もえない: Incombustibles

著者 :
  • 角川書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (259ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784048738163

感想・レビュー・書評

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  • 『割れたり壊れたりしたものも元には戻らない。倒れたものが自然に立つこともない。死ぬというのは、宇宙の原則から見れば安定した形なのだ。』

    『神と悪魔の違いが、ただの人間にどうしてわかるだろう。信仰っていうやつは、そこが一番不思議なところだと思う。たぶん、信じてしまったら、そちらが神様で、もう片方が悪魔なるんだろう。』

    『大人になったら、仕事の話か、家族の話か、子供のことか、そんな話題になるのだろうか。少なくとも、うちへ来る大人たちが話しているのは、そんなことばかりだ。』

    『何がそんなに良いのか、今のところまったく理解できない。酒も煙草も、それができる、という状況自体が対人的に優位なものである、と僕たちの世代の一部は勘違いしている節もある。』

    『普通に生活するってことは、こんなときどきの、小さな泡のような気持ちの反発を無視し続けていることだ、とたまに気づく。気づくだけ。掠り傷みたいな細かい跡が、透明だった眼球のレンズを曇らせるだろう。もっと見えなくなれば、もっと楽になれる、そう予感するのだ。大人はみんな目が曇っているから、あんなに毎日きちんと働ける。きっとそうにちがいない。』

    「きっと、あの花が駄目なんだね ー 恐ろしいわ」
    「花がですか?」
    「ええ…、そう。植物の中で、花ほど不気味なものって、ないでしょう?」

    『彼が言っていることは、とても正しい、と思えた。しかも、わざわざ正しいことを、言葉にすると汚くなることを、口にしてくれるのが彼らしいともいえる。』

    『墓が沢山あっても、ここに死んだ人間が眠っているわけではない、ということを、当時の僕はもう知っていた。ただ、生きている人間がここへ来て、地獄か天国に通じているかもしれないインターフォンのボタン押すだけだ。たぶん、ベルは鳴っていない。もうとっくの昔にコードは断線してしまっている。そんなシステムではないだろうか。』

    『たしかに、命なんて大したものではない、と言う気もする。知らないうちに、べつに願ってもいないのに、頼んでもいないのに、この世に生まれていたのだ。寿命で枯れてしまうのも、雑草が人間に引き抜かれるのも、ほんのちょっとの差かもしれない。人間自体が地球の雑草みたいなものだ。どうせ、いつかは滅んでしまうのだから。』

    『人間って、そんな風にできているのだ。どんなに悲惨なことがあっても生きていけるように、精神が鈍感にデザインされているのだ。』

    『たしかに、それは気持ちが悪いイメージだ。
    けれど、植物が気持ちが悪いわけでもなく、土に埋まった死体が気持ちが悪いわけでもない。それらを結びつける人間の思考が気持ち悪いのだ。』

    「結局、残るのは、名前だけってことだよ ー 人間が死んでも、名前は残る」
    「名前が残ったら、思い出してもらえるもんね」
    「そう、名前は燃えない」

  • 爽やかさとミステリらしさが、バランスよく駆け抜ける。押問答のようなやりとりは、登場人物の世代が変わっても一緒。青春の要素もたっぷりで、軽く読むことができる。

  • 久しぶりに森さんが読みたくなり
    表装が可愛かったので読んでみた作品

    半分位まで淡々(ダラダラ)と話が続き
    いきなり「え?」って展開になり
    最後は「何だったんだ…?」って感じで終わりました

    例えば天使か悪魔かって話とか最後のもえない話とか
    そう言う考え方があるのか、なるほどね
    と思える所は新鮮だったし好きだけど
    どうもはっきりしないで終わった所が多くてモヤモヤ

  • 高校生が主人公のミステリー小説。ちょっとした日常に起きそうな話だった。

  • 途中まで読み進めると突然ストーリーが大きく展開するので
    まずは辛抱して途中まで読んでみてほしいです。
    展開が一転すれば、あとはノンストップで一気に読めます。
    最初に想像していた内容とは大きく異なり、
    裏切られた、というよりも”何なんだ”感の方が強いです。
    ラストの1文はいい着地。

  • 高2のある日、さして仲良くもない同級生杉山が山で死んでしまった。
    日曜日の葬式に出た俺は、仲間の姫野に「杉山からもらった手紙どうした?」とのふとした問いに、一年近く開けずに忘れていた手紙を読んでみる。そこには「山岸小夜子は危険な女だ。君から姫野くんに伝えてくれ」とだけ書かれていた。
    だが、山岸小夜子も2ヶ月くらい前に亡くなっていた…。

    読み始めた時は、ミステリーに近い青春物語?と思って読み進めていたんですが、残り1/3ぐらいから、ジェットコースターな展開に一気読みしちゃいました!

    つーか、最後怖かった…。

    もえない…タイトル勝手に萌えないかなぁと想像してたら、ラスト一行に謎解きされてました!

    うまい!

  • 再読です。前回は、多分、3年前の秋かな?
    最近、刺激の強い森作品ばかりを読んでいたので、姫野くんをみならって、ここでひとつ甘いモノを(笑)。

    主人公は高校生の淵田悟くんです。
    物語の始まりは、同級生の杉山の葬式。その後、彼が遺した遺品や、とある少女の死など、次々と不可解な謎が浮かび上がってくる。
    いったい、この「もやもや」はなんだろう?

    高校生たちの他愛のないやりとりがほほえましく、懐かしい気持ちになりました。これだけでも、読んでよかった。
    あとは、主人公の心境でしょうか。
    読み終わった後、最初に引用されているよしもとばななさんの文章を読みかえすと、感慨深いものがあります。
    夢の描写も素敵です。

    あ、あと、姫野くんがいい味出しています(笑)

    前回は、主人公視点で読んでましたが、今回は、かなり客観的な視点から読んでいました(無意識に)。
    これは、再読のせいもあるけれど、私自身が大人になってしまったということなのか。。。

    森先生は、本作で、高校生モノ、森の中の温室、あと「デジタルさん」を描きたかったのかな。
    メッセージ性は、「幻惑の死と使途」と似ています(すいません、ちょいネタバレかも、いやそうでもないか?)。

    とりあえず、装丁もさることながら、素敵な作品です。
    日向ぼっこしながら(理想は温室の中で…無理かw)、読むことをおすすめします。

  • 2014/03/02-2014/03/03
    星4

    少年が主人公。ホームズ的探偵役は不在。シリーズものではない。
    改行の使い方に目がいく作品だった。

    どうでもいいけど副題のIncombustiblesは「不燃物」の意味。combustが動詞で「燃焼している」みたいな意味。

  • 骨、ネームプレート、名前。

    森博嗣の本は、どれもあまり読後感がよろしくないのだけど(それでもまた読みたくなる)、この本は特にそれが強い。

  • どうしても読み進められない

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著者プロフィール

工学博士。1996年『すべてがFになる』で第1回メフィスト賞を受賞しデビュー。怜悧で知的な作風で人気を博する。「S&Mシリーズ」「Vシリーズ」(ともに講談社文庫)などのミステリィのほか「Wシリーズ」(講談社タイガ)や『スカイ・クロラ』(中公文庫)などのSF作品、エッセィ、新書も多数刊行。

「2023年 『馬鹿と嘘の弓 Fool Lie Bow』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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