- Amazon.co.jp ・本 (220ページ)
- / ISBN・EAN: 9784048731942
作品紹介・あらすじ
血と汚辱にまみれた地獄道…。今宵、女郎が語り明かす驚愕の寝物語。第6回日本ホラー小説大賞受賞作。
感想・レビュー・書評
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楠音の表紙に惹かれて読んでみました
行燈の明るさが届かない暗がりを覗き込むようなヒタヒタとした怖さが伝わる4話でした
岡山弁での語り言葉でお話は進みますが、違和感なく読めました
聴いた事のない岡山弁は何だか癖になり、ずっと聴いていたくなりました詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
志麻子さんが第六回日本ホラー小説大賞を受賞されたのがこちらの表題作。このタイトルは岡山地方の方言で「とても、怖い」の意味だそう。装丁の女郎がまた幽霊のようないでたちで不気味。甲斐庄楠音という人の「横櫛」という作品だそう。この白粉で微笑む姿が艶やかであり不穏。
4つの短編集だがどれも仄暗い。表題作は独特の方言で女郎が語る寝物語。方言に凄みを感じる。続いての「密告函」では虎列刺(コレラ)が流行ったお話。あと「あまぞわい」と「依って件の如し」と続くのだが、どれも男女の関係を生々しくも濃厚に、異臭を放つような物語。 -
岡山弁で「とても怖い」という意味の「ぼっけぇ、きょうてぇ」。怖い、恐ろしいというよりも、不気味な印象の方が勝った。4作の短編で、どの話も舞台は一昔前の貧しい村での出来事。女の執念や強い想いは怖いと思わせられる。
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幽霊が出てギャー❗️残酷な描写にヒー❗️という恐ろしさではない。(語彙力…。)
この短編集の恐ろしさは、かつて本当にあった話なのではないか、あるいは起こり得た話だと思わせる点にあると思う。
結局一番恐ろしいのは霊や血や奇想天外なお話ではなく人間なのだな、と。
人間の陰鬱な闇を、まるで見てきたかの様に表現できる作者の文才が凄い。 -
自分が今欲していた恐怖とかドロドロとは違ったので、あまり入ってこなかったので星2なのですが、おもしろかったです。ただ、そういう手法なのか、同じ内容を何度も読んでるような、話が進んでるような進んでないような感じはありました。
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読みながら、背筋がヒヤッとするような本。
劇的な怖い感じは無いが、一枚板の向こうでナニカあったみたいな。
お化けが出て怖かったとかじゃない。
暗闇が怖いみたいな、原始的な恐れを感じました。 -
1999年の日本ホラー小説大賞
岡山県の怖い話し
◆ ぼっけえ:とても きょうてえ:怖い 恐てえ
女郎宿での娼婦の寝物語
隔年で凶作になる地域では間引きが日常
親は産婆と言っても子潰し婆やら子刺し婆と呼ばれる間引き専門
自分も産み落とされて川に流され二日生きてたから育てられ間引きの手伝いをして育ったという
農家には食うこととすることしかない
女どもでさえ水子を供養するより夜になれば懲りもせず床でいそしむ
山には餓死者、川には水子が腐ってる
津山は昭和の初めに大量殺人が現実に起こり全国的に耳目を集めた事でも有名で、横溝正史がこの事件を元に 八つ墓村 を書いたと云われている
実際の事件は、土地の風習になっていた夜這いが犯人に大量殺人を犯させる土壌になっていたそうだ
そのくらいこの土地の夜這いという風習は強く根づいていたようだ
◆ 密告箱 にもこの夜這いが土地の風習だった事が下敷として描かれている
コレラガ流行り村人達が死んでゆく
その家の周りには消毒用の白い粉が撒かれる
村の助役がコレラで死ぬ際に、コレラが家族にいても隠そうとする村民のことを考え、無記名のコレラ患者密告箱を役場に設置を提言した
ここから村の役人の男が通うようになってしまった妖しい女との物語が始まる
◆ あまぞわい
瀬戸内海に残る怖い話し
そわい:宗谷 海潮が引くと現れる砂浜や岩場
あま: 海女 もしくは 尼 、2つの話があると言う
左足が発育しない障害者の網元の息子と、漁師に身請けされて嫁になった女の現場を漁師が見つけた
漁師は二人を殴りつけ首を絞める
女の息はあったが不具者の男の息は無い
あまぞわいに船で遺体を捨てに行った
ある日浜で網を上げていると腐乱した片足が未発達の遺体が揚がる
◆ 依って件の如し
竈の横には恐てえものが居る
野良仕事をしながら幼い兄と妹が暮らす
牛より過酷な農作業だ
結界の張られた田圃がある
ツキノワというそうだ
古来よりツキノワには牛も女も入ってはいけない
その泥の中で喉を掻き切って死んでいたのが兄妹の母親だった
牛の化け物は くだん というそうだ
兄は日清戦争に出兵する
ツキノワのくだんに 自分は死なない 戦争は勝つと 何もかも教えてもらったそうだ
万歳三唱の中、牛の咆哮が聞こえる
妹は農家に奉公だ 牛小屋で
戦争には勝ったが兄は帰ってこない
母家の家族三人が喉を掻き切られて惨殺される
ツキノワでは藁人形を犯人に見立てて大人たちが順番に棒で突き刺して呪う
山の中の村の話しは過酷な日々の物語だ
妹の父親は兄だったとか
眩暈がするほどの厳しさと煌めく祭りの日
幻影が入り乱れる
民俗学的にも興味深い土地柄を持った地域ではないかとも思っているものの、私はこの地域に一度も行ったことはない
岡山市には何度も行っている
鵜城にも何度か行った でもその位だ
津山に良い印象を持ったのは山田洋次監督のフーテンの寅さんシリーズだ
嫁入りの車が細い道を進む
花嫁の車は後戻りを縁起悪いとするので、対向車がバックすることになっているそうだ
こうした土地に根ざした暮らしは今も脈々と受け継がれたものがあるはずだと、物の怪ばかりでなく、見知らぬ土地に憧れを抱いている
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1人で居れなくなる怖さではないけど、何かが近くにいてもおかしくないと感じるくらい。別にそれが自分に害をなすものでないし、居るのが自然の理だからふわっとしてるような。そのくらいの怖さとの距離感が良かった。
ホラー小説としても良い上に、人の恨みとかの心情描写がすっごく面白い。
愛しくて、でも恨めしいって気持ちに感情移入しすぎてしまう。
女が男を恨んで、別の人まで巻き込んで不幸にしていく話、っていうイメージ。だけど、そのくらい恨むのも仕方ない、って共感と安心してしまった。 -
ある遊廓のある夜伽話。あやすように話した不可思議話。男が引きずり込まれたように、読み手も、心地よい闇の沼に浸かっていくような感じ。