羽州ものがたり (カドカワ銀のさじシリーズ)
- 角川書店(角川グループパブリッシング) (2011年1月29日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (296ページ)
- / ISBN・EAN: 9784048741682
作品紹介・あらすじ
ひとつしか瞳をもたない鷹のアキと暮らす少女・ムメは、都から来たばかりの少年・春名丸と出会った。それが縁で春名丸の父親・小野春風にさまざまなことを教わるムメ。やがて見違えるような娘へと育ったムメは、春名丸との友情をはぐくんでいく。だがそのころ、羽州では都に対する戦いが起きようとしていて-!!それが、東北の地、羽州で起きた「元慶の乱」のはじまりだった。
感想・レビュー・書評
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「天山の巫女ソニン」の菅野雪虫さんの作品。
平安時代の東北での出来事を描きます。
羽州とは、出羽のこと。
児童書のくくりですが、子供だけに読ませておくのは、惜しい!(笑)
ムメは、村長の娘で4人きょうだいの長女。
家族の面倒を見たり、鷹の世話をしたり、かいがいしく働く素直で聡明な女の子だ。
鷹は祖父が飼っているのだが、目が一つしかない鷹アキを可愛がっていました。
村には、3年ほど前に現れて森の入り口に小屋を建てて暮らしている「カラス」という少年がいる。
都から赴任してきた小野春風の息子・春名丸が川に落ちたのを助けたムメとカラスは、春名丸と親しくなります。
春名丸は都から辺鄙な土地へ来て馴染めず、父にも反発していました。
父親の春風とも顔を合わせるようになったムメ。
平和な暮らしがあったが、やがて春風は赴任先が変わり、別れの時が来た。
羽州は、鉄と名馬と黄金の産地。
干ばつになり、秋田城司の過酷な税の取り立てに対して、反発が起きる。
カラスは反乱の指導者ジオに取り込まれ、暴動に加わっていました。
暴徒に対して城司は逃亡、朝廷が数千の兵を送ってくる。
善政をしいた藤原保則が出羽権守に任命され、小野春風を副官として再びこの地にやってきます。
戦を収めることが出来るのか、その結果は…
この地を思いやる小野春風の思い、村人たちを助けたいムメの思い。
あまり知られていない時代の、暗い出来事は描きにくいと思いますが。
そこに光を当て、無名の人がいきいきと活躍する読みやすい物語として、意外な面を明らかにしていきます。
これが、「元慶の乱」。
この後、秋田河以北の公式な記録は極端に少なくなったのだそうです。
寛大な方針によって事態は収まり、羽州は「己地」としてある意味、独立を勝ち取っていたのだ。
70年前の、征夷に抗ったアテルイ(阿弖流為)の結末と混同していたので、はらはらしていたけど、こういうことだったのか…!
少女ムメの健やかな輝きが印象に残ります。
現代でも尽きない争い。
平和は実現できることを、胸に刻みたいと思います。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
平安時代の東北の羽州に育った、村長の娘ムメ(梅の意)が主人公。本の裏のあらすじ見ると、恋愛ものっぽいですがぜんぜんそんなことなく(笑)、どちらかというと歴史物っぽかったです。この時代の東北地方というと、都からは遠く離れ、でもアルテイは破れて……というぐらいの知識しかありませんでした。どちらかというと本命はカラスだよね!裏表紙に鋭いまなざしのカラスが!面白かったのですが、読んでいると無性に「ソニン」が読みたくなりました。文庫ででないかな~。X文庫に合うと思うんだけど~。
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63:児童書のコーナーで発見。表紙イラストがすごく綺麗なのですが、きっとまた「ソニン」の時みたいに一筋縄じゃいかない展開なんだろうなあと思っていたら、案の定(笑)、大人でも楽しめました。正しいこととは、善政とは。問いかけが素直に届く、シンプルながら深い物語。
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前から読みたかった本。
そして良い作品でした。
上橋菜穂子さんの狐笛のかなたを思い起こす登場人物ですが、ファンタジー色は薄く史実に近い内容。
3人それぞれの生い立ちがきちんと考えられているので、感情移入しながら読み込めます。
登場人物が魅力的なので、続きもあったらいいのに…と思ってしまいます。 -
菅野雪虫さんの『天山の巫女ソニン』も面白かったけど、これも本当に楽しめた。ただ主人公の少女ムメと片目の鷹アキの絡め?がもう少しみたかったな。ムメとカラスのような民は創作だけれども小野春風、アテルイなど実在の人物や争乱が出てきたりして、そこも興味の尽きないところ。作中の奥州気質も気に入ったなぁ。戦いが人の知を持って終結したところも。
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帯に“たつみや章 絶賛!”と書いてありますが、確かに、たつみやセンセ好きそうな良いお話でした。平安時代に秋田県で起きた『元慶の乱』を基にした、友情と治世の物語。歴史的には小さな出来事でしょうが、実に大切な事が描かれてました。主人公の賢い少女・ムメが敵対する立場の側に立っても物事を捉えられる姿勢が好ましいです。ムメ、カラス、春名丸のその後の話もあったらいいのにな。でも、そうすると歴史の話から外れてしまうかw。
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時は平安、羽州で起こった「元慶の乱」を、地元の村長の娘と、赴任してきた官吏の息子の視点から描いた児童書。歴史的事実の羅列ではなく、物語になっているので読みやすかった。題材をすっきり調理しているが、皆川博子的に耽美な感じにしてもいいなぁと思った。カラスとジオの関係がちょっと美味しいなと思ったのは内緒です。
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ソニンに続き、またしても賢く素直でまっすぐな女の子が主人公。
聞き覚えのある土地が出てきたのも、また楽しかった。 -
Thanks to 「天山の巫女ソニン」, 菅野雪虫 became one of my favorite authors and definitely on my author radar to look out for new books.
So you can imagine how excited I was when I first heard about this book. I would have gotten it the day it was released, but unfortunately, Kinokuniya is very selective on which books can be sent/sold in America and this book happened to be one that they didn't deem worthy enough.
After reading this book, I was glad to find that I still love this author. It wasn't as marvelous as ソニン's story, but still well done. I can't wait for what the author has in store next. *hint*moreソニンplease*hint*