持つことが大事であるとまとめている。グローバル社会が加速す売る中で、小手先ではなくきちんと自国を語れる教養をもつことが、真のグローバル化であると考えさせられた。

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著者プロフィール

静岡県対外関係補佐官、静岡県立大学グローバル地域センター客員教授

「2021年 『一帯一路』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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