辺境で 伊図透作品集 (ビームコミックス)
- KADOKAWA/エンターブレイン (2016年2月25日発売)
- Amazon.co.jp ・マンガ (240ページ)
- / ISBN・EAN: 9784047340091
作品紹介・あらすじ
第49回ちばてつや賞大賞受賞、第5回漫画アクション新人賞入賞を経て、『ミツバチのキス』『エイス』、そして最新作『銃座のウルナ』と、漫画シーンから熱い注目を浴びる意欲作を発表し続ける鬼才・伊図透。未発表作から最近作まで、その多彩な魅力に溢れた独創性豊かな作品群を一冊に編んだ、待望の初短編集。
感想・レビュー・書評
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伊図透氏の作品を初めて読みました。
「夢」があるし、「人生模様」を感じる。 好きな物語は・・・ラストの”NO TITLE”です。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
なんともいえない余韻の残るマンガ。文学的、芸術的だけど奇をてらった印象はない。雰囲気マンガと紙一重なところもあるけど、他の作品も読んでみたい。銃座のウルナ気になる。
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地に足ついた実感を捉えようとする創作の姿勢が随所にみられるため、この作者が靴にフェティシズムを抱くのは納得感しかない。
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土とか鉄とか。
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ただ一言
良かった… -
机上の計画だけで、技術的裏付けもなく、強引に進められる、辺境の鉄道敷設。稼ぎがいいだけじゃねえ、頭が悪いからこんなところで働いている、商売する頭も技術もない、多くは引き止める家族もいない、だから換えのきく頭数として送られてくる、と嘯く現場の長いリーダー。ここにくるようなやつじゃないだろう、と言われつつも働く、新入り。実は国の腐敗を暴こうとする新聞記者。懸命に働き、溶け込んだように見えたが、中央から来た官僚にみぬかれ、暗殺。そこまでする必要があるか、と問うも、相手にもされず。静かに憤りを秘め、事故に見せかけて、コンクリートに埋めてしまう。おれは死んで行くやつは何人も見てきたんだ、と。苦い思いの残る「辺境者」。それは誇りを持って定年までつとめあげた鉄道職員の最期を描く「NO TITLE」も同じ。デザイン学科なのに鉄に目覚め、懸命に卒業制作の鉄のオブジェにとりくむ美大生を描いた「STEEL BLUE」”鉄を扱うことは不自由さと闘う事、鉄と闘う事で自分と闘っているんだ。鉄を叩く事で自分を叩いているんだ 私の弱さを叩いているのだ”。懸命さがひたすらまぶしい/男子=バカ、と達観した女子小学生のえがく魅力的な悪ガキたち、かものはしのようなかっこいい靴を求めて街をさまよう男子学生、あこがれの子がカウンター越しに履いているのを知らず、同級生の子がネットでサクッと見つけて買ってしまったのも知らず。「ミツバチのキス」「エイス」を愛読した身からすると原点にもさかのぼれる味わいふかい作品集。