罪火

著者 :
  • 角川書店(角川グループパブリッシング)
3.62
  • (8)
  • (33)
  • (26)
  • (3)
  • (1)
本棚登録 : 150
感想 : 34
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (259ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784048740197

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • なんだか、とてつもなく重い話だった。
    最後は、切なすぎて涙。

    主人公の若宮には最初から違和感。本当に悪い人なの?
    すぐに頭に血が上ってしまう人ではあるけど、根は悪い人ではない。
    悪になり切れてない所にむずむずイライラして、じれったい感じ。
    なぜか、何とか若宮に逃げおおしてほしいという気持ちが最初からありました。

    そして、衝撃のラスト。
    犯罪者の更生とは何なのか。
    突き詰めると、やはり罪を憎んで人を憎まず。

  • 花火大会の日。
    神社で13歳の美しい少女が殺害された。
    まもなく犯人はつかまるも真犯人は別にいた。
    この物語では冒頭に彼が真犯人であり、どうしてそんな犯罪を犯したのかというのがその後語られている。
    だからこの物語は誰が犯人なのか?
    真相は?というのを追うというよりは罪を犯した人とその被害者となった人の心情を通して人間とは?と問いかけている。
    ・・・と思いきや、最後の最後にまた別の真相があった。
    個人的にはその最後の真相のくだりはいらなかった。
    それまではこの本のテーマとは何だろう?
    という事を通して色々考えさせられる話だったのに、そのくだりがあったために薄くなってしまったように思う。
    まるで犯人や犯罪が美化されてしまったようにも感じた。
    ただ、ミステリーファンや純粋にストーリーを追って楽しむ人にとってはその方が刺激的で面白いのかもしれない。

    私が途中の読書で思っていたのは、犯罪を犯した青年の心情の経緯を通してのこと。
    彼が最初は恵まれない環境にありやさぐれていたのに、ある事から一変、ちゃんとした仕事に就き、彼女もできて順風満帆になる。
    それまでの彼は自分が犯した犯罪をある意味「仕方ない」ととらえていたが、自分が落ち着いた状態になると罪悪感をもち、その後は犯罪が発覚する事を恐れてまた悪い心をもつようになる。
    その様子は本当に人間的だと思い、心情が理解できた。
    ああ、少しでも良心があったり、人間的な部分があればこういう心持になるものだろうな・・・と思った。
    そうして思ったのは、人間再生していくにはある程度の環境も必要という事か?という事。
    ある程度、ひと心地ついて人というのはそれまで自分がした事を振り返る事ができるのか。
    もちろん、そうじゃない人もたくさんいる。
    どんなに恵まれないつらい境遇であっても罪悪感をもち再生していこうとする人。
    そんな人は本当に強靭な精神の持ち主で決意をもっているのだろう。
    返せば、そんな人じゃない、この物語の犯人のような男は恵まれない状況のままだったらまだまだ犯罪をおかしていたのだろう。

    そんな事を思いながら読んでいたので、最後に最後の話には正直ガッカリした。
    こんな理由づけなんていらない。
    その方が考えさせられる話になったと思うのに、急に薄い話になったな・・・と感じた。

    この本で初めて修復的司法というものを知った。
    被害者の回復をめざす仕事で、被害者の母親は校長先生という肩書がありつつそういう仕事もしている。
    実際、自分も被害者という立場になった訳だけど、本当の意味で一人ひとりの被害者の立場になって心に寄り添うというのは本当に本当に難しい事だろうな・・・と思う。

    この作者の本は初めて読んだけど、またこの人の読みたいな・・・と思える文章力と内容だった。

  • デビュー作「雪冤」が横溝正史賞を受賞。
    受賞後第1作目。
    読ませる文章が凄く安定しており、
    最初からスンナリとストーリーに馴染めます。上手いです。

    今作もやはり社会派と呼べるシリアスで被害者と
    加害者の関係を両面から描きつつ、作者の思いを
    伝える事に成功していると思います。
    が、やや事件の見せ方が強引なような気もします。
    不自然...?と思わす部分が多くて途中までは
    ちょっとだけ座り心地の悪い感じ...かなぁと。

    ですが!!最後の最後にその真相が明らかになればこそ、
    その心地悪さは納得出来るつーのは...
    まんまと作者にしてヤられたの...かも。
    個人的には前作よりも数段いい作品かと!

  • 被害者の痛みを知り加害者が更生する。加害者がどんな風に更生すれば被害者の痛みは和らぐのだろうか。被害者はものすごい葛藤の中で苦しんでいる。作品は加害者の心からの更生は可能かという流れから、結末は意外な方向に展開していく。憎しみが被害者を犯罪者に変えてしまう連鎖が悲しい。

  • こんな終わり方。悲しい

  • 加害者と被害者との対話ってどうなんだろう。
    加害者が心から反省しているかどうかなんて分からないし、無理な方法なのでは?と思いつつ読み進め、ほらやっぱり若宮は後悔なんてしないヤツなんだとイライラしていたら、そういう展開かー。
    上手いごまかしでした。やられた。

  • 罪を犯したことに傷付く者たち。しかしその罪滅ぼしは人それぞれ。元校長のキャラが少々善人化し過ぎてる気もする。

  • 2017/12/15

    罪の火に焼かれる。
    序盤、若宮の悪意が怖すぎてなかなか読み進められなかった。
    更正ってなんだろうな?殺人は動機によって罪の大きさが変わるのかな?

  • 加害者の贖罪と更生、被害者の怒り苦しみ、そして赦免。
    加害者側の揺れる心理描写がとても良かったです。

  • 叙述トリックの社会派推理サスペンス。根底に修復的司法がある。被疑者と被害者家族が向き合う事で真摯に犯罪を受け止めようとするものだが、双方の思いが掛け違い負担が大きくなるデメリットの方が多い。新たな犯罪の引き金にもなりかねない!そうした危惧を小説として世に問いかけた作品と言えるだろう。
    若宮が少年時代に殺人事件を起こし、町村校長が修復司として係わる。ここから事件が連鎖していくが、何故若宮が少年犯罪に陥ってしまったのかが抜け落ちている。犯罪者心理と被害者家族の心理描写で構成されて最後のどんでん返しで未来志向の落ちに成っている。何となく甘さを禁じ得ない!

全34件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

1974年三重県生まれ。龍谷大学文学部卒。『雪冤』で第29回横溝正史ミステリ大賞、及びテレビ東京賞をW受賞。ほかの著作に、『罪火』『確信犯』『共同正犯』『獄の棘』など。

「2023年 『正義の天秤 毒樹の果実』 で使われていた紹介文から引用しています。」

大門剛明の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×